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アジアに関する論文

韓国民主主義の未来
―― 改革に必要とされる市民の政治参加

2025年3月号

ジョン・デルーリ ジョン・キャボット大学 政治学部客員教授

韓国市民は、尹錫悦大統領のクーデター未遂から立ち直ろうとしているが、その道のりは長い。保守政党の「国民の力」はいまもユン大統領を支持し、党内の過激な保守勢力の立場に迎合している。一方、リベラル派の「共に民主党」は、党代表が複数の裁判を抱えるなど、政治的流れをつかめずにいる。結局、韓国を立て直すのは、最終的には政治指導者よりも、むしろ市民の役割になるだろう。そのためにも、韓国は、若者と高齢者、男性と女性間の社会政治的な隔たりを埋めることにもっと力を入れなければならない。そしてこの国の政治を揺るがしている偽情報の洪水を克服する必要がある。

アメリカ・ファーストを恐れるな
―― アジアとトランプ

2025年3月号

ビラハリ・カウシカン 元シンガポール国連大使

グローバルな関与の条件を再定義し、国際問題にいつ、どのように関与するかについてより慎重になることで、トランプ政権は、リチャード・ニクソン大統領が冷戦期に東アジアで初めて導入した(介入を控え、同盟国の役割分担を求め、地域バランスを重視する)アプローチを地理的に拡大して適用している。ほぼ半世紀にわたって、そのようなアメリカの政策に対処してきたアジアが、第二次トランプ政権の誕生に必要以上に動揺していないのは、このためだ。アジアは、長く、アメリカのことを、安全保障を提供することに前向きな超大国としてではなく、自国の国益を第1に考え、軍事力を選択的に行使する、オフショアバランサーとみなしてきた。

韓国の核武装を認めよ
―― 北朝鮮の脅威とアメリカの干渉

2025年2月号

ロバート・E・ケリー 釜山大学政治学部 教授
キム・ミンヒョン 慶熙大学政治学部 教授

大陸間弾道ミサイルを開発した平壌は、いまや核兵器でアメリカの都市を攻撃する能力をもっている。このために、アメリカが(自国が反撃されるリスクを冒しても)韓国への安全保障コミットメントを果たすかどうかがいまや問われている。しかも、米韓同盟を批判してきたドナルド・トランプが大統領としての2期目を迎える。北朝鮮の核の兵器庫が拡大し、トランプ政権下のアメリカが後ろ盾としての信頼を失うにつれて、韓国の市民やエリートの核武装オプションへの支持は高まる一方だ。問題は、ワシントンが韓国の核武装路線に否定的なことだ。同盟国が危険にさらされたままの状態にあることを求めるのではなく、ワシントンは、ソウルが安全保障への道を自ら見つけることへの障害を取り払うべきだろう。

台湾を守る曖昧戦略
―― いかに壊滅的事態を防ぐか

2024年12月号

ジェームズ・B・スタインバーグ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院 学院長

中台の衝突は不可避ではないが、あり得ないとも言い切れない。それを回避できるかは、米中台、三つの政府の慎重な政策の選択にかかっている。アメリカの台湾政策を批判する専門家が指摘するように、数十年にわたる「戦略的曖昧さ」路線が、米中台のいずれも完全に満足できる状況を生み出していないのは事実だろう。しかし、特定の当事者を完全に満足させる結果は、別の当事者には受け入れられないものだ。つまり、ワシントンが目指すべきは、すべての当事者が受け入れられる(複雑な)現状を特定することだ。高度なバランスを要するが、外交とはそういうものだ。

「現場主義外交」の試金石
―― 太平洋諸島と米中競争

2024年11月号

チャールズ・エデル 戦略国際問題研究所上級顧問
キャサリン・ペイク 戦略国際問題研究所シニアフェロー

「あなたたちのなかで、外交領域で働きたいと思う人は何人いるだろうか」。若者に行動を求めた1960年のケネディ大統領のこのフレーズは、平和部隊への参加を促し、アメリカの世界への関心を高めたと評価されている。現在も、ライバルと競い合うには、外交官たちが外国の指導者と会い、現地の文化や習慣を理解し、協調の機会を見極めなければならない。この課題がもっとも深刻に脅かされているのが太平洋諸島諸国においてだ。この地域への外交の優先順位を高め、支援を強化しなければ、フィリピンからハワイに至る太平洋地域全体でアメリカは中国に立場を譲り続けることになる。

再生する資本主義
―― スイス、台湾、ベトナムに学ぶ

2024年11月号

ルチール・シャルマ ロックフェラー・インターナショナル 会長

新興経済諸国は、アメリカが「大きな政府」的解決策を模索するのをみて衝撃を受ける一方で、中国に経済モデルのインスピレーションを求めることもできずにいる。いまや「中国経済の奇跡」も失速しつつある。だが、主要国が資本主義から後退しているかにみえるなか、スイス、台湾、ベトナムなどの、資本主義がうまく機能している国もある。これらの諸国のやり方を模倣し、取り入れる価値はあるだろう。いずれも、経済的自由を重視し、経済の管理や規制をめぐる政府の役割を抑え、債務や財政赤字が深刻なリスクになることを認識して資金を慎重に用いている。

アメリカは東南アジアを失うのか
―― 中国へなびくアセアン諸国

2024年10月号

リン・クオック ブルッキングス研究所 フェロー(アジア政策)

東南アジアを対象とする2024年の調査で、この地域の連携パートナーとして中国がアメリカよりも支持されるという初めての結果がでた。アメリカがイスラエルを強く支持していることが、中国に有利な方向に流れを変えた大きな要因と考えられる。イスラム教徒が多数派を占める東南アジアの3カ国すべてで、台湾ではなく、イスラエルとハマスの紛争が地政学上の最大の懸案に選ばれている。米外交にはダブルスタンダードがあり、中国に関する利己的な目標をもっているというイメージも、アメリカの立場への支持拡大を妨げている。失った地域的支持をワシントンが取り戻していくのは容易ではない。

インド資本主義の構造的危機
―― 自由化、縁故主義、改革

2024年10月号

ヤミニ・アイヤール 政策研究センター 前会長

1991年以降のインドには、「経済自由化の促進」という大きな方向性については社会的・政治的コンセンサスがある。それでも、失業や格差など、民衆の経済に対する不満は大きく、2024年の総選挙は、インド経済の欠陥と30年にわたる経済自由化の果てに、この国の資本主義が人々に信頼されず、危機に直面していることを際立たせた。インド政治における縁故主義や汚職のまん延がなくならないだけに、政治家が資本主義のダイナミックな姿を示すのは難しいのかもしれない。フォーマル経済と企業集中が一定の成長をもたらすとしても、このまま民衆の多くが取り残され、格差が拡大する現状が続けば、インドは、大きな混乱に直面することになるかもしれない。

東アジアと中国の核戦力
―― 核共有と軍備管理の間

2024年9月号

エイミー・J・ネルソン ブルッキングス研究所 フェロー
アンドリュー・ヨー 米カトリック大学 教授

中国の核戦力増強は、北朝鮮のそれと同様に、東アジアを変化させている。いまや韓国市民の多くが核保有を望んでいるし、日本の古くからの核アレルギーも緩んできている。アジアはいまや、秩序を不安定化させる軍拡競争に突入していく軌道にある。ワシントンは中国に対して、(軍備管理に関する)中身のある交渉に建設的に参加するか、あるいは、東アジアでアメリカが支援する核軍備の大規模な増強という事態に直面するか、という困難な状況にあることを理解させなければならない。中国の指導者たちが軍備管理交渉を拒否するようなら、ワシントンは(核保有国が同盟国と核兵器を共有する)核共有制度について、ソウルや東京と協議を開始することもできる。

力による平和の復活
―― 二期目のトランプ外交を描く

2024年8月号

ロバート・C・オブライエン 前米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

トランプがアジアの同盟諸国に防衛にもっと貢献するように求めるのは、相手を不安にすると考える評論家もいる。だが現実には、「同盟関係は双方向の関係であるべきだ」というトランプの率直な発言の多くを、アジア諸国は歓迎し、トランプのアプローチは安全保障を強化すると考えている。トランプは(19世紀初頭に米大統領を務めた)アンドリュー・ジャクソンと彼の外交アプローチを高く評価している。「そうせざるを得ないときは、焦点を合わせた力強い行動をとるが、過剰な行動は控える」。トランプ二期目には、このジャクソン流のリアリズムが復活するだろう。ワシントンの友好国はより安全で自立的に、敵国は再びアメリカパワーを恐れるようになるだろう。

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