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ヨーロッパの価値を救うには
―― イスラム系難民とヨーロッパ的価値の危機

アレクサンダー・ベッツ オックスフォード大学教授 (国際関係論、強制移住策)

The Elephant in the Room

Alexander Betts オックスフォード大学教授(国際関係論、強制移住策)。同大学付属難民研究センターディレクター。

2016年3月号掲載論文

ヨーロッパ市民がイスラム系移民を歓迎していないのは事実だが、問題は、極右政党がこうした市民の不安につけ込んで、排外主義を煽り立てているのに対して、その他の政治的立場をとる政治家が、沈黙を守っていることにある。大衆がイスラム教徒に懸念をもつ社会環境のなかで、パリでの同時多発テロ、そしてケルンでの女性を対象とする性的暴行・強奪事件が起き、これがヨーロッパの難民問題の決定的なゲームチェンジャーとなった。だがヨーロッパにとっての真の問題は、市民がヨーロッパのイスラム教徒をどうみなすべきか、「難民や移民」と「テロリストや犯罪者」の区別をどうつけるかについて、政治家たちがビジョンを示してこなかったことにある。彼らは、選挙に悪影響がでたり、メディアにレッテルを貼られたりすることを懸念し、口を閉ざしてきた。こうして市民の反応は混乱し、思い込みに囚われるようになり、ヨーロッパの価値が脅かされている。・・・

  • イスラム系難民への政治的嫌悪感
  • ゲームチェンジャー
  • 衰退する中道政治とヨーロッパの価値
  • 安全保障と難民

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