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アジアに関する論文

CFRインタビュー
馬英九総統の誕生で
中台関係はどう変わるか

2008年3月号

アラン・D・ロンバーグ
ヘンリー・スティムソセンター東アジア研究ディレクター

次期台湾総統に選ばれた馬英九は、かなり早い段階で、中国との経済合意を結びたいと考えているし、すでに運行されている中台間のチャーター便の数を増やし、定期便も就航させたいと考えている。そして時間をかけて、彼が「生活様式」と呼ぶ和平協定に向けた了解をとりまとめ、台湾の国際社会への参加に向けた道を開きたいと考えている。
 馬英九の対中路線をこう予測するアジア問題の専門家、アラン・ロンバーグは、「一つの中国」の解釈をめぐって馬と北京の間には意見の違いがあるが、馬も北京も、それはそれで現状として受け止め、状況を先へと進めようとするだろうとみる。「中国はこれまでの台湾との対決的ムードを早く変えたいと望んでおり、「一つの中国」という概念を箱に押し込んで、台湾民衆の人心を勝ち取れるような関係を築き、経済開発に専念したいと考えている」。

内からの崩壊を恐れる平壌
―― なぜ平壌は経済改革路線の導入を拒絶するのか

2008年3月号

アンドレイ・ランコフ 韓国国民大学准教授

北朝鮮のエリートたちは、彼らが直面している最大の脅威が、国の外ではなく、内側にあることを理解しており、改革を拒絶することが、民衆を管理するうえでもっとも好ましい政策であることを理解している。中国や韓国による改革導入の要請に平壌が耳をかさないのもこのためだ。たしかに、国境の南にいる同胞たちが北朝鮮では考えられないような物質的な豊かさと社会的自由のなかで暮らしていることを次第に理解するようになれば、早晩、北朝鮮民衆の多くは、韓国市民同様に繁栄を手にしたいと考えるようになり、そのためには、でたらめな政策をとっている政府を排除したいと考えるようになる可能性はある。しかし、これを回避するために北朝鮮の指導者は改革の導入を拒絶し、情報統制を強化するとともに、自国の国益からみて北朝鮮の不安定化を望まない中韓からの支援を引き出すことに成功している。この構図が短期的に変化するとは思えない。

CFRミーティング
改革路線の継続こそ
インド経済発展の試金石
 ――ムンバイを国際金融センターに

2008年2月号

スピーカー ヘンリー・M・ポールソン   米財務長官
司会  ピーター・アッカーマン    ロックポート・キャピタル社マネージング・ディレクター

「アメリカ財務省が、インドと協力して改革と包括的な経済成長を促進することを望んでいる二つの分野について述べたい。一つは、物的なインフラ整備の資金を提供し、インドの一般家庭の生活に恩恵をもたらし、経済を活性化させること。もう一つは、ムンバイを国際金融センター(IFC)に発展させて、インドの金融システムを強化・拡大することだ。これら二つの目的を達成するには、国際的なスタンダードを受け入れ、政治的なリスクを冒してでも経済改革を積極的に前進させるという強いインド側の決意が必要になる」
 「いまやバンガロールに拠点を置くインド企業は、多国籍企業のバックオフィス業務にとって欠かせない役割を果たしている。この領域では、インド企業が世界のビジネスのやり方を革命的に変化させている。次のステップはムンバイに金融センターをつくり、地域を超えて企業と投資家に金融サービスを提供することだろう」(H・ポールソン)

クリストファー・ヒルが語る 対北朝鮮交渉の今後

2008年2月号

クリストファー・ヒル 米国務次官補

「北朝鮮は(核開発に関する)申告をすることそのものを嫌がっているわけではない。問題は、北朝鮮が包括的で正確な申告をするのを嫌がっていることだ。われわれとしては、包括的でも正確でもない申告など受け入れる理由はないと考えている。この点をめぐって、われわれは膠着状態にある」
 対北朝鮮交渉の障害をこう描写するクリストファー・ヒル米国務次官補は、「仮にかつてウラン濃縮計画が存在し、それをやめたのであれば、これまでに何をしていたかを知る必要があるし、計画をやめたのなら、いつやめたのかも知る必要がある。この点を明快にしたい」とコメントした。
 北朝鮮の人権問題についても、アメリカとの関係正常化の条件として間違いなく対応を求めていくと語ったヒルは、「国際社会に復帰したいと考えているのなら、人権基準を守るのが絶対条件となること、つまり、(人権問題に対応すること以外に)そこに選択肢はないこと」を平壌は理解する必要があると強調した。
 聞き手は、ロバート・マクマホン(www.cfr.orgの副編集長)。

CFRインタビュー
対北朝鮮交渉の進展は期待できない

2008年1月号

ゲリー・セイモア 米外交問題評議会副会長兼研究部長

「6者協議での合意の一環として、寧辺(ヨンビョン)の原子炉と使用済み核燃料再処理施設の双方を無力化することになっているが、北朝鮮はその無力化のペースをゆっくりとしたものにしている。平壌は、約束されている重油の提供がゆっくりとしか進んでいないことをその理由に挙げている。なぜ重油の提供がスムーズに行われていないか。それは、もう一つの合意事項である核開発計画の全貌を2007年12月31日にまでに申告するという約束を北朝鮮側が果たしていないからだ」。合意の進展が膠着状態に陥っている背景をこう分析する核拡散問題の専門家ゲリー・セイモアは、「北朝鮮は6者協議の核解体プロセスを塩漬けにして、アメリカに次期大統領が誕生するのを待って、その後、交渉を再開したいと言い出すつもりかもしれない」と指摘する。「1年後も北朝鮮の核(問題)は現状のままであることが、ますますはっきりしてきた」と述べ、北朝鮮への新たな戦略の採用を促したジェイ・レフコウイッツ米特使の発言についても、「北朝鮮は、少なくとも、2008年の間は核兵器の放棄に応じるつもりはない、とブッシュ政権の高官の多くが考えていることを、彼が公の場で述べたにすぎない」と語った。「北朝鮮はまともな申告を提出しそうにはなく、プロセスは膠着状態に陥ったままだろうし、そうだとすれば、対応はアメリカの次期政権に委ねられることになる」と。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

ミャンマー軍事政権への
多国間アプローチを調整せよ

2008年1月号

マイケル・グリーン 戦略国際問題研究所日本部長
デレク・ミッチェル 戦略国際問題研究所上級研究員

麻薬・武器の密輸、HIVの拡散など、ミャンマーの軍事政権は国内の人権問題や抑圧だけでなく、国境地帯を不安定化させて近隣諸国も脅かしている。これまで、アメリカはミャンマーとの外交関係を制限し、ヨーロッパも政治改革の断行を強く求めてきたが、アジア諸国の多くは、軍事政権との貿易、援助、外交関係を拡大してきた。幸い、こうした国際社会の矛盾したアプローチも変化しつつある。東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本はすでにミャンマーへの建設的関与路線を見直しつつある。内政不干渉の原則を固持し、資源調達がらみの思惑からミャンマーを支援してきた中国とインドにも再考を促す必要がある。各国がそれぞれ一定の譲歩を示し、政策を調整することによって、共通の目標に向けて状況を進めていかなければならない。ミャンマー制裁を他の関与策とバランスよく組み合わせて包括的に実行しなければならない。ミャンマーがさらに孤立して自暴自棄に陥り、失われた世代が生まれるのを傍観するわけにはいかない。人道的な理由もさることながら、ミャンマーは東南アジアの安全保障と統合を阻む未解決の深刻な課題なのだから。

CFRインタビュー
イランの核開発に関する
国家情報評価報告とイスラエルの立場

2007年12月号

ジェラルド・M・スタインバーグ バー・イラン大学政治学部長

「イランは核開発計画については2003年に停止しているが、ウラン濃縮プログラムは依然として続行している」。こう指摘した今回の国家情報評価(NIE)報告を受けて、アメリカのイラン政策が変更されるのかどうか、イランを国家安全保障上の最大の脅威とみなすイスラエルは、固唾を飲んでワシントンの動向を見守っていた。アメリカ国内では、「条件を付けずにイランと直接交渉をすべきだ」という声が聞かれる一方で、すでにNIE報告をどう解釈するかについての見直しも始まっており、イランの核開発の脅威は依然として存在するという見方も再浮上してきている。米・イスラエル安全保障関係の専門家であるジェラルド・M・スタインバーグは、「NIE報告に関するアメリカでの分析がさらに進み、それが何を言わんとしているかについての慎重な分析が進めば、イランに対する圧力行使策という点では、当初考えられたほどワシントンの路線に大きな変化はない」とみなす方向へとイスラエルでの議論は収れんしつつあると指摘しつつも、むしろアメリカはイランと交渉し、「イランにイスラエルがどのように機能しているかを理解させ、彼らの政策がイスラエルにどのような影響を与える可能性があるかを考えさせる必要がある」という指摘もあるとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

自由に基づく恒久平和を
――民主国家の連帯を軸とするパートナーシップを

2007年12月号

ジョン・マケイン/米共和党予備選大統領候補

アメリカは冷戦期に西側を団結させた民主国家の連帯を復活させなければならない。アメリカだけで、自由に基づく恒久平和を実現することはできない。民主的な同盟国の意見に耳を傾けなければならない。……民主国家を「民主国家連盟」という一つの機構のもとに連帯させ、立場を共有する諸国が平和と自由のために協力するこの連盟が、国連がうまく対応できないような案件に対処していくようにする。私が大統領になれば就任1年目に、世界の民主国家の指導者とのサミットを開き、指導者たちとの意見交換をし、このビジョンを実現するために必要な措置を模索していく。(この文脈において)G8を……市場経済と民主主義を実践する主要国だけのクラブにする必要があり、ロシアを排除して、新たにブラジルとインドを参加させるべきだ。……一方、大統領として私は、オーストラリア、インド、日本、アメリカによるアジア太平洋地域の主要な民主国家による4国間安全保障パートナーシップの制度化を模索していく。……私は、日本が国際的なパワーになることを歓迎するし、見事なビジョンである「価値外交」を支援するとともに、日本が願っている国連安保理の常任理事国入りも支持する。

なぜアメリカはインドとの関係改善を決断したか
――米印原子力協力協定の真意

2007年12月号

R・ニコラス・バーンズ/米国務省政治担当国務次官

「2001年に大統領に就任したジョージ・ブッシュは、当初から国際政治におけるインドの民主主義のパワーと重要性に注目し、アメリカのインドとの戦略関係を構築することに向けて、大きな政治資源を投入し……過去30年にわたって関係を冷え込ませてきた核拡散問題に取り組む勇気と先見性を示した。アメリカは核不拡散原則からみて問題のあるインドの核拡散(核保有)を既成事実として受け入れ、インドのエネルギー需要を満たすための原子力発電については全面的に協力することを約束した。……世界最古の民主国家が、ついに世界最大の民主国家を最も親しいパートナーと呼ぶときが来た。アメリカはインドに手を差し伸べることによって、地球の未来が不寛容、専制政治、計画経済ではなく、多元主義、民主主義、市場経済によって規定されるようになることを願っている」

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