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2025年11月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2025年11月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2025年11月号 目次

欧米世界の終焉と世界

  • 地政学的「欧米」の終焉
    アメリカの離脱とポスト欧米世界の行方

    スチュワート・パトリック

    雑誌掲載論文

    信頼できる地政学的単位としての欧米の終焉は、アメリカとかつてのパートナーが異なる行動と議論を示し、対立する状況を頻繁に出現させることになるだろう。ワシントンによる国際主義の放棄、自由主義的規範やアジェンダ設定への無関心は、欧米の価値と脅威認識にギャップを生じさせ、欧米の地政学連帯を根本的に分断していくはずだ。現在の流動的局面では、ブラジル、インド、インドネシア、南アフリカといった国々が、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、日本、イギリスといった先進国と協力する機会を提供すると考えられる。だが、欧米という枠組みがなくなれば、疑念、敵意、対立、そして紛争が生じやすい世界が残されることになる。

  • 揺るがされたアメリカへの信頼
    不安定化する世界

    カレン・ヤーヒ=ミロ

    雑誌掲載論文

    トランプは、立場を後退させる前にまず取引を提案する。戦争を拡大する前に、戦争を終わらせると約束する。同盟国を叱責し、敵対国を受け入れる。唯一のパターンとは、パターンが存在しないことだ。一部の分析家が指摘するように、トランプのアプローチは一時的な国際的勝利を一部でもたらしている。だが長期的には、このアプローチでアメリカが強化されることはない。最終的に、各国は他国と連帯して国を守る道を選ぶはずだからだ。その結果、アメリカの敵対国リストは増え、同盟関係は弱体化する。つまりワシントンはますます孤立し、その威信を回復する明確な道筋を見失う可能性がある。

  • 新勢力圏の形成へ
    大国間競争から大国間共謀へ

    ステイシー・E・ゴダード

    Subscribers Only 公開論文

    中国やロシアと競争するのではなく、トランプ政権は中ロと協力することを望んでいる。トランプの世界観が大国間競争ではなく、「大国間共謀(great power collusion) 」、つまり、19世紀の「ヨーロッパ協調」に似ていることは、いまや明らかだろう。こうして、アメリカの外交路線は、ライバルとの競争から、温厚な同盟諸国をいたぶる路線へ変化した。他の大国から有利な譲歩を引き出すために、トランプがビスマルクのような外交の名手になる可能性もある。しかし、ナポレオン3世のように、よりしたたかなライバルに出し抜かれてしまうかもしれない。

  • 同盟関係の崩壊と米国の孤立
    同盟破壊という愚行

    マーガレット・マクミラン

    Subscribers Only 公開論文

    現在のアメリカは、イギリスが帝国の全盛期に経験した状況に直面している。世界最大の軍事大国であることは重い負担であり、それもあって、債務が驚くべき水準に膨らんでいる。中国をはじめとする野心的大国は、ますます高額化する軍備競争に資源を投入している。そして、歴史的に繰り返されてきた通り、他の諸国は古い大国を見捨てて、新興大国に乗り換え、その衰退を機に団結して対抗する誘惑に駆られている。トランプ政権が同盟国への敵対的な姿勢を継続し、長年のパートナーを侮辱し、経済的に損害を与えるような行動を続けるなら、アメリカの前にあるのは、ますます敵対的な世界になるはずだ。

  • 新しい世界の創造へ
    もう過去には戻れない

    レベッカ・リスナー、ミラ・ラップ・フーパー

    Subscribers Only 公開論文

    トランプ政権の2期目が終わる頃には、古い秩序は修復不可能なまでに崩壊しているだろう。トランプ後を担う大統領は、多極化した、複雑な国際秩序を理解し、そこでアメリカがどのような役割を果たすかを決めなければならない。すべてを見直す必要がある。民主的価値へのコミットメントにはじまり、同盟関係、貿易、国防戦略までのすべてを再検証しなければならない。そうしない限り、ポスト・トランプの遺産という視点だけで米外交の将来を考え、これに過剰反応する危険がある。いまや、新しいテクノロジー、台頭する新興国が出現し、これに、長年の緊張が組み合わさることで、カオスが作り出されている。「ポスト・プライマシー」ビジョンの形成が急務だ。

  • アメリカ後の自由主義秩序を守る
    民主諸国の協調と連帯

    フィリップス・P・オブライエン

    Subscribers Only 公開論文

    多くの国は、トランプ政権に媚びへつらい、米大統領を過度に称賛する努力を重ねてきたが、トランプを懐柔する戦略は失敗する可能性が高い。そうであれば、民主主義と旧来のルールに基づく秩序にいまもコミットする諸国は、国際関係を再構築し、アメリカの気まぐれから自らを隔離し、この極めて不安定な時代にあっても自分たちの自由を広く守る努力をするのが理にかなっている。実際、トランプの勢力圏構想が実現すれば、アジア、ヨーロッパ、北米におけるワシントンの民主的同盟国がアメリカによって守られることはなくなるだろうし、民主諸国は、世界の他の国々を合わせたよりもはるかに多くの核兵器を保有する米中ロという三つの大国と対峙することになる。

  • 再生したロシア軍
    戦闘経験から学習・応用へ

    ダラ・マシコット

    雑誌掲載論文

    2022年にウクライナ侵攻を開始した当時、ロシア兵たちは与えられた任務に必要な訓練さえ受けていなかった。そもそも戦争で戦うことさえ知らされていなかった。指揮系統も正常には機能しなかった。だが、もはや、当時を前提に状況を捉えることはできない。すでにロシア軍は学習組織への変貌を遂げている。モスクワは戦闘経験を蓄積・分析し、そこから得た教訓を軍および国防エコシステム全体に拡散している。戦時経験を体系的に把握し、制度に組み込むとともに、戦後の軍改革につなげようとしている。AI意思決定システムとAI搭載兵器をどのように実戦配備するかの検討もすでに開始している。

  • イランとアメリカ
    対立の歴史を終わらせるには

    バリ・ナスル

    雑誌掲載論文

    12日間戦争は明らかにイランを弱体化させ、これまでのテヘランの戦略は、持続不可能な状態に陥った。この現状なら、ワシントンはイランを封じ込めたままにし、イスラエルに時折「草刈り」をさせることもできる。だが、テヘランに外交を試みることもできるはずだ。テヘランとの関係を新たな軌道に乗せ、イランの外交・核政策と政治指導層内のパワーバランスの双方を変えるような新たな外交取引を模索すべきだろう。たとえ両国の歴史が失われた機会に満ちていようと、過去が必ずしも今後のプレリュードである必要はない。両国はイランの核能力に関する緊急の合意をまとめるためだけでなく、信頼を築き、両国関係の新たな道筋を示すためにも、外交を受け入れる必要がある。

ガザとイスラエル

  • アメリカとイスラエル
    中東和平をめぐる同床異夢

    ヨースト・R・ヒルターマン、ナターシャ・ホール

    雑誌掲載論文

    イスラエルがカオスを作り出し、アメリカが不本意ながらその流れに追随するという、はっきりとしたパターンが生まれている。このダイナミクスを断ち切るには、アメリカは地域的な安定を促進する路線をイスラエルが維持するように、継続的な圧力をかけなければならない。イスラエル政府はハマスとの戦争継続を望んでいたが、トランプが強い調子で働きかけた結果、今回はガザ合意に署名するほかなかった。だが、ネタニヤフがいずれハマスに対する戦争を再開し、人道的支援を妨害する可能性はある。二国家解決策をイスラエルが拒絶しているという基本問題も残されている。強い圧力をかけ続けない限り、今回の合意でも、いつものパターンが繰り返されることになるかもしれない。

