2025.11.7 Fri
<11月号プレビュー>
変化する欧米の意味合い、台湾の安定 他
ワシントンによる国際主義の放棄、自由主義的規範やアジェンダ設定への無関心は、欧米の価値と脅威認識にギャップを生じさせ、欧米の地政学連帯を根本的に分断していくはずだ。・・・欧米という枠組みがなくなれば、疑念、敵意、対立、そして紛争が生じやすい世界が残されることになる。(パトリック)
イスラエルがカオスを作り出し、アメリカが不本意ながらその流れに追随するという、はっきりとしたパターンが生まれている。このダイナミクスを断ち切るには、アメリカは地域的な安定を促進する路線をイスラエルが維持するように、継続的な圧力をかけなければならない。(ヒルターマン、ホール)
台湾の将来を心配するのは理解できるが、危機は誇張されている。混乱が示唆するほど政治が分裂しているわけではない。その民主主義と市民社会は強固な基盤をもっているし、台湾には世界最先端の技術がある。その経済は依然としてパワフルでレジリエンスがある。(ゴードン、ハース)
地政学的「欧米」の終焉
―― アメリカの離脱とポスト欧米世界の行方
2025年11月号 スチュワート・パトリック カーネギー国際平和財団 シニアフェロー
信頼できる地政学的単位としての欧米の終焉は、アメリカとかつてのパートナーが異なる行動と議論を示し、対立する状況を頻繁に出現させることになるだろう。ワシントンによる国際主義の放棄、自由主義的規範やアジェンダ設定への無関心は、欧米の価値と脅威認識にギャップを生じさせ、欧米の地政学連帯を根本的に分断していくはずだ。現在の流動的局面では、ブラジル、インド、インドネシア、南アフリカといった国々が、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、日本、イギリスといった先進国と協力する機会を提供すると考えられる。だが、欧米という枠組みがなくなれば、疑念、敵意、対立、そして紛争が生じやすい世界が残されることになる。
アメリカとイスラエル
―― 中東和平をめぐる同床異夢
2025年11月号 ヨースト・R・ヒルターマン 国際危機グループ 中東・北アフリカ担当特別顧問 ナターシャ・ホール 戦略国際問題研究所 上級研究員(非常勤)
イスラエルがカオスを作り出し、アメリカが不本意ながらその流れに追随するという、はっきりとしたパターンが生まれている。このダイナミクスを断ち切るには、アメリカは地域的な安定を促進する路線をイスラエルが維持するように、継続的な圧力をかけなければならない。イスラエル政府はハマスとの戦争継続を望んでいたが、トランプが強い調子で働きかけた結果、今回はガザ合意に署名するほかなかった。だが、ネタニヤフがいずれハマスに対する戦争を再開し、人道的支援を妨害する可能性はある。二国家解決策をイスラエルが拒絶しているという基本問題も残されている。強い圧力をかけ続けない限り、今回の合意でも、いつものパターンが繰り返されることになるかもしれない。
台湾の現状と安定
―― 「台湾カード」の強さ
2025年11月号 フィリップ・H・ゴードン ブルッキングス研究所 スカラー ライアン・ハース ブルッキングス研究所 シニアフェロー
台湾の将来を心配するのは理解できるが、危機は誇張されている。混乱が示唆するほど政治が分裂しているわけではない。その民主主義と市民社会は強固な基盤をもっているし、台湾には世界最先端の技術がある。その経済は依然としてパワフルでレジリエンスがある。これらの強さを基盤に、台湾は防衛改革を進め、軍事支出を増額している。アメリカの支援が削減されても、中国に対する脆弱性は縮小していくだろう。もちろん、これらで、トランプが中国と貿易協定をまとめたり、習との関係を改善したりするために、台湾について譲歩するリスクを確実にヘッジできるわけではない。だが、仮にそうなっても、台湾は自らの未来を形作る重要な主体性と十分な資源をもち続けるはずだ。


