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ユーラシアに迫り来るアナキー
―― ユーラシアのカオスと中ロの対外強硬路線

ロバート・カプラン ニューアメリカン・セキュリティセンター シニアフェロー

Eurasia's Coming Anarchy

Robert D. Kaplan アメリカのジャーナリストで、ニューアメリカン・セキュリティセンターのシニアフェロー。アトランティック・マンスリー誌のナショナル・コレスポンデントも兼務。冷戦後の1994年に同誌で冷戦後の特質を「カミング・アナキー(来るべき無秩序)」と位置づけるエッセーを発表し、世界的に大きな注目を集めた。

2016年3月号掲載論文

1930年代までに十分なパワーを培ったドイツが対外侵略に打ってでたのとは逆に、中ロという現在のリビジョニスト国家は、国内の不安定化、脆弱性ゆえに対外強硬路線をとっている。ロシアは深刻なリセッションに陥っているし、中国の株式市場のクラッシュは今後の金融混乱を予兆している。経済的苦境のなかでアナキーに陥れば、中ロはナショナリズムを高揚させ、不満を募らす民衆の関心を外へ向かわせることで、内的な結束を固めようとするかもれない。クレムリンでのクーデター、ロシアの部分的解体、中国西部でのイスラムテロ、北京における派閥抗争、中央アジアの政治的混乱など、ワシントンは、カオスの到来に備えるべきだ。冷戦、ポスト冷戦という比較的穏やかな時代は過ぎ去り、ユーラシアの解体に伴うアナキーに派生する長期的な大国間紛争の時代に備えるべきだろう。

  • 弱さゆえの対外攻勢
  • 中ロがアナキーに陥れば
  • ロシアの脆弱性
  • ロシアの次の標的とヨーロッパ
  • 中国の瀬戸際作戦
  • 迫り来るユーラシアのカオス
  • 棍棒を手に穏やかに話せ
  • 長引く紛争

<弱さゆえの対外攻勢>

中国は周辺海域における領有権を広く主張し、ロシアはシリアとウクライナの紛争に介入している。ユーラシアの二つのランドパワーが新たな力を誇示していると現状を考える人もいるだろう。だが現実には、中ロが力を誇示しているのは、両国がパワフルだからではなく、むしろ弱点を抱え込んでいるからだ。

1930年代までに十分なパワーを培ったドイツが対外侵略に打ってでたのとは逆に、中ロという現在のリビジョニスト国家は、逆のパターンを辿っている。両国は、国内の不安定化ゆえに対外強硬路線をとっている。そして、これはわれわれが歴史的なターニングポイントにさしかかっていることを意味する。ベルリンの壁が崩壊して以降初めて、アメリカは大国間のライバル関係に直面しつつある。・・・

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