Tommy Alven / Shutterstock.com

移民と社会同化
―― 追い込まれたスウェーデンの壮大な実験

イーヴァル・エクマン スウェーデン公共ラジオ
国際問題プログラムホスト

Stockholm syndrome
―― How Immigrants Are Changing Sweden's Welfare State

Ivan Ekman スウェーデンのジャーナリストで、公共ラジオ放送で主に国際問題をテーマに議論する番組「Konflikt」の司会者。

2014年7月号掲載論文

この数十年にわたって、ボスニア、イラク、ソマリアなどから逃れてきた人々は、ヨーロッパでもっとも寛大なスウェーデンの難民保護政策の恩恵に浴してきた。だがその結果、かつては同質的だったこの国の社会はいまや大きく姿を変えた。経済が停滞するなか、単純労働を中心とする雇用状況が改善せず、失業率は高止まりしている。しかも、社会保障政策が大きな圧力にさらされている。こうして反移民の立場をとるスウェーデン民主党が政治的支持を伸ばしている。「巨大な社会実験がスウェーデン社会に強制されてきたが、その実験が失敗しているのはすでに明らかだ。多文化社会のビジョン、理想郷そして夢は崩れ去った」 と民主党は主張している。一方で、移民の若者たちによる暴動も頻発している。移民国家スウェーデンは大きな岐路に立たされている。

  • 停滞する経済と増大する移民
  • 右派の台頭
  • 行き場を失った移民の子供たち
  • 移民の国
  • 多様性と同化

<停滞する経済と増大する移民>

「移民がスウェーデンの生活スタイルを脅かしている」。このような主張をよもやしそうにない人物がこう発言してしまった。ティノ・サナンダジは、スウェーデンのストックホルムにある市場経済主義を掲げる有名なシンクタンク、産業経済研究所のエコノミスト。国境を開放する政策を長年擁護してきたスウェーデンのエリートの一人だ。しかも彼の人生は、移民のサクセスストーリーそのものだ。

まだ9歳だった1989年、サナンダジは母親や弟とともにイランからスウェーデンへとやってきた。政府の奨学金を得て、エリート校であるストックホルム商科大学に通い、その後、アメリカに渡ってシカゴ大学から公共政策学の博士号を取得した。だがそれでもサナンダジは、スウェーデンはかつての自分のように外国人を受け入れるのをやめるべきだと主張している。・・・

この論文はSubscribers’ Onlyです。


フォーリン・アフェアーズリポート定期購読会員の方のみご覧いただけます。
会員の方は上記からログインしてください。 まだ会員でない方および購読期間が切れて3ヶ月以上経った方はこちらから購読をお申込みください。会員の方で購読期間が切れている方はこちらからご更新をお願いいたします。

なお、Subscribers' Onlