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アジアに関する論文

国家通貨時代の終わり
――ドル、ユーロ、アジア共通通貨の時代へ

2007年7月号

ベン・ステイル/米外交問題評議会・国際経済担当ディレクター

この数十年間で、金融危機が非常に深刻な事態を伴うようになったのはなぜだろうか。途上国の通貨価値が下落しそうになると、対外債務の返済が困難になることを見越して、内外の現地通貨の保有者はこれを手放して出口へと殺到し、これが通貨危機を誘発する。だが、そうした危機に陥った通貨が「必要とされない通貨」であることに目を向ける必要がある。安全にグローバル化を進めていくには、各国政府は通貨ナショナリズムを捨て去り、市場の不安定化を引き起こす「必要とされない通貨」をなくしていく必要がある。一般に各国政府は自国通貨をドルやユーロに置き換えるべきだし、アジア諸国の場合は、広大な範囲におよぶ多様な経済発展レベルの地域を包み込めるような、単一の多国間通貨を創造するために協力していくべきだろう。

CFRインタビュー
北朝鮮は本当に核を解体するのか

2007年7月号

アラン・D・ロンバーグ ヘンリー・スチムソンセンター シニア・アソシエート

軽水炉の提供に加えて、今後北朝鮮は、国際金融システムへのアクセスを認めるようにと要求してくるかもしれない。2007年2月の合意の「次の段階」で想定されている、「すべての核施設の解体は考えられている以上に難しい」と北朝鮮問題の専門家アラン・ロンバーグは言う。そのためには、北朝鮮は核開発計画の全貌を明らかにしなければならないし、必然的に、これまでその存在を肯定も否定もしていないウラン濃縮計画が大いに注目されることになるからだ。仮に合意の初期段階措置が終わっても、次の段階では核分裂物資の解体という難題が控えており、現時点では、彼らが本気で核兵器を放棄するつもりがあるのかどうかはっきりしないと同氏はコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

インド経済の成長を民主主義が抑え込んでしまうのか
――改革と経済介入路線に揺れる民主政治

2007年5月号

アシュトシュ・バーシュニー/ミシガン大学政治学教授

経済成長を遂げるインドには二つの顔がある。経済は活況を呈し、活気に満ちた中産階級の規模も拡大している。しかし一方で、物乞い姿、栄養失調でやせ衰えた子供たちの顔を街角では依然として目にする。いまも人口の4分の1近くが1日1ドル以下の生活を余儀なくされている。市民の大半は「改革はおもに富裕層に恩恵をもたらしている」と感じており、しかも、投票を通じて政治的に大きな力を持っているのは、改革に反発しているこうした低所得者層だ。長期的には市場経済はすべての者に恩恵をもたらすとされているが、そうした長期的な展望を、選挙を控えた民主国家の政治家が政策の機軸とすることはあり得ない。改革の行く手を遮るこの民主的な制約を克服する道はあるのか。

CFRインタビュー
北朝鮮との外交交渉の行方

2007年4月号

ドン・オーバードーファー
ジョンズ・ホプキンス大学ポール・ニッツスクール 朝鮮研究所理事長

「私は北朝鮮の核実験は(外交交渉へと流れを向かわせる)ある種の『触媒』の役目を果たしたと考えている」。実験後の状況が危険な対立状況、武力衝突の危険によって支配されたわけではなく、アメリカ、アジア諸国、そして世界の関係国は比較的冷静な対応をみせた。実際、核実験後には、北朝鮮と各国の対立よりも、むしろ、外交路線が活性化した。核実験から6者協議での北朝鮮との合意へと向かった流れをこう描写するオーバードーファーは、「アメリカとの外交関係の正常化が実現するのなら、北朝鮮は核開発計画を部分的、あるいはすべて解体することにも否定的ではない」としながらも、「行く手には大きな困難が待ち受けている」と指摘し、「どちらが先に行動を起こすか」「どのような手順を踏んで合意を履行していくかをめぐって暗雲が立ち込めだしている」と語った。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

アメリカが対テロ戦争に気を奪われるなか、中国は経済発展による経済的影響力だけでなく、上海協力機構(SCO)などを通じた政治的影響力も拡大させている。しかも、6者協議に北朝鮮を連れ戻して、合意に持ち込んだことで、中国の政治・経済的台頭はいまや現実の東アジア秩序に影響を与えつつある。ワシントンでは、日米関係の強化を軸にアジアの民主国家連合構想が浮上しているが、アジアで孤立している日本と手を組むことが賢明なのか、疑問を表明する専門家もいる。しかも、日本が重視する拉致問題への路線をめぐって、日米間にさざ波が立ち始めている部分もある。日米中の勢力均衡を模索しつつ、多国間同盟関係の構築を唱える専門家も出てきている。それがいかなるものであれ、「今後の東アジアでの枠組みは、豊かながらも、おそらくは非民主的な中国という現実に直面していかなければならない」とみる専門家は多い。

