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年度別傑作選に関する論文

CFRミーティング
世界エネルギー・アウトルック ――
ゲームチェンジャーとしての電気自動車と二酸化炭素回収・貯蔵技術

2011年1月号

スピーカー
ファティ・ビロル 国際エネルギー機関・経済分析部 チーフエコノミスト
司会
ピーター・ゴールドマーク 環境防衛ファンド ディレクター

原油価格は今後も高いレベルを維持し、一方、天然ガスの価格は供給過剰で今後も安値が続く。天然ガスは環境面でも悪い選択肢ではなく、逆に再生可能エネルギーの開発にはマイナスに作用している部分がある。・・・既存のエネルギーに比べてコストが高いために、クリーンテクノロジーは市場に浸透しないという問題を抱えている。鍵を握るのは中国だ。中国が、クリーンテクノロジーを大々的に市場に導入すれば、コストは引き下げられ、これは世界のすべてにとっての利益になる。だがもう一つの側面もある。電気自動車を例にとると、中国は自動車メーカー、部品メーカーその他すべてをひとまとめにして、資金と補助金を与えるという戦略をとっている。つまり、今後20~25年もすれば、中国が電気自動車産業の覇者になっていてもおかしくはない。・・・いずれにしても、エネルギー問題、地球環境、石油市場についてわれわれが持続不可能な未来へと向かっているという基本的な流れに変化はみられない。(F・ビロル)

国と国との関係で世界の流れの多くを制御できた時代は、一国だけでは解決できないグローバルな問題の登場と非国家アクターの台頭によって終わりを告げ、いまや、新たにインターネットで結ばれた市民による相互接続権力が台頭している。しかも、新興国はグローバルな問題への対応に応分の貢献をしようとせず、先進国経済は財政赤字、債務、人口減によって危機の瀬戸際に追い込まれている。変わりゆく世界を主導するのはアメリカかそれとも中国か。不満や意見を表明する手段の爆発的な増大とともに、国の力は失われていくのか、それとも・・・。フォーリン・アフェアーズが描く2011年の世界に、日本は居場所を見つけられるのか。

軍事力を例外とすれば、今後、アメリカの文化も経済も21世紀初頭のようなパワーを失い、世界的な優位を保つことはないだろう。そして、今後の国家間政治においてもっとも重要な要因は、アジアが世界舞台への復活を続けていることだ。だが、中国がアメリカをアジアから締め出せるはずはない。アメリカが古代ローマのように内側から朽ち果てていったり、中国を含む国家に取って代わられたりすることはあり得ない。アメリカにとって重要なのは、移民への開放性を維持し、国内の中・高等教育を改革し、債務問題への対策をとり、制度と価値の多くを共有するヨーロッパ、日本との連帯を強化していくことだ。21世紀のスマートパワーのストーリーは、パワーを最大化することでも、覇権を維持することでもない。それは、パワーが拡散し、その他が台頭する環境のなかで、いかに自国のパワーリソースを優れた戦略に結びつけるか、その方法を見いだすことだ。

インターネットは自由も統制も促進する
――政治的諸刃の剣としてのインターネット

2010年12月号

イアン・ブレマー
ユーラシア・グループ代表

インターネットテクノロジーはメガホンであり、拡散機能を持っているが、この機能は、国境を越えた情報拡散の促進を望む人々だけでなく、この流れを遮断し、悪用する人々も利用できる。メディアとしてのインターネットが、民主主義を求める声を増幅させるのは、すでに、民主主義への希求が存在する場所においてだけだ。一方、権威主義国家は、彼らにとって好ましくない情報の自由な流れをブロックするために、そして、政府の立場や考えを拡散するために、情報テクノロジーを利用している。最終的には、世界のあらゆるインターネットがさまざまな政府による詳細な監視の対象にされるようになるだろう。事実、欧米のハイテク通信企業は、いまや自らを軍需企業のように考えだしている。インターネットが消失することはない。だが欧米諸国が使用し、一方で、権威主義国家の意向を満たすような一つのインターネットが存在すると考えるのは現実的ではないだろう。

インターネットと相互接続権力の台頭

2010年12月号

エリック・シュミット グーグル最高経営責任者
ジャレッド・コーエン グーグル・アイデアズ・ディレクター

インターネットの登場で、政府の力を弱め、市民の力を強めるバーチャル・コミュニティー(相互接続権力)が誕生し、人々を結びつけるコネクションテクノロジーが、世界各国の社会を変化させている。だが、この流れは、世界中の民衆と政府に困難な新課題を突きつけることになる。低開発社会ではよりオープンで透明性の高い社会を実現するように求める民衆の圧力が作りだされ、政治的緊張を高めるだろう。一方で政府も反政府勢力を封じ込める新たな技術ツールを手に入れることになり、より閉鎖的で抑圧的な社会が出現するかもしれない。民主国家政府はこの機会を見逃さずに連帯する義務があるし、変革をもたらす原動力である企業や非政府組織をプレイヤーとして尊重しなければならない。パワーを分かち合う新時代では、政府といえども、自分だけでは物事をすすめていくことはできないのだから。

