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Vol.36 思想の衝突1923-2012に関する論文

漂流する日本の政治と日米同盟

2011年9月号

エリック・ヘジンボサム ランド研究所シニア・ポリティカルサイエンティスト
エレイ・ラトナー ランド研究所アソシエート・ポリティカルサイエンティスト
リチャード・サミュエルズ マサチューセッツ工科大学教授

もはや日米関係が未来を明確に共有しているとは言い難い。改革によって(官僚主導から政治主導への)制度上の明確な権限移譲が実現するどころか、むしろ政治家の抗争、政治家と官僚の抗争が誘発され、その結果、権力の空白が生じ、政府の政策決定能力が損なわれている。これが日米関係、日米同盟にとって何を意味するかを考えなければならない。アメリカは日本に国益を有しているし、日本が困難な状況に陥った場合には、手を差し伸べる道義的な責任も負っている。だが、日本の先行きは依然として不透明で、しかも、いまや国防予算削減の時代にある。ワシントンはアジアにおける重要な目標を定義し、それに応じて資源を振り分けていくことを考えるべきだ。日米同盟を守っていくのが最優先課題でなければならないが、ワシントンは他の地域的なパートナーとより緊密に協力していく態勢を整えておくべきだろう。

The Clash of Ideas
ポスト・ワシントンコンセンサス
―― 危機後の展開

2011年4月号

ナンシー・バードサール グローバル開発センター会長
フランシス・フクヤマ スタンフォード大学国際研究センターシニアフェロー

2008―2009年の金融危機の結末とは、「うまく規制されていない国内市場と資本の自由化という組み合わせは、壊滅的な事態を招き入れる」という東アジア諸国が10年前に学んだ教訓を、ついにアメリカ人とイギリス人も学んだということにほかならない。危機によって、アメリカ流資本主義への信用が完全に失墜したとは言えない。だが、少なくとも支配的なモデルではなくなりつつある。「その他の台頭」と呼ばれる現象は、経済、政治領域における新興国のパワー拡大を意味するだけではない。思想とモデルをめぐるグローバルな競争にも、その影響が出ている。欧米世界、特にアメリカは、もはや社会政策上の革新的な思想をめぐる唯一の拠点とはみなされてはいない。アメリカ、ヨーロッパ、日本は今後も豊かな経済的資源とアイディアの集積地であり続けるだろうが、すでに新興市場国もこの領域でのライバルとして台頭してきており、今後その存在感をますます高めていくことになるだろう。

暗闇では銃を発射できないように、世界がどのように機能するかについてのビジョンなしに、政策を決めることはできない。だからこそ、現実主義者は、この世にいない経済学者か、政治理論家の奴隷となるしかない。政策決定者が、世界を間違った方向ではなく、正しい方向へと動かす可能性を高めるような、情報と知識に裏付けられた思想的な基盤とビジョンをわれわれは常に必要としている。冷戦末期以降、『文明の衝突』、『歴史の終わり』、『大国政治の悲劇」』という三つの壮大なビジョンが表明された。ベルリンの壁が崩壊した段階ではフクヤマは真実の鐘をならし、9・11以降の世界政治についてはハンチントンの予測は現実を言い当てていた。中国パワーが今後開花していけば、ミアシャイマーも現実を言い当てることになるのかもしれない。だが、ハンチントン、フクヤマ、ミアシャイマーは未来の何を言い当てて、どこを読み誤ったのか。それを理解することが、世界が必要とする第4のビジョンを描く鍵となる。

Classic Selection
21世紀は権威主義的資本主義大国の時代になるのか

2007年8月号

アザル・ガット テルアビブ大学教授

現在の中国とロシアは、日独が第二次世界大戦に敗れた1945年以降、姿を消していた権威主義的資本主義パワーの再来にほかならない。日独の場合、アメリカを相手にするには、人口、資源、潜在力があまりに小さすぎたが、中国とロシアは、日独よりもはるかに国家規模が大きいし、そもそも、権威主義体制下の資本主義のほうが民主体制下の資本主義よりも効率が高い。実際、日独という権威主義的資本主義国家が戦後も存続していれば、アメリカにとって、共産主義中央統制経済のソビエト以上に大きな脅威と課題をつくりだしていたかもしれない。中国とロシアに代表される権威主義的な資本主義国家が、近代性の進化をめぐってリベラルな民主主義の代替策を提示することになるかもしれないし、グローバル経済に自分のルールで関与するようになるかもしれない。リベラルな民主主義が、最終的に勝利を収めるという保証はどこにもなく、権威主義的資本主義がリベラルな民主主義に代わる魅力的な選択肢とみなされるようになる可能性もある。

The Clash of Ideas
「冷戦の終焉」と旧秩序の再発見

1996年7月号

ジョン・アイケンベリー
ペンシルバニア大学・准教授

冷戦の終結は、封じ込め秩序の終わりではあっても、戦後秩序全般の終焉ではなかった。封じ込めの秩序の影に隠れあまり重視されるいこともなかった、大西洋憲章にその起源をもつ開放的な戦後経済体制はいまも健在で、これを中核とする戦後の「民主的でリベラルな秩序」は、共産主義の崩壊によって、むしろ強化されつつある。事実、民主的でリベラルな秩序と、冷戦期の西側秩序が異なっているとすれば、現在の秩序がよりグローバルなものになっていることだ。必要なのは、冷戦後の新秩序を夢見てその構築を試みることではなく、一九四〇年代以来の民主的でリベラルな秩序を維持・強化すべく、その歴史的ルーツとこれまでの成果をたどり、これを、現状に符合するように再調整することではないか。

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