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2025.10.14 Tue
ポストアメリカ世界の現実
―― もう過去には戻れない
トランプの世界では、誰もが苦境に陥るし、アメリカも例外ではない。アメリカに最大の利益をもたらし、同盟国やパートナーに安心と繁栄をもたらしてきたシステムを彼は破壊してしまった。特に、カナダ、日本、メキシコ、韓国、イギリスなど、米経済ともっとも密接に結びつき、これまでのゲームルールを忠実に守ってきた諸国の経済は大きなダメージを受けるだろう。(ポーセン)
今後の世界経済は、第二次世界大戦前のシステムに近づいていくのかもしれない。関税水準がどこに落ち着こうと、現在の貿易戦争は、貿易障壁を大幅に引き上げることになるはずだ。貿易障壁の拡大は成長を鈍化させ、生産性を低下させる。ルールが骨抜きになると、不確実性や摩擦が生じ、不安定化や紛争につながっていくおそれもある。(フロマン)
トランプ後を担う大統領は、多極化した、複雑な国際秩序を理解し、そこでアメリカがどのような役割を果たすかを決めなければならない。すべてを見直す必要がある。民主的価値へのコミットメントにはじまり、同盟関係、貿易、国防戦略までのすべてを再検証しなければならない。(リスナー、フーパー)
新しい経済地理学
―― ポストアメリカ世界の荒涼たる現実
2025年10月号 アダム・S・ポーセン ピーターソン国際経済研究所 所長

トランプの新路線が望ましい再編を促すと考える人もいる。だが、彼の政策を前に、各国の政府と企業が、最終的にニューノーマルを受け入れ、アメリカに利益がもたらされるという見方は、幻想にすぎない。それどころか、トランプの世界では、誰もが苦境に陥るし、アメリカも例外ではない。アメリカに最大の利益をもたらし、同盟国やパートナーに安心と繁栄をもたらしてきたシステムを彼は破壊してしまった。特に、カナダ、日本、メキシコ、韓国、イギリスなど、米経済ともっとも密接に結びつき、これまでのゲームルールを忠実に守ってきた諸国の経済は大きなダメージを受けるだろう。トランプは楽園への道をつくり、カジノを建設した。だが、その駐車場はやがて空っぽになるはずだ。
貿易戦争後の世界
―― システム崩壊からルール再構築へ
2025年9月号 マイケル・B・G・フロマン 米外交問題評議会 会長

今後の世界経済は、第二次世界大戦前のシステムに近づいていくのかもしれない。関税水準がどこに落ち着こうと、現在の貿易戦争は、貿易障壁を大幅に引き上げることになるはずだ。貿易障壁の拡大は成長を鈍化させ、生産性を低下させる。ルールが骨抜きになると、不確実性や摩擦が生じ、不安定化や紛争につながっていくおそれもある。前進するための最良の選択肢は、同じ考えを共有する国家集団による、開かれた、多国間よりも小規模な「複数国間(plurilateral)のネットワーク」を形作ることかもしれない。これらが織りなす重層的な構造があれば、グローバルなルールに基づくシステムがなくても、ルールによって形作られるグローバル経済を実現できるようになる。
新しい世界の創造へ
―― もう過去には戻れない
2025年8月号 レベッカ・リスナー 米外交問題評議会 シニアフェロー ミラ・ラップ・フーパー アジア・グループ パートナー

トランプ政権の2期目が終わる頃には、古い秩序は修復不可能なまでに崩壊しているだろう。トランプ後を担う大統領は、多極化した、複雑な国際秩序を理解し、そこでアメリカがどのような役割を果たすかを決めなければならない。すべてを見直す必要がある。民主的価値へのコミットメントにはじまり、同盟関係、貿易、国防戦略までのすべてを再検証しなければならない。そうしない限り、ポスト・トランプの遺産という視点だけで米外交の将来を考え、これに過剰反応する危険がある。いまや、新しいテクノロジー、台頭する新興国が出現し、これに、長年の緊張が組み合わさることで、カオスが作り出されている。「ポスト・プライマシー」ビジョンの形成が急務だ。