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2025.11.4 Tue
ウクライナ戦争の行方
―― 戦争と学習と技術進化
ロシアもウクライナも、ハードウエア、ソフトウエアそして戦術をよどみなく改良し続けているために、この戦争は息を呑むようなスピードで進化している。膨大な数の監視用ドローンを飛ばすことで、ほぼすべての部隊の動きが可視化され、前線付近で動くものは、それがなんであれ、数分以内に攻撃される。(シュミット、グラント)
ロシア軍は学習組織への変貌を遂げている。モスクワは戦闘経験を蓄積・分析し、そこから得た教訓を軍および国防エコシステム全体に拡散している。戦時経験を体系的に把握し、制度に組み込むとともに、戦後の軍改革につなげようとしている。(マシコット)
ヨーロッパのジレンマは、ウクライナを安心させるという決意を具体的な計画にどう結びつけていくかにある。アメリカの貢献が、よくても最小限のものに留まるとしても、ヨーロッパはウクライナの長期的な安全保障を確立するために、部隊を投入する必要がある。(ダールダー)
自律型戦争の夜明け
―― ドローンを制御するAI
2025年10月号 エリック・シュミット 元グーグルCEO兼会長 グレッグ・グラント 新アメリカ安全保障センター 非常勤シニアフェロー
ロシアもウクライナも、ハードウエア、ソフトウエアそして戦術をよどみなく改良し続けているために、この戦争は息を呑むようなスピードで進化している。膨大な数の監視用ドローンを飛ばすことで、ほぼすべての部隊の動きが可視化され、前線付近で動くものは、それがなんであれ、数分以内に攻撃される。ドローンが敵のドローンと戦うケースも増えている。自律型ドローンスウォーム(大編隊)の攻撃を調整できるAIの開発がいまや焦点とされている。戦争の第1段階はハードウエアの有無が戦況を左右し、双方が新しいタイプのドローン、ペイロード、弾薬に投資したが、次の段階はソフトウエアが焦点になるだろう。
再生したロシア軍
―― 戦闘経験から学習・応用へ
2025年11月号 ダラ・マシコット カーネギー国際平和財団 シニアフェロー
2022年にウクライナ侵攻を開始した当時、ロシア兵たちは与えられた任務に必要な訓練さえ受けていなかった。そもそも戦争で戦うことさえ知らされていなかった。指揮系統も正常には機能しなかった。だが、もはや、当時を前提に状況を捉えることはできない。すでにロシア軍は学習組織への変貌を遂げている。モスクワは戦闘経験を蓄積・分析し、そこから得た教訓を軍および国防エコシステム全体に拡散している。戦時経験を体系的に把握し、制度に組み込むとともに、戦後の軍改革につなげようとしている。AI意思決定システムとAI搭載兵器をどのように実戦配備するかの検討もすでに開始している。
ウクライナへのNATO部隊の派遣を
―― ウクライナと欧州を守るには
2025年10月号 アイヴォ・H・ダールダー 元駐NATO米大使
ヨーロッパのジレンマは、ウクライナを安心させるという決意を具体的な計画にどう結びつけていくかにある。アメリカの貢献が、よくても最小限のものに留まるとしても、ヨーロッパはウクライナの長期的な安全保障を確立するために、部隊を投入する必要がある。ウクライナへの侵略がNATO圏へ拡大してくるリスクを考慮し、ヨーロッパによるウクライナへの戦力展開はNATOの作戦、つまり、NATOによって計画・承認され、指揮される作戦として実施しなければならない。ヨーロッパの指導者が指摘するように、ウクライナの安全を守ることが、ヨーロッパの存亡を左右するのだから。