  • 中東秩序の再編とイスラエルの孤立
    軍事強硬策と友人の喪失

    ギャリップ・ダレイ、サナム・バキル

    雑誌掲載論文

    いまやイスラエルは孤立している。「イスラエルと協力すれば国の評判を傷つけ、政治的コストになる」とアラブ諸国は関係改善に消極的になり、元パートナー諸国を「状況を警戒する敵」に変えてしまっている。ワシントンも、パレスチナ問題に公正な政治的回答を示す努力をしなければ、中東の主要パートナー諸国との関係がダメージを受け、アメリカは新たに生まれる地域秩序に対する影響力を失うかもしれない。このまま、イスラエルの行動を野放しにすれば、新たな過激主義の台頭を許し、アメリカの国益と中東の安定、そして世界の安全保障が脅かされる。中東に信頼できる地域秩序を構築したいのなら、パレスチナの窮状を無視し、イスラエルの領土リビジョニズムに見て見ぬふりをすることはできない。

  • 大いなる選択
    イスラエルの孤立と戦争を終わらせるには

    ヤイル・ラピド

    雑誌掲載論文

    ガザ戦争終結のためのトランプの和平プラン、そして今後12カ月以内に実施される総選挙によって、イスラエルは自らを改革するチャンスを手にする。この国を危機的状況から救うには、何よりもまず人質を解放させる必要があるが、同時に過激派をイスラエル政府から排除することも必要になる。ネタニヤフ政権は、メディアの監視から免れ、法の支配や自由で公正な選挙を守るのではなく、神権政治的で非自由主義的体制の確立を目指している。だが、イスラエルの未来は、市民が決めなければならない。心に大きな傷を抱え込んだ2年を経て、市民の多くは、新たな方向性、変化を求めている。

  • イスラエルとパレスチナ
    外交的解決策に残されたチャンス

    リチャード・ハース

    Subscribers Only 公開論文

    イスラエルは厳しい選択を迫られている。パレスチナとの妥協と平和的共存を誠実に模索するか、それとも、長期的な繁栄に必要な国際的支持を失うリスクを冒すかだ。多くのイスラエル人は、武装勢力がパレスチナを活動拠点にすることを恐れ、パレスチナ国家の樹立には強く反対しているが、無期限の占領という現状は、イスラエルを国際的に孤立させ、失うものがないと感じる人々によるテロに永遠に直面することになる。ガザや西岸からパレスチナ人を強制移住させることもヨルダンや他の近隣諸国の不安定化を招きかねないし、アラブ諸国との関係も悪化する。国をもつことがパレスチナにとって有益であることは言うまでもないが、イスラエルにとっても有益であることを認識する必要がある。

  • イスラエルの自滅を回避するには
    紛争管理からパレスチナとの共存へ

    アルフ・ベン

    Subscribers Only 公開論文

    ネタニヤフが示した司法改革法案によって、ガザ戦争前の段階で、イスラエル国家は分裂しかねない状況に追い込まれていた。戦争が終われば、この国内状況が再び出現するだろう。パレスチナをめぐっては、ネタニヤフのように「パレスチナを永遠に占領できる」と考えるのか、それとも「共存が必要」とみなすかが、今後問われることになる。「紛争管理」と「草刈り」が今後もパレスチナ問題に対処する政策であるなら、占領、入植政策、強制退去がさらに続く。しかし、このやり方は、さらなる大惨事を招き入れるだけだ。安心して生活し、尊重し合える共存を望むのなら、イスラエルはパレスチナ人に手を差し伸べ、ともに協力していかなければならない。

  • アラブストリートの反乱
    民衆の怒りが米外交を揺るがす

    マーク・リンチ

    Subscribers Only 公開論文

    「ガザへの爆撃がついに終わり、人々が家に帰れば、怒りの矛先は違う何かに向けられ、中東の地域政治は平常に復帰する」。ワシントンではこう考えられている。しかし、この仮説は、中東で世論がいかに重要になっているか、2011年の「アラブの春」の騒乱以降、何が本当に変わったのかを理解していない。アラブ民衆の怒りのタイプと激しさ、アメリカの優位の低下と正統性の崩壊、アラブ諸国の政権が地域間競争だけでなく国内体制の存続を優先していることから考えても、新しい地域秩序ではアラブの世論がより重視され、配慮されるようになるだろう。ワシントンがアラブの世論を今後も無視し続けるようなら、ガザ戦争後の計画を台無しにすることになる。

