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ドナルド・トランプに関する論文

トランプを待ち受ける嵐
―― ドナルド・トランプの本当のコスト

2018年3月号

エリオット・コーエン ジョンズ・ホプキンス大学教授

トランプは就任1年目に偉大なことを成し遂げたと考え、「評論家たちは悪意に満ちているし、間違っていたことが立証された」と感じているようだ。実際には、アメリカの政府機関の志気を大きく低下させ、(就任後に)彼がもっと成熟した政治家になることを期待していた内外のすべての人々を失望させた。任命した高官の多くを疲弊させ、しかも、バックアップ体制を準備していない。最悪なのは「自分は何をしているかを分かっている」と誤認していることだ。外交が嵐に遭遇しなかったのも、本人の成長ではなく、側近たちの抵抗によるものだ。「自分が天才だからだ」と理由づける多くのことは、単に幸運に恵まれた結果にすぎない。早晩、彼の運も使い果たされる。その時がやってくれば、トランプ大統領が強いた本当のコストがはっきりしてくる。

信頼性失墜の果てに
―― ドナルド・トランプという外交リスク

2018年2月号

カレン・ヤーヒ=ミロ プリンストン大学 アシスタントプロフェッサー(政治・国際関係論)

主要な選挙公約への立場を何度も見直し、ツイッターで奇妙かつ不正確なコメントを流し、脅威を誇張し、即興的に何かを約束する。こうして、大統領が内外におけるアメリカの信頼性を失墜させていくにつれて、同盟国はアメリカの約束を信頼するのを躊躇うようになり、敵対国に対する威圧策も効力を失っていく。危険な誤算が生じるリスクも高まる。アメリカ市民だけでなく、世界の人々も、すでにトランプの予測不能な発言や矛盾するツイートに慣れてしまっている。しかし、信頼できる大統領の言葉が必要になったときに、どうすればよいのか。今後の危機において、アメリカの意図を明確に示すために必要な信頼を大統領がもっていなければ、どのように敵を抑止し、同盟国を安心させられるだろうか。

トランプとヨーロッパと米英関係
―― 劇場化する米欧関係

2017年11月号

デービッド・グッドハート 英ポリシー・エクスチェンジ 人口動態・移民・統合部長

現在の米欧間の不和には劇場的な要素がある。すべてのプレイヤーたちが、危機を利用して、みずからのアジェンダや主張を推進しようとしている。ヨーロッパの「自立」を求める勢力は、「トランプの登場によってアメリカを永遠に頼りにできないことが明らかになった」という認識が浮上したことを歓迎している。トランプも、ヨーロッパの反発を、米国内における支持基盤の動員には役に立つと考えている。トランプがポピュリストの愛国主義者のふりをし、ヨーロッパのエリートたちが取り乱したふりをしているのはこのためだ。しかしどちらも実際には、本気で米欧同盟を破壊したいとは、これまでのところ考えていない。

トランプの何が問題なのか
――啓蒙的アメリカ・ファーストへの道筋を描く

2017年11月号

アンドリュー・ベーセビッチ ボストン大学名誉教授(国際関係学・歴史学)

かつてジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントンなどが考案した政策を、いまの米市民がそのまま受け入れることはあり得ない。最強の国アメリカという構想はすでに破綻しているからだ。「アメリカ・ファースト」が人々に支持されているのはこのためだ。もっとも、トランプは外交領域では「アメリカ・ファースト」ではなく、エンゲージメント戦略をとっている。問題は、十分な情報に基づかない、衝動的で、気まぐれな外交決定をしていることだ。最強国アメリカを前提とする冷戦後のユートピア的グローバリズムとトランプの愚行が混乱を引き起こすなか、必要とされているのは、戦間期に一時的に台頭したアメリカ・ファースト運動の主張をバランスよく解釈することだろう。この戦間期の運動が示した懸念と確信の多くは、現在の窮状から離れていくための健全な起点を示している。

トランプが日本に突きつけた課題
―― トランプ制御策を超えて

2017年10月号

彦谷貴子 コロンビア大学准教授(日本政治・外交)

これまで日本政府は「ドナルド・トランプを制御すること」に努め、市民もそうした政府のやり方を現実主義的な視点から支持してきた。だが、そのアプローチにも限界がみえ始めている。トランプが日本に突きつけているもっとも根本的な課題は、日本のこれまでの成長に大きな役割を果たしてきた「リベラルな民主的秩序がどうなっていくか」という側面にある。当然、日本は自由貿易体制を含む、リベラルな民主的秩序を維持していくための試みを強化していく必要がある。今後の日本は、アメリカが主導するリベラルな秩序の受益者としてではなく、むしろ、秩序を守るために全力を尽くし、アメリカをこの秩序につなぎとめる必要がある。

