Golden Sikorka / Shutterstock.com

2025.12.2 Tue

AIと失業とポピュリズム
―― 雇用はなくなる?

幸い、再訓練、AIの規制、社会保障の拡充という市民が支持する対策を、エコノミストも適切な対策とみなしている。問題を解決し、ポピュリストの反動が再燃するのを避けるには、政策決定者は、そうした雇用喪失が本格化する前、つまり、依然として有効な解決策が広く支持されている状況で適切な対策を示す必要がある。(マジストロ他)

・・・人工知能の誕生で世界は雇用なき経済へと向かいつつある。今後時給20ドル未満の雇用の83%がオートメーション化されるとみる予測もある。労働市場は大きく変化していく。新しい技術時代の恩恵をうまく摘み取るだけでなく、取り残される人々を保護するための救済策が必要になる。(マカフィー、ブリュニョルフソン)

労働者も資本家も追い込まれ、大きな追い風を背にするのは、技術革新を実現し、新しい製品、サービス、ビジネスモデルを創造する一握りの人々だろう。ネットワーク外部性も、勝者がすべてを手に入れる経済を作り出す。こうして格差はますます広がっていく。(ブラインジョルフソン、マカフィー、スペンス)

AIと失業とポピュリズム
―― 適切な対策を実現するには

2025年12月号 ベアトリス・マジストロ ソフィー・ボーエン R・マイケル・アルバレス バート・ボニコウスキー ピーター・ジョン・ローウェン

いまや世論調査でも、AIによる雇用喪失が最大の懸念とされ、労働者の再訓練、AIの規制、社会保障の拡充を市民は対策として求めている。だが、そうした対策はうまく実施されていない。それどころか、ロボットが雇用を脅かすという考えに接すると、むしろ、移民や貿易に対する敵意や不満が助長され、政治家もそうした風潮に政治的に流されがちになる。幸い、再訓練、AIの規制、社会保障の拡充という市民が支持する対策を、エコノミストも適切な対策とみなしている。問題を解決し、ポピュリストの反動が再燃するのを避けるには、政策決定者は、そうした雇用喪失が本格化する前、つまり、依然として有効な解決策が広く支持されている状況で適切な対策を示す必要がある。

人工知能と「雇用なき経済」の時代
―― 人間が働くことの価値を守るには

2016年8月号 アンドリュー・マカフィー マサチューセッツ工科大学 首席リサーチサイエンティスト エリック・ブリュニョルフソン マサチューセッツ工科大学 教授

さまざまな事例を検証し、相関パターンを突き止め、それを新しい事例に適用することで、コンピュータはさまざまな領域で人間と同じか、人間を超えたパフォーマンスを示すようになった。道路標識を認識し、人間の演説を理解し、クレジット詐欺を見破ることもできる。すでにカスタマーサービスから、医療診断までの「パターンをマッチさせるタスク」は次第に機械が行うようになりつつあり、人工知能の誕生で世界は雇用なき経済へと向かいつつある。今後時給20ドル未満の雇用の83%がオートメーション化されるとみる予測もある。労働市場は大きく変化していく。新しい技術時代の恩恵をうまく摘み取るだけでなく、取り残される人々を保護するための救済策が必要になる。間違った政策をとれば、世界の多くの人を経済的に路頭に迷わせ、機械との闘いに敗れた人を放置することになる。

デジタル経済が経済・社会構造を変える
―― オートメーション化が導くべき乗則の世界

2014年7月号 エリック・ブラインジョルフソン MIT教授(マネジメントサイエンス) アンドリュー・マカフィー MITリサーチ・サイエンティスト(デジタルビジネス) マイケル・スペンス ニューヨーク大学教授(経済学)

グローバル化は大きな低賃金労働力を擁し、安価な資本へのアクセスをもつ国にこれまで大きな恩恵をもたらしてきたが、すでに流れは変化している。人工知能、ロボット、3Dプリンターその他を駆使したオートメーション化というグローバル化以上に大きな潮流が生じているからだ。工場のようなシステム化された労働環境、そして単純な作業を繰り返すような仕事はロボットに代替されていく。労働者も資本家も追い込まれ、大きな追い風を背にするのは、技術革新を実現し、新しい製品、サービス、ビジネスモデルを創造する一握りの人々だろう。ネットワーク外部性も、勝者がすべてを手に入れる経済を作り出す。こうして格差はますます広がっていく。所得に格差があれば機会にも格差が生まれ、社会契約も損なわれ、・・・民主主義も損なわれていく。これまでのやり方では状況に対処できない。現実がいかに急速に奥深く進化しているかを、まず理解する必要がある。

Current Issues

Focal Points アーカイブ

Focal Points

過去のトップページ特集

Focal Points アーカイブ

最新のSubscribers' Only公開論文

デジタルマガジン

本誌最新号紹介

2025年12月号(2025年12月10日発売)

Contents

  • 習近平は父から何を学んだか
    その経験と政治的教訓

    オービル・シェル

  • 停滞する秩序下の現実
    中国の衰退と覇権競争の終わり

    マイケル・ベックリー

  • 兵器化された相互依存
    経済強制時代をいかに生き抜くか

    ヘンリー・ファレル、エイブラハム・ニューマン

  • 相互主義と同盟関係
    帝国から共和国へ

    オレン・キャス

  • 新たなユーラシア秩序
    進化する中ロ連携と米同盟関係の再編

    ジュリアン・スミス、リンジー・フォード

  • 戦争とストーリーの力
    ホメロスとヘロドトス

    エリザベス・D・サメット

  • AIと失業とポピュリズム
    適切な対策を実現するには

    ベアトリス・マジストロ他

  • イスラエルの覇権幻想
    破壊では平和は築けない

    マーク・リンチ

他全9本掲載

Page Top