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CFR Interview
ヨーロッパ危機、中国の大戦略とTPP

イアン・ブレマー ユーラシア・グループ代表

Steering New Course on Foreign Policy

Ian Bremmer アメリカの政治学者で、世界の地政学リスク、政治リスクの分析を行うユーラシア・グループの代表。フーバー研究所を経て現職。フォーリン・アフェアーズでは、「インターネットは自由も統制も促進する――政治的諸刃の剣としてのインターネット」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2010年12月号掲載)「G7からG20そしてGゼロへ――主導国なき世界経済は相互依存からゼロサムへ」(ノリエル・ルービニとの共同執筆。2011年3月号掲載)、「国家資本主義の台頭と市場経済の終わり?」(2009年6月号掲載)などを発表している。

2015年8月号 掲載論文

ヨーロッパは反EU感情の高まり、メンバー国間の亀裂、そしてロシアの脅威にさらされている。問題の多くは、メンバー国間の関係がうまくいっていないことに派生している。ギリシャのような小国がかくも大きな混乱を引き起こし、いまも解決されていないこと自体、メンバー国の関係がうまくいっていない証拠だろう。しかも、大きな地政学問題が生じている。中東やサハラ砂漠以南から難民がかつてない規模でヨーロッパに押し寄せ、ウクライナ危機に派生する米ロの対立もエスカレートしている。これらのすべてがヨーロッパに重くのしかかり、欧州経済に対する足かせを作りだしている。一方、現在、世界でグローバル戦略をもっている国があるとすれば、それはアメリカではない。中国だ。中国は国際貿易を拡大し、多国間金融機関を立ち上げている。中国は国家主導型の貿易・投資ルールの確立を試みており、このモデルは欧米が確立してきた既存の国際ルールを直接的に脅かすことになる。この意味でもアメリカがTPP構想から遠ざかるのは戦略的に間違っている。TPPはアメリカの長期的戦略のもっとも重要なコンポーネントであり、協定を締結することが極めて重要だ。

  • ヨーロッパ危機
  • 中国の戦略とTPP構想
  • 原油価格暴落とサウジ

<ギリシャはEUに踏みとどまる>

―― ユーラシア・グループは、2015年のグローバルリスクとして「ヨーロッパが政治的に機能不全に陥ること」をかねて予測してきた。ギリシャの債務危機はここにきて急速に悪化している。仮に短期的に危機を先送りできても、欧州連合(EU)はその構造的な問題に今後取り組んでいけるだろうか。
どう考えても無理だ。ヨーロッパは反EU感情の高まり、メンバー国間の亀裂、そしてロシアの脅威にさらされている。問題の多くは、メンバー国間の関係がうまくいっていないことに派生している。ギリシャのような小国がかくも大きな混乱を引き起こし、いまも解決されていないこと自体、メンバー諸国の関係がうまくいっていない証拠だろう。

ギリシャの混迷は今後も続くはずだ。ギリシャ市民が、ノーという答を出しても、チプラス政権が解体する可能性があるのなら、EUはギリシャのユーロ圏離脱を可能な限り、先送りしようとするかもしれない。・・・

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