2025.12.9 Tue
<12月号プレビュー>
兵器化された相互依存、習近平は父から何を学んだか、新たなユーラシア秩序
いまやアメリカは経済強制策を乱発し、中国などの他の大国も相互依存状況を兵器化するようになった。当然、敵対国も同盟国も相互依存を兵器化できる世界における新しい経済安全保障概念が必要とされている。いまや、経済的・技術的統合は、成長のポテンシャルから、脅威へと変化している。(ファレル、ニューマン)
2002年に習仲勲は死去し、その10年後、息子は中国の最高指導者になった。習近平は父親の改革主義の足跡をたどり、法の支配を前提とするシステムを採用し、自由経済を歓迎するようになると多くの人々が考えていた。だが、そうはならなかった。(シェル)
ワシントンは、アジアとヨーロッパの同盟諸国に(歩み寄って連携するのではなく)自分の地域に留まるようにと促している。現実には、アジアとヨーロッパの境界線は曖昧になりつつある。アメリカは同盟諸国が構築する新たなネットワークに抵抗するのではなく、それへの影響力を適切に行使すべきだろう。(スミス、フォード)
兵器化された相互依存
―― 経済強制時代をいかに生き抜くか
2025年12月号 ヘンリー・ファレル ジョンズ・ホプキンス大学 アゴラ研究所 教授 エイブラハム・ニューマン ジョージタウン大学外交学院 教授(政治学)
ワシントンは、相互依存状況を、どのように兵器として利用するのが最善かをこれまでも考えてきた。一方、多くの国は、法の支配と同盟国の利益を考慮するアメリカは、ある程度は私利私欲を抑えると考え、リスクがあるとしても、アメリカの技術と金融インフラに依存することを躊躇しなかった。だが、いまやアメリカは経済強制策を乱発し、中国などの他の大国も相互依存状況を兵器化するようになった。当然、敵対国も同盟国も相互依存を兵器化できる世界における新しい経済安全保障概念が必要とされている。いまや、経済的・技術的統合は、成長のポテンシャルから、脅威へと変化している。
習近平は父から何を学んだか
―― その経験と政治的教訓
2025年12月号 オービル・シェル アジア・ソサエティ 米中関係センター ディレクター
1962年、毛沢東政権の幹部だった父・習仲勲が政治的に粛清されたとき、習近平はまだ9歳だった。父が粛清されたことは習近平の心の傷となった。10代のときに、子供たちが憧れる共産主義青年団への入団を8回も拒絶されたことは大きな屈辱だったはずだ。毛沢東が死去した1976年、鄧小平が政権に復帰し、父・習仲勲はようやく北京に戻ることを許され、深圳で新しい経済特区を立ち上げることにも関わった。2002年に習仲勲は死去し、その10年後、息子は中国の最高指導者になった。習近平は父親の改革主義の足跡をたどり、法の支配を前提とするシステムを採用し、自由経済を歓迎するようになると多くの人々が考えていた。だが、そうはならなかった。
新たなユーラシア秩序
―― 進化する中ロ連携と米同盟関係の再編
2025年12月号 ジュリアン・スミス 元NATO米大使 リンジー・フォード 前米国家安全保障会議 上級部長
中ロが秩序形成で連携し、ユーラシアでより統一された競争空間を作り出している。これに対し、アジア・ヨーロッパ諸国は連帯し、急速に相互関係を変化させている。こうした新しいネットワークは、ワシントンがそれにどう関わるかで、アメリカの利益にプラスにもマイナスにも作用する。だが、ワシントンは、アジアとヨーロッパの同盟諸国に(歩み寄って連携するのではなく)自分の地域に留まるようにと促している。現実には、アジアとヨーロッパの境界線は曖昧になりつつある。アメリカは同盟諸国が構築する新たなネットワークに抵抗するのではなく、それへの影響力を適切に行使すべきだろう。