  • 中東を一変させたガザ戦争
    混乱をいかに安定と秩序に導くか

    マリア・ファンタッピー、バリ・ナスル

    Subscribers Only 公開論文

    ついに実現しつつあるかにみえた、イスラエルとアラブ世界の関係正常化を中心とするアメリカの中東構想も、イスラエル・ハマス戦争によって根底から覆されてしまった。もはやパレスチナ問題は無視できないし、パレスチナ国家への信頼できる道筋がみえるまでは、アラブ・イスラエル関係の今後を含めて、アメリカがこの地域の他の問題に取り組むのは不可能だろう。さらに、中東を動揺させているテヘランの台頭にも対処しなければならない。このためにも、ワシントンは、イラン、イスラエル、アラブ世界全体と実務的な関係を維持しているサウジとのパートナーシップを、新たな中東ビジョンの基盤に据える必要がある。

  • アメリカはアラブ世界を失いつつある
    アラブストリートの信頼を勝ち取るには

    マイケル・ロビンス、マニー・ジャマル、マーク・テスラー

    Subscribers Only 公開論文

    アラブ世界で反米感情が急激に高まっている。イスラエルがガザで軍事作戦を始めて以降、ヨルダンでは、アメリカを好意的にみなす人の割合が、2022年の51%から、最近実施された調査では28%に激減している。国内での反米感情の高まりゆえに、アラブの指導者で、ワシントンに協力しているとみなされたいと考える者はほとんどいない。アメリカのアナリストは、アラブ民衆の声は、米外交政策にはあまり関係してこないと軽くみているが、「アラブの指導者は世論に左右されない」という考えは神話にすぎない。アラブ市民のアメリカへの信頼を取り戻さない限り、アラブの指導者たちは対米協調を避け、アラブとイスラエルの国交正常化もイラン封じ込めも遠のき、中国を含むアクターがこの地域で台頭してくることになるだろう。

Current Issues

  • 世界貿易の真の再編を
    公正貿易同盟の形成を

    ウォーリー・アデエモ、ジョシュア・P・ゾファー

    雑誌掲載論文

    グローバル貿易システムを再編する必要があると考えている点では、トランプ大統領は正しいが、関税を用いた現在のアプローチでは、それで治そうとしている病以上に、深刻な事態を引き起こす恐れがある。必要なのは、ルールに基づく公正な貿易、アメリカの競争力を強化するグローバルな協調に基づく新しい貿易システムだ。中国に象徴される不公正な貿易慣行と歪んだ競争を問題解決のターゲットに据えた、「公正貿易のための自由貿易同盟」を立ち上げるべきだろう。いまなら、次の大きな貿易再編の主導権をワシントンがとって、世界経済を自由貿易の恩恵を開花させるシステムへと導けるかもしれない。

  • 台湾の現状と安定
    「台湾カード」の強さ

    フィリップ・H・ゴードン、ライアン・ハース

    雑誌掲載論文

    台湾の将来を心配するのは理解できるが、危機は誇張されている。混乱が示唆するほど政治が分裂しているわけではない。その民主主義と市民社会は強固な基盤をもっているし、台湾には世界最先端の技術がある。その経済は依然としてパワフルでレジリエンスがある。これらの強さを基盤に、台湾は防衛改革を進め、軍事支出を増額している。アメリカの支援が削減されても、中国に対する脆弱性は縮小していくだろう。もちろん、これらで、トランプが中国と貿易協定をまとめたり、習との関係を改善したりするために、台湾について譲歩するリスクを確実にヘッジできるわけではない。だが、仮にそうなっても、台湾は自らの未来を形作る重要な主体性と十分な資源をもち続けるはずだ。

  • 二つの東南アジア
    大陸国家と海洋国家の分裂

    スザンナ・パットン

    雑誌掲載論文

    東南アジアには二つの国家集団が存在する。カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムなどの中国寄りの大陸国家、そして、米中間のバランスをとるインドネシア、マレーシア、シンガポールなどの海洋国家の集団だ。東南アジアの海洋国家は大陸国家よりも規模が大きく、世界貿易で重要な役割を果たし、より多くの投資や開発資金が外国から流入している。東南アジア諸国を構成するこれら二つのネットワーク間の格差は今後数十年で拡大し、大陸部東南アジアは中国の事実上の勢力圏になるだろう。現実には、この地域での米中バランスは、今後、ベトナムとタイとの関係に左右されることになると考えられる。

