
2025.4.29 Tue
<5月号プレビュー>
トランプとリビジョニズムの時代、台湾防衛は断念すべきか、壮大な政治腐敗
いまや世界のアジェンダを設定しているのは、自国の偉大さを強調するナショナリストの指導者たちだ。トランプは、プーチン、習近平、モディ、エルドアンと同じタイプの指導者だ。強権的なナショナリストを自任する彼らは、ルールに基づく国際システムや同盟関係、多国籍フォーラムなどほとんど気にしていない。(キマージュ)
台湾はアメリカにとって重要だが、中国との戦争を正当化するほどの価値はない。政治家は中国と戦争になればどのようなコストが生じるかを米市民に伝え、アメリカの生存と繁栄が台湾の政治的地位に左右されるという誤った考えを退けなければならない。(キャバナー、ワートハイム)
実業家の大統領が富豪と組んで連邦政府の管理権を乗っ取るという事態は、アメリカ近代史ではかつてない展開だ。だが、世界的にみれば、バングラデシュ、ハンガリー、南アフリカなど、政治家、ビジネスエリートの小集団が自己利益のために国と経済をねじ曲げてきたケースは数多くある。このプロセスを描写する「国家の捕獲(state capture)」という言葉もある。(デイビッド=バレット)
ナショナリズムと強権者の時代
―― 覆された国際システムとトランプの世界
2025年5月号 マイケル・キマージュ ウィルソン・センター ケナン・インスティチュート 所長

いまや世界のアジェンダを設定しているのは、自国の偉大さを強調するナショナリストの指導者たちだ。トランプは、プーチン、習近平、モディ、エルドアンと同じタイプの指導者だ。強権的なナショナリストを自任する彼らは、ルールに基づく国際システムや同盟関係、多国籍フォーラムなどほとんど気にしていない。当然、グローバル秩序に関するいつもの描写はもう役に立たない。国際システムは一極支配でも二極体制でも多極体制でもない。現在のような地政学的環境では、すでに曖昧化している「欧米」という概念はさらに後退していく。
東アジアと台湾を捉え直す
―― 中国のアジア覇権を阻むには
2025年5月号 ジェニファー・キャバナー ジョージタウン大学 安全保障研究センター教授 スティーブン・ワートハイム カーネギー国際平和財団 アメリカ政治プログラムシニアフェロー

台湾はアメリカにとって重要だが、中国との戦争を正当化するほどの価値はない。政治家は中国と戦争になればどのようなコストが生じるかを米市民に伝え、アメリカの生存と繁栄が台湾の政治的地位に左右されるという誤った考えを退けなければならない。米兵を戦闘に参加させずに、台湾の防衛を支援する新しい戦略を考案する必要があるし、アジアにおけるアメリカの利益を台湾の運命と切り離し、台湾が北京に支配されないようにすることの重要性を引き下げるべきだ。重要なのは、アジアの同盟国やパートナー諸国の自衛と防衛力強化を促し、中国が台湾侵攻を地域的覇権獲得につなげるのを阻むことだ。
「捕獲された国家」の経済的末路
―― 経済を蝕む壮大な政治腐敗
2025年5月号 エリザベス・デイビッド=バレット サセックス大学政治学教授

実業家の大統領が富豪と組んで連邦政府の管理権を乗っ取るという事態は、アメリカ近代史ではかつてない展開だ。だが、世界的にみれば、バングラデシュ、ハンガリー、南アフリカなど、政治家、ビジネスエリートの小集団が自己利益のために国と経済をねじ曲げてきたケースは数多くある。このプロセスを描写する「国家の捕獲(state capture)」という言葉もある。政治腐敗によって、そうした国は成長率の低下、雇用の減少、格差の拡大、高インフレに直面する。トランプとマスクが米経済の捕獲に成功すれば、市場をゆがめるだけでは済まない。世界経済にもダメージを与えることになる。アメリカは、世界をクリーンな統治へ向かわせる警察官としての歴史的役割を放棄しただけでなく、豹変してマフィアのボスになりつつある。