無謀な中国と無分別なアメリカの間
―― トランプ時代のオーストラリア外交を考える

2017年10月号

マイケル・フリラブ ローウィ研究所 エグゼクティブ・ディレクター

ドナルド・トランプにはプラスサム志向が乏しい。グローバル秩序の頂点にあることでもたらされる優位の価値を忘れ、同盟関係の価値も疑っている。この状況下、オーストラリアにとっての本当の課題とはグローバルゲームの観客になるか、プレイヤーになるかを決めることだ。米大統領に焦点を合わせるのでなく、ワシントンの他のプレイヤーとも連携することで、古くからの同盟国であるアメリカと可能な限り緊密に協力する一方で、アジアとのつながりを深めていく必要がある。利益が重なるときには中国と協力し、一方で、日本、韓国を含むアジアの民主国家との絆を大きくしていかなければならない。似たような考えを共有するアジア諸国との協調を強化していくことは、無謀な中国と無分別なアメリカに対する重要な保険策となる。

メルケルのトランプジレンマ
―― 自立への道をいかに切り開くか

2017年10月号

ステファン・ティール ハンデルスブラット・グローバルマガジン エグゼクティブ・エディター

ユーロゾーンの救済策だけでなく、難民の流入ペースの緩和に向けたトルコとの合意をまとめるなど、ここにきて、より積極的な行動をとるようになったものの、ドイツは基本的に世界でリーダーシップをとるのを嫌がってきた。しかしいまや、繁栄の基盤であるリベラルな秩序の維持を望むのなら、行動を起こす以外に道はない。ドイツは、自由貿易体制を支えるためにより多くを試み、自国の安全保障へのより大きな責任を引き受け、ヨーロッパがより踏み込んだ経済改革を行うようにリーダーシップを発揮しなければならない。メルケルは、反トランプ感情が支配的なドイツで、アメリカとの実務的関係を維持しつつ、この難題をこなしていかなければならない。

トランプ政権と政府機関の対立
―― 政府機関による逆襲

2017年9月号

ジョン・D・マイケルズ カリフォルニア大学ロサンゼルス校  ロースクール教授

トランプ大統領と側近たちは、「政府内部の後方撹乱者たちによる裏切り」と彼らがみなす行動に憤慨し、政治学の専門用語を借用して、「自分たちは国家内国家の(クーデターの)犠牲にされている」と主張している。だが「国家内国家」という表現でアメリカの政府機関を表現するのは的外れだろう。問題は、自分が率いているはずの政府機関の多くをトランプがあからさまに軽視し、予算に大ナタを振るい、規制ルールを廃止し、通常の手続きを踏むことを拒絶していることにある。このやり方が、官僚たちによるクリエーティブな反乱を誘発し、これが次第に効果をもちつつある。トランプ政権とメディアとの問題が「フェイクニュース」ではなく「ニュース」によって引き起こされているように、政権が政府機関との間で抱える問題は、非民主的で水面下で悪事を働く「国家内国家」ではなく、米連邦政府を形作る大規模かつ複雑な官僚制度とその手続きによって作り出されている。

グローバリズムとナショナリズム
―― トランプが間違っている理由

2017年8月号

Or・ローゼンボイム 英クィーンズカレッジ リサーチフェロー(政治学)

「グローバリズムは国家主権とはなじまない」と考えるのは間違っている。戦後における国際的な「つながり」の高まりによって、国家という政治単位やコミュニティが否定されたわけではない。現実には、国家、帝国、ヨーロッパ連邦、非国家コミュニティ、国際機関などのあらゆる政体が、戦後の「つながりを深めた新世界」への適応を迫られた。世界がつながり、一つに向かっているとしても、政治的・文化的な同質化が不可避だったわけでも、望ましかったわけでもない。政治単位としての国家を廃止し、愛国主義的イデオロギーを禁止することを求めたグローバリストは殆どいなかった。むしろ、有力なグローバリズムの思想家たちは、安定し、繁栄する平和な世界秩序を形作るには、統合と多様性のバランスをとる必要があると考えていた。

逆風にさらされる米環境・公衆衛生政策
―― トランプ政権の暴走を止めるには

2017年8月号

フレッド・クラップ 米環境保護基金 代表

環境保護に関するトランプの姿勢は一貫している。(国際合意を含めて)環境対策を減らしていくことを考えている。トランプと閣僚の多くは、「人間の(経済)活動を、気候変動を引き起こしている主因」とみなす科学的なコンセンサスさえ受け入れていない。むしろ、規制緩和と雇用創出という名目で、国内の化石燃料生産量を増やし、温室効果ガスと汚染物質の排出量規制を緩和し、環境保護庁(EPA)を骨抜きにしたいと考えている。だがそのようなことをすれば、疾病が広がり、早死が増え、経済は弱体化し、環境分野でのリーダーシップを中国に譲ることになる。だが、カリフォルニアやニューヨークなどの州が他に先駆けて再生可能エネルギーを支援しており、トランプが何をしようと、電力産業で再生可能エネルギーの存在感が高まっていくのは間違いない。政府による規制撤廃プロセスに対抗して、市民がその意思を表明するチャンスは残されている。・・・

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