  • 貿易戦争後の世界
    システム崩壊からルール再構築へ

    マイケル・B・G・フロマン

    Subscribers Only 公開論文

    今後の世界経済は、第二次世界大戦前のシステムに近づいていくのかもしれない。関税水準がどこに落ち着こうと、現在の貿易戦争は、貿易障壁を大幅に引き上げることになるはずだ。貿易障壁の拡大は成長を鈍化させ、生産性を低下させる。ルールが骨抜きになると、不確実性や摩擦が生じ、不安定化や紛争につながっていくおそれもある。前進するための最良の選択肢は、同じ考えを共有する国家集団による、開かれた、多国間よりも小規模な「複数国間(plurilateral)のネットワーク」を形作ることかもしれない。これらが織りなす重層的な構造があれば、グローバルなルールに基づくシステムがなくても、ルールによって形作られるグローバル経済を実現できるようになる。

  • 東アジアと台湾を捉え直す
    中国のアジア覇権を阻むには

    ジェニファー・キャバナー、スティーブン・ワートハイム

    Subscribers Only 公開論文

    台湾はアメリカにとって重要だが、中国との戦争を正当化するほどの価値はない。政治家は中国と戦争になればどのようなコストが生じるかを米市民に伝え、アメリカの生存と繁栄が台湾の政治的地位に左右されるという誤った考えを退けなければならない。米兵を戦闘に参加させずに、台湾の防衛を支援する新しい戦略を考案する必要があるし、アジアにおけるアメリカの利益を台湾の運命と切り離し、台湾が北京に支配されないようにすることの重要性を引き下げるべきだ。重要なのは、アジアの同盟国やパートナー諸国の自衛と防衛力強化を促し、中国が台湾侵攻を地域的覇権獲得につなげるのを阻むことだ。

  • 台湾侵攻を阻む抑止力の強化を
    軍事・外交・経済の適切なバランスを

    オリアナ・スカイラー・マストロ、ブランドン・ヨーダー

    Subscribers Only 公開論文

    中国の台湾侵攻を阻む抑止力を最大化するには、米台の防衛力を強化し、北京を安心させ、経済デカップリングなどの経済圧力策の行使を控えて軍事・外交・経済の適切なバランスをとる必要がある。問題は、これら三つをどのようなバランスで組み合わせるのが最適なのかに関するコンセンサスがほとんどないことだ。こうして、軍事力の強化は道半ばとなり、台湾に関する「戦略的曖昧さ」路線の揺らぎが北京の不安を高めている。その行使を控えることで、危機の際に抑止力を強化できるはずの経済圧力が、すでに高度に利用されている。軍事的即応態勢と軍事能力の強化に投資し、慎重な発言を心がけ、経済的なレジリエンスと一定の相互依存関係の維持に努めることが、台湾の安全強化につながる。

  • 東南アジアの選択
    なぜ中国に傾斜しているか

    ユエンフォン・コン、ジョセフ・チンヨン・リウ

    Subscribers Only 公開論文

    「米中のどちらかを選んでいる」という自覚はないのかもしれないが、東南アジア諸国の多くが、アメリカから離れて、中国へ傾斜しているのはいまや明らかだろう。しかし、そのパワーを北京がどのように使うかをめぐって、地域諸国が大きな懸念をもっているのも事実だ。実際、この地域のエリートを対象とする調査で「誰を信頼しているか」という問いで、第1位に選ばれたのは日本で、中国は4位だった。流れは中国にあるとしても、北京が地域諸国の懸念を和らげ、信頼を勝ちとるには、まだ、やるべきことが多く残されている。だが、2期目のトランプ政権の政策が、北京がこの課題を克服するのを容易にするのかもしれない。

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