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2025.11.14 Fri
漂流するイスラエル
―― 軍事強硬策とイスラエルの孤立
このまま、イスラエルの行動を野放しにすれば、新たな過激主義の台頭を許し、アメリカの国益と中東の安定、そして世界の安全保障が脅かされる。中東に信頼できる地域秩序を構築したいのなら、パレスチナの窮状を無視し、イスラエルの領土リビジョニズムに見て見ぬふりをすることはできない。(ダレイ、バキル)
イスラエルがカオスを作り出し、アメリカが不本意ながらその流れに追随するという、はっきりとしたパターンが生まれている。このダイナミクスを断ち切るには、アメリカは地域的な安定を促進する路線をイスラエルが維持するように、継続的な圧力をかけなければならない。(ヒルターマン、ホール)
ネタニヤフ政権は、メディアの監視から免れ、法の支配や自由で公正な選挙を守るのではなく、神権政治的で非自由主義的体制の確立を目指している。だが、イスラエルの未来は、市民が決めなければならない。心に大きな傷を抱え込んだ2年を経て、市民の多くは、新たな方向性、変化を求めている。(ラピド)
中東秩序の再編とイスラエルの孤立
―― 軍事強硬策と友人の喪失
2025年11月号 ギャリップ・ダレイ 英王立国際問題研究所 上級コンサルティングフェロー サナム・バキル 英王立国際問題研究所 ディレクター
いまやイスラエルは孤立している。「イスラエルと協力すれば国の評判を傷つけ、政治的コストになる」とアラブ諸国は関係改善に消極的になり、元パートナー諸国を「状況を警戒する敵」に変えてしまっている。ワシントンも、パレスチナ問題に公正な政治的回答を示す努力をしなければ、中東の主要パートナー諸国との関係がダメージを受け、アメリカは新たに生まれる地域秩序に対する影響力を失うかもしれない。このまま、イスラエルの行動を野放しにすれば、新たな過激主義の台頭を許し、アメリカの国益と中東の安定、そして世界の安全保障が脅かされる。中東に信頼できる地域秩序を構築したいのなら、パレスチナの窮状を無視し、イスラエルの領土リビジョニズムに見て見ぬふりをすることはできない。
アメリカとイスラエル
―― 中東和平をめぐる同床異夢
2025年11月号 ヨースト・R・ヒルターマン 国際危機グループ 中東・北アフリカ担当特別顧問 ナターシャ・ホール 戦略国際問題研究所 上級研究員(非常勤)
イスラエルがカオスを作り出し、アメリカが不本意ながらその流れに追随するという、はっきりとしたパターンが生まれている。このダイナミクスを断ち切るには、アメリカは地域的な安定を促進する路線をイスラエルが維持するように、継続的な圧力をかけなければならない。イスラエル政府はハマスとの戦争継続を望んでいたが、トランプが強い調子で働きかけた結果、今回はガザ合意に署名するほかなかった。だが、ネタニヤフがいずれハマスに対する戦争を再開し、人道的支援を妨害する可能性はある。二国家解決策をイスラエルが拒絶しているという基本問題も残されている。強い圧力をかけ続けない限り、今回の合意でも、いつものパターンが繰り返されることになるかもしれない。
大いなる選択
―― イスラエルの孤立と戦争を終わらせるには
2025年11月号 ヤイル・ラピド 前イスラエル首相
ガザ戦争終結のためのトランプの和平プラン、そして今後12カ月以内に実施される総選挙によって、イスラエルは自らを改革するチャンスを手にする。この国を危機的状況から救うには、何よりもまず人質を解放させる必要があるが、同時に過激派をイスラエル政府から排除することも必要になる。ネタニヤフ政権は、メディアの監視から免れ、法の支配や自由で公正な選挙を守るのではなく、神権政治的で非自由主義的体制の確立を目指している。だが、イスラエルの未来は、市民が決めなければならない。心に大きな傷を抱え込んだ2年を経て、市民の多くは、新たな方向性、変化を求めている。


