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中国経済のスローダウンを分析する

セバスチャン・マラビー 米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)、ブラッド・セッツアー 米外交問題評議会シニアフェロー(国際金融担当)

Global Market and the Chinese Economy

Sebastian Mallaby 米外交問題評議会国際経済担当シニアフェロー。著書にMore Money Than God: Hedge Funds and the Making of a New Eliteがある。
Brad Setser 米外交問題評議会シニアフェロー。米外交問題評議会フェロー、米国家安全保障会議スタッフ(国際経済担当)、米財務省副次官補(国際経済分析)を経て現職。

2016年2月号掲載論文

企業投資の前提は高度成長であり、成長の結果である消費の拡大によって、投資が作り出す財が吸収される。しかし、経済成長がスローダウンすれば、大規模な不良債権を抱え込む。これが資金の流れを淀ませ、経済成長は鈍化する。成長率の鈍化はさらに多くの融資を不良債権化する。・・・中国でこの手のネガティブなフィードバックループによる負の連鎖が起きる危険がある。(S・マラビー) 現在の中国経済に、(経済成長モデルの移行に派生する)構造的なスローダウンという側面があることは誰もが知っている。これに加えて、景気循環上の下降局面にあることも認識しなければならない。実際、不動産市場の冷え込みが製造業に影響を与え、これが賃金の成長や国内需要を抑え込んでいる。これらの下方圧力を、資金投入を通じた金融緩和政策によって十分に相殺できるかどうかが問われている。・・・金融緩和政策とそれが経済に与える衝撃を判断する上で、製造業購買担当者景気指数(PMI)は重要な指標だ。PMIを、緩和政策が不動産投資の落ち込みに端を発する成長を抑え込む流れを覆せるほどパワフルかどうか判断する目安にできる。(B・セッツアー)

  • 二つのフィードバックループ
  • 何が起き、政府はどう対応しているか
  • 人民元のレート
  • 中国経済を左右する最大の不確実性とは

<二つのフィードバックループ>

 

マイケル・レビ 2016年の経済リスクを考える上で、中国で起きていること、今後起きるかもしれないことを、どの程度、重視しているだろうか。市場的・政策的な視点の双方からコメントして欲しい。

 

マラビー 市場的な意味でもおそらくは政策的な意味でも、経済領域での最大のイベントは中国で起きている。これに匹敵するような衝撃をもつ政治的イベントは、中東や北朝鮮で今後新たな軍事的展開が起きた場合だろう。イギリスが欧州連合(EU)からの離脱を決断し、EUの先行きが不透明化すれば、これも最大級のイベントになる。しかし、これらの政治的危機を除外して、経済領域にリスクを限定すれば、中国経済の今後が非常に大きな重要性をもつのは明らかだろう。

なぜ中国に注目すべきか。世界で二番目に大きな経済の成長率が鈍化していることだけがその理由ではない。中国経済の成長が減速していることは誰でも知っているが、それが非常に大きな減速になる危険があるからだ。なぜそうなるリスクがあるか。中国経済にはフィードバックループ(循環回路)が存在するからだ。

第1は、成長と投資の間に存在するフィードバックループだ。これまで、急速な経済成長が、大規模な投資を促し、そうした大規模な投資が成長を刺激してきた。

しかし、人口動態が変化し、技術的なキャッチアップの余地が小さくなり、農村から都市部へと人口を移動させることで得られる生産性の向上にもはや期待できなくなっている。こうした理由から、中国経済はスローダウンしている。

成長と投資のポジティブなフィードバックループがネガティブなものへと変化している。このために成長率が鈍化し、投資を手控えざるを得なくなっている。投資を控えれば、成長は鈍化し、成長が鈍化すれば、さらに投資は減少していく。

第2のフィードバックループは成長と債務の連鎖だ。投資の増大は、裏を返せば企業債務の増大を意味する。企業投資の前提は高度な成長であり、その結果である消費の拡大によって、投資が作り出す財が吸収される。しかし、経済成長がスローダウンすれば、大規模な不良債権を抱え込む。これが資金の流れを淀ませ、経済成長は鈍化する。成長率の鈍化はさらに多くの融資を焦げ付かせ、不良債権を増やす。つまり、この手のネガティブなフィードバックループによる負の連鎖が起きる危険がある。だからこそ、中国経済を注視すべきだと私は考えている。

 

レビ ブラッド、どうだろう。

 

ブラッド・セッツアー 中国経済が、われわれが見守るべき経済イベントのトップ2に入るのは間違いない。もう一つの重要なイベントは世界が原材料価格の低下にどのように適応していくかだ。1バレル35ドルの原油価格が産油国にどのような衝撃を与えるかは、2016年のグローバル経済にとってのビッグストーリーになるだろう。

これまで投資主導型の経済成長モデルをとってきた中国は、いまや消費主導型モデルへの移行を試みており、これが経済成長のペースを大きく減速させている。こうして、中国の原材料需要が大きく低下し、新興市場国の様々な資源価格を押し下げている。中国経済の減速とグローバル市場における原材料価格の低下は密接に関連している。また、セバスチャンが説明した側面に加えて、中国の為替政策にも注目する必要がある。

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