金融危機後の「ヨーロッパ」は分裂し、 内向きになっていく

2010年11月号

スチュワート・パトリック 米外交問題評議会シニア・フェロー

ユーロ圏の金融危機によって、ヨーロッパの統合プロジェクトは大きな試練にさらされている。(ギリシャを含む)一部のヨーロッパ経済がグローバル化、福祉国家の重荷に関連して経済的に困難な状況に直面するようになるにつれて、欧州統合という概念への人々の思いは複雑なものへと変化しつつある。ヨーロッパは内向きになっている。加盟各国は国内問題に専念するようになり、今後、EUが世界レベルでハードパワーとソフトパワーを行使する能力も制約されてくる。CFRのスチュアート・パトリックは、今後のヨーロッパでは、「国家間関係が重視されるようになり、大きな外交問題に遭遇した場合でも、欧州委員会や欧州議会よりも、ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領が各国の指導者たちと協議する形でリーダーシップを発揮することになる」と予測する。EUが解体することはないとしても、「ユーロを導入してユーロ圏を形成し、分かちがたく結びついている諸国」、そしてイギリスその他のように「ユーロには参加せずに、自国のペースで懸案に取り組んでいる諸国」の二つの集団へとヨーロッパは次第に分かれていくだろうと同氏はコメントした。聞き手はRoya Wolverson, Staff Writer, cfr.org

赤字と債務がアメリカのソフトパワーを脅かす
―― アメリカがギリシャ化するのを避けるには

2010年11月号

ロジャー・アルトマン
元米財務副長官
リチャード・ハース
米外交問題評議会会長

アメリカの対GDP比債務残高は2015年には100%に達する恐れがある。これは、アメリカの債務が現在のギリシャやイタリアと同じ債務レベルになることを意味する。政府が赤字・債務削減プログラムを導入しない限り、金融市場にペナルティを課されるのは避けられなくなる。現状を放置すれば、緊縮財政を余儀なくされ、国防予算も削減対象にされる。アメリカの市場経済資本主義モデルの魅力も廃れ、中国流の権威主義経済モデルがますます大きな注目を集め、世界はますます無極化していく。アメリカ人の生活レベルだけでなく、アメリカの外交、対外路線、今後の国際関係にも非常に深刻な悪影響が出る。こうした甚大な帰結を回避するには、まず、財政上の歳入と支出のバランスをとってプライマリーバランスを図る必要がある。アメリカ市民と人々が選んだ議員たちが、この国の借り入れ中毒問題の解決を先送りし続ければ、アメリカは非常に大きな危険にさらされることになる。

ポスト鄧小平改革が促す中国の新対外戦略
―― 中国は新たな国際ルールの確立を目指す

2010年11月号

エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会アジア担当ディレクター

経済成長と政治的安定を重視するという点では、中国政府はこの30年にわたって驚くほど一貫した立場を貫いてきた。変化したのは、その目的を実現するために何が必要かという認識のほうだ。この観点から、今や中国は自国に有利なように、グローバルな規範を作り替えたいと考えている。鄧小平の改革路線を経た次なる改革に向けた国内の必要性を満たしてくには、外部環境を作り替えるための対外路線が不可欠だと判断している。責任ある利害共有者という概念はもう忘れたほうがよい。国際社会のゲームルールそのものを書き換えたいと望む中国は、国際機関でのより大きな影響力を確保することを模索し、軍事力を増強し、国内での技術革新を排他的に試みている。この目的からグローバルな広報戦略も開始している。世界各国は、ポスト鄧小平革命がどのようなものであるかを理解し、その世界的な衝撃を想定し、備える必要がある。

より現実をうまく反映できるように世界秩序を再編し、グローバルな統治構造の中枢に新興大国を迎え入れる必要がある。こうみなす点では世界的なコンセンサスが形作られつつある。経済的には必然の流れかもしれない。だが、それは世界の人権と民主主義にとって本当にいいことだろうか。金融や貿易領域では、新興大国がグローバルな交渉に参加するのは当然だろう。しかし今のところ、人権や民主主義をめぐる新興国の政治的価値は、国際社会の主要なプレーヤーおよびそのパートナーが信じてきた価値とはあまりにもかけ離れており、世界の統治評議会を構成する国際機関の中枢に新興大国を参加させるのは考えものだ。新興大国は世界で有意義な役割を果たすのに必要な条件、つまり、内外の市民社会の声に耳を傾け、民主的統治を受け入れるつもりがあるのか、もっと真剣に考えるべきだし、既存の大国の側も、そのような新興大国をあえて仲間に迎え入れることを本当に望むのか、もう一度考えるべきだろう。

CFRミーティング
財政赤字へのリスク認識が変化しない限り、資金は動かない
――アラン・グリーンスパンとの対話

2010年10月号

スピーカー
アラン・グリーンスパン 前FRB議長
プレサイダー
モティマー・ザッカーマン U・S・ニュース&ワールドリポート理事長

雇用は伸びていないが、企業収益は大幅に改善している。これは生産性の上昇によって単位あたり生産コストが減少していることで説明できる。だが、それが、固定資産投資へとつながっていない。私の試算では4000億ドルの投資が手控えられている。・・・・中央銀行が大規模な資金を金融システムに注入するが、そこから資金が動こうとしない。ケインズは、1936年にこの現象を「流動性の罠」という言葉で表現した。この現象は、アメリカだけでなく、他の先進国にも共通してみられる。リスクに対する心理や姿勢が変化しない限り、資金は動かないだろう。・・・大規模な財政赤字が資本投資をクラウドアウトしている。財政赤字の規模が、資本投資のレベル、特に、固定投資、非流動性資産への投資を左右している(抑え込んでいる)。・・・・日本問題も考えなければならない。いずれ、経常黒字は赤字へと転じ、日本は国際市場から資金を調達しなければならなくなる。・・・

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