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CFR Interview
民進党政権で中台関係はどう変化するか

ジェローム・コーエン 米外交問題評議会シニアフェロー(非常勤)

A Stable Transition in Taiwan

Jerome Cohen アメリカの法律家で、ニューヨーク大学教授。米外交問題評議会シニアフェロー(アジア研究)。専門は東アジアの国際関係、国際法など。

2016年2月号掲載論文

国民党の馬英九政権は中国との協力関係を大きく進化させたが、交渉に関する十分な情報公開をせず、合意を市民による評価と監督に委ねることを怠った。これが間違ったやり方であることを立証したのが「ひまわり学生運動」だった。・・・台湾と大陸を一体化させていくことについて、民進党は今後も慎重な姿勢を崩さないだろうが、少なくとも、蔡英文は、これまでの協調路線を覆すのではなく、維持していくと表明している。・・・台湾と大陸との関係を進展させるかどうか、進展させるとして、それをどのように実現するか。これが次期政権の課題になるだろう。考えるべきは蔡英文が、台湾と中華人民共和国が「一つの中国」であるとする「92年コンセンサス」を受け入れるかどうかだ。・・・アジアでもっともパワフルな国である中国に近く、北東アジアと東南アジアの間に位置する「不沈空母」として、台湾はかなりの軍事戦略上の価値を持っている。しかし、可能性は低いとは言え、中国との統合を、台湾住民がリファレンダムを通じて明確に支持した場合には、アメリカがそれに反対することはないだろう。・・・(聞き手はエレノア・アルバート、オンラインライター・エディター)

  • 民進党政権と中国との関係
  • 南シナ海問題への台湾の立場
  • 海峡間関係とアメリカの立場

 

<民進党政権と中国との関係>

―― 今回の選挙で、民主進歩党(民進党)の蔡英文(ツァイ・インウェン)が次の台湾総統に選ばれ、議会(立法院)選挙でも民進党が単独過半数を制した。こうした政治的変化によって、地域的な安定はどのように変化していくだろうか。

民進党が行政府と議会をともに制したのは今回が初めてで、これによって台湾の政治は間違いなく変化していく。経済改革だけでなく、政治・憲法の改正も試みられるはずだ。例えば、憲法改正を必要とする司法制度の改革が模索されると思う。

一方、民進党政権が、北京との安定した予見できる関係、互恵的な海峡間関係を維持していくことに失敗すれば、地域的な安全保障が損なわれ、その余波は近隣諸国だけでなく、日本、韓国、アメリカにも及ぶ。

いずれにせよ、民進党が主導する台湾は、中国の周辺国との関係強化を模索し、より踏み込んだ政治・経済領域の協調関係の実現を目指すだろう。とはいえ、台湾が大きく依存する相手が今後もアメリカと日本であることに変わりはない。

―― 中国の習近平国家主席と台湾の馬英九総統は2015年11月に歴史的な会談を行っている。中台の海峡間関係は全般的にどのような状態にあるのか。

馬英九が総統になって6年間で中国との間で20を超える合意がまとめられ、この合意に即して貿易、投資、交通、犯罪捜査と司法協力、学術、観光、運動競技などの領域で交流が進められてきた。

しかしながら、海峡間関係は、学生たちが立法院を占拠した2014年の「ひまわり学生運動」以降、あまり進展していない。馬英九政権がまとめたサービス貿易協定に学生たちが反対したこの抗議行動によって、議会における協定の審議は中断された。その後も製品貿易に関する交渉は続けられているが、依然として合意は成立していない。

台湾と大陸との関係を進展させるかどうか、進展させるとして、それをどのように実現するか。これが次期政権の課題になるだろう。考えるべきは蔡英文が、台湾と中華人民共和国が「一つの中国」であるとする「92年コンセンサス」を受け入れるかどうかだ。もっとも、この合意は、双方で異なる解釈がされている(訳注―― コンセンサスでは、中台は「一つの中国」を認めつつも、「中国」が何を指すのかはそれぞれが解釈するとされているが、北京は「それぞれが解釈する」という台湾側の主張を受け入れていない)。

92年コンセンサスを蔡英文が受け入れれば、民進党が主張してきた「台湾独立」の可能性はなくなる。一方、馬英九を含む国民党政権は「一つの中国」原則にこだわり、実質的に台湾の分離独立を遠ざけてきた。

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