中印の台頭と新・新世界秩序

2007年4月号

ダニエル・W・ドレズナー/タフツ大学フレッチャー・スクール助教授

すでに中国とインドの台頭によって、国際政治秩序は多極化へとシフトしつつある。ここで多国間機構の改革を進めて、こうした新興大国のパワーを枠組み内にうまく取り込んでいかない限り、多国間レジームの今後はますます不確定要因で覆い尽くされるようになる。多国間機構が妥当性を失っているのは、力と権限の不均衡、つまり、各国のパワーの実態に即した意思決定に関する権限と影響力が機構内で認められていないからだ。いかなる反対があっても、台頭するパワーを反映できるように多国間機構の改革を進めなければならない。そうしない限り、新興大国は独自の道を歩み始め、アメリカの利益と正面から衝突するような多国間機構を立ち上げようとするかもしれず、そこでわれわれが直面するのは不快な未来にほかならない。

CFRインタビュー
なぜアメリカは北朝鮮に妥協したのか

2007年2月号

ゲリー・サモア 米外交問題評議会(CFR) 上席副会長・研究部長

「ホワイトハウスにしてみれば、6者協議における交渉が進展しなければ、北朝鮮が核実験を再度試みる危険があることを憂慮したと思われる。そのような事態になれば、中東、特にイラクで数多くの問題に直面するなか、東アジアでも危機が誘発され、対応を余儀なくされる」。2月の6者協議での合意の背景をこう分析するゲリー・サモアは、核兵器のことを国の存続を保証する切り札とみなす平壌には核を解体するつもりが全くない以上、外交で状況を安定化させ、東アジアで危機を誘発するのを回避するには、今回のような曖昧で、核心部分を先送りした合意で手を打つしかなかったとみる。サモアは、今回の合意を、「賢明な路線」とブッシュ政権を評価しつつも、妥協と見返りに関する連鎖の詳細が合意で定義されていない以上、今後、非常に難しい問題を交渉していかなければならなくなると語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

「ブッシュ政権は、平壌がそう望むのなら、北朝鮮を改革・開放化へと向かわせるような道筋を築き、そのうえで、朝鮮半島の安全保障問題、ひいては北東アジアでの大国間関係のための枠組みをつくろうと、中国、日本、韓国、ロシアの4カ国との協調路線を試みている」。2月の6者協議での合意は、「こうした壮大な計画の序章にすぎない」と語るロバート・ゼーリック前国務副長官は、北朝鮮が開放路線を選択するかどうかは、はっきりとしないとしながらも、今回アメリカが描いた道筋は「金正日が改革と経済開放路線を推進していけば、北朝鮮がさまざまな機会を手にできるように設計されており」、これに北朝鮮への安全の保証、和平条約の締結を組み合わせれば、「改革・開放路線をとれば、体制の崩壊につながる」とみる平壌の危機感を緩和させて、北朝鮮の核問題に対処していく広範な枠組みにできると指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
次期台湾総統候補
呂秀蓮台湾副総統が語る台湾と中国

2007年1月号

スピーカー 呂秀蓮(アネッタ・ルー)  台湾副総統
司会 ジェローム・A・コーエン  米外交問題評議会(CFR) アジア担当非常勤シニア・フェロー

台湾と中国は別の存在であり、ともに独立している以上、国際社会は、もはや時代にそぐわず、とかく誤解をまねくだけの「一つの中国」政策を再検証する必要がある。こうした再検証作業を行って初めて、海峡間論争の効果的な解決策を見いだすことができる。われわれは、台湾の歴史を検証するにつけて、台湾の運命は中国によってではなく、世界情勢によって左右されていると確信している。北京にしてみれば、中国を台湾に再編するのは必然なのかもしれない。しかし、グローバルな視点でみれば、台湾が中国に帰属しないこと、台湾はむしろ世界の一部であることがわかるはずだ。(アネッタ・ルー)

感情の衝突
―― 恐れ、屈辱、希望の文化と新世界秩序

2007年1月号

ドミニク・モイジ フランス国際関係研究所上席顧問

西洋世界は「恐れの文化」に揺れ、アラブ・イスラム世界は「屈辱の文化」にとらわれ、アジア地域の多くは「希望の文化」で覆われている。アメリカとヨーロッパは、イスラム過激派テロを前に恐れの文化を共有しながらも分裂し、一方、イスラム世界の屈辱の文化は、イスラム過激派の思想を中心に西洋に対する「憎しみの文化」へと姿を変えつつある。かたや、さまざまな問題を抱えているとはいえ、中国、インドを中心とするアジア地域の指導者と民衆は、西洋とイスラムの「感情の衝突」をよそに、今後に向けた期待を持っており、経済成長が続く限り、アジアでは希望の文化が維持されるだろう。恐れの文化、屈辱の文化、そして希望の文化のダイナミクスと相互作用が、今後長期的に世界を形づくっていくことになるだろう。

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