1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

アジアに関する論文

アジアとトランプの脅威
―― 不安定化リスクにどう備えるか

2024年8月号

ビクター・チャ ジョージタウン大学教授(政治学)

オーストラリア、日本、韓国という緊密な同盟国を含む、インド太平洋におけるすべての米同盟国は、トランプ二期目が新たな問題を突きつけてくる事態にもっと危機感をもつべきだ。トランプは、バイデン政権とアジア諸国がまとめた防衛、経済・貿易構想の再交渉を求めるか、解体を試みるかもしれない。同盟国をこれまで以上に貿易上の敵対国とみなし、アメリカの軍事プレゼンスの削減を試みるだろう。独裁的指導者たちと親交を深め、アジアの核不拡散環境を揺るがし、朝鮮半島の核武装化を刺激する恐れさえある。

対中戦略を強化するには
―― アジアシフト戦略を越えて

2024年8月号

オリアナ・スカイラー・マストロ スタンフォード大学 国際研究所 センターフェロー

中国に対抗するには、アジアに軸足を移す以上のことが必要になる。インドネシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムなどの中国の近隣諸国にアプローチして、経済援助と安全保障を提供する見返りに、基地や海上ルートにアクセスし、領空を飛行する権利を確保しなければならない。南シナ海では、中国に脅かされている同盟国の漁船や探査船を米海軍が護衛し、同様の支援を、ベトナムなどの東南アジアの非同盟国にも拡大するべきだろう。この海域での領有権問題をめぐる中立的立場を見直して、東南アジア諸国間のコンセンサス構築も試みるべきだ。より適切な兵器を備蓄するとともに、中国の近隣諸国への軍事的アクセスを拡大・強化するなど、さらに力を結集する必要がある。

東アジアの少子高齢化と地政学
―― 世界政治はどう変化するか

2024年6月号

ニコラス・エバースタット アメリカン・エンタープライズ研究所 政治経済チェア

東アジアのポテンシャルは、今後、人口減少によって大きく抑え込まれていくだろう。経済成長を実現することも、社会的セーフティーネットを財政的に支え、軍隊を動員することも難しくなり、日本、韓国、台湾は内向きになっていくはずだ。中国も、野心と能力の間の克服しがたいギャップの拡大に直面すると考えられる。一方で、高齢化も進む。中国に悪影響を与える東アジアの人口減少が、ワシントンの地政学的利益になるのは間違いないが、東アジアの民主主義国家にも足かせを作り出し、問題も引き起こす。これらの国家にとって、アメリカとのパートナーシップの必要性が高まる一方で、ワシントンにとって彼らは魅力的なパートナーではなくなっていくだろう。

ナレンドラ・モディとインドの未来
―― ヒンドゥー・ナショナリズムの長期的帰結

2024年5月号

ラーマチャンドラ・グハ クレアカレッジ 特別教授

宗教的・言語的少数派の権利を尊重し、個人と国家、中央と地方の権利のバランスをとろうとする繊細な試みによって、インドは統一と民主政治を維持し、貧困と差別という歴史的重荷を着実に克服してきた。だが、ナレンドラ・モディが具現するヒンドゥー・ナショナリズムはそうではない。ヒンドゥー教徒に恐怖心を抱かせることで、一丸となって行動させ、最終的には非ヒンドゥーのインド市民を支配することを目的としている。モディ政権は宗教や地域間の対立を和らげるどころか、むしろ激化させ、インド社会の混乱をさらに深めることになるだろう。選挙は実施されるが、民主制度の空洞化によってインドは名ばかりの民主国家となり、専制国家に近づきつつある。・・・

「グローバルサウス」の問題点
―― 欧米諸国の思い込みと誤解

2024年5月号

コンフォート・エロー 国際危機グループ会長

現在の欧米における多くの政策論争では、「グローバルサウス」の存在が既成事実とみなされている。だが、グローバルサウスをまとまりのある連合としてとらえると、各国の個別の懸念を単純化したり、無視したりすることになりかねない。ブラジルやインドとの関係を強化すれば、他のグローバルサウス諸国も後からついてくると考えられている。これでは、債務、気候変動、人口動態、国内暴力など、各国の政治を形作っている固有の圧力がみえなくなってしまう。アジア、アフリカ、ラテンアメリカの国々を地政学的ブロックとして扱っても、彼らが直面する問題の解決にはつながらないし、アメリカとそのパートナーが求める影響力を確保することもできないだろう。

南シナ海に迫る危機
―― 中国との危機を機会に変えるには

2024年3月号

マイケル・J・マザー ランド研究所 上席政治学者

習近平国家主席は、停滞する中国経済の再生と国内での政治的管理体制の強化に躍起になっているし、アメリカとの緊張緩和への期待も示している。しかし、南シナ海での衝突や挑発行為がより頻繁に発生するようになれば、それが危機につながっていくのは避けられないし、そのような事態に直面すれば、アメリカの対中戦略は大きな転換点を迎える。北京の能力と影響力を抑える障壁を積み上げることであれ、抑止力の強化であれ、中国の力と野心に対抗するだけでは、今後10年にわたって存続できる戦略関係を形作ることはできない。むしろアメリカは中国に対抗しつつも、一方で、北京との安定した関係を築き、いつかは相互に尊重できる共存へと移行できるような基盤を築いていくべきだろう。

ミャンマーは崩壊するのか
―― 反体制派と連邦制の夢

2024年3月号

アビナッシュ・パリワル ロンドン大学東洋アフリカ研究学院 准教授(国際関係論)

軍事政権は国内のほとんどの地域で追い込まれている。「国家分裂の危険にある」ミャンマーが複数の民族小国家に分裂していく可能性は、すでに現実問題として捉えられている。実際、軍事政権が敗北し、追放される可能性も否定できず、ミャンマーは連邦制に即して社会契約を書き変えるべきタイミングにあるのかもしれない。ミャンマー軍に対する攻撃には数カ月に及ぶ計画や異質なグループ間の連携が必要なわけで、これが実現されていることからみれば、この国が連邦制に基づく民族間統合モデルを実践できるのではないかという希望も浮上してくる。

中露に挟まれたモンゴルの選択
―― アメリカは何をオファーできるか

2023年11月号

トゥブシンザヤ・ガンチュルガ 元モンゴル大統領補佐官(外交政策担当)
セルゲイ・ラドチェンコ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学 特別教授

中国とロシアにほぼ全面的に経済を依存する内陸国のモンゴルは、それでも、二つの隣国の違いを利用し、あるいは欧米との関係を強化することで、中露から距離を置こうと試みてきた。だが、いまや中露はますます接近し、モンゴルが両国の立場の違いを利用する余地は小さくなっている。アメリカは、モンゴルとの貿易・投資関係を促進し、教育・訓練プログラムを通じてモンゴルへの長期的なコミットメントを示すべきだし、モンゴル側は、外国人投資家を安心させ、透明で予測可能な経済環境を整備する試みを強化する必要がある。必要とされているのは、ロシアの高圧路線や中国の執拗な覇権主義に直面しているモンゴルへの手堅い経済関与だろう。

台湾海峡で中国を抑止するには
―― アメリカの能力と決意を示せ

2023年11月号

デビッド・サックス 米外交問題評議会フェロー
イヴァン・カナパシー 元国家安全保障会議 ディレクター

いまや、外交は綻びをみせ、抑止力は形骸化している。しかも、中国のリスク許容レベルは高まり、台湾海峡における不安定化要因は増える一方だ。ワシントンは、対中抑止力が低下していることを認識した上で、武力行使が破滅的な結果を招くことを習近平に理解させるために、さらなる措置を講じなければならない。そのためには、北京との摩擦が大きくなることを受け入れ、台湾の戦闘能力を高め、台湾軍の訓練や米軍アドバイザーの派遣を含めて、台湾のために軍事介入するアメリカの能力と決意を示さなければならない。アメリカとパートナーは、武力行使が解決策にはならないことを中国に認識させる必要がある。

台湾がとるべき道
―― 対話による戦争回避を

2023年11月号

侯友宜 台湾国民党 総統候補

国民党の北京へのアプローチは、中国による武力行使への反対に留まるものではない。非対称戦争能力を慎重に強化し、完成させる一方で、中国との誤解をなくして、いかなる危機も両岸の対話を通じて解決していくことにある。平和には対話も必要であり、私は中華民国の憲法と法律に則したやり方で、北京との建設的な交流を試みるつもりだ。台湾海峡とインド太平洋地域の安定を維持するために、抑止(Deterrence)、対話(Dialogue)、ディエスカレーション(De-escalation)という「三つのD」戦略を私は提案する。

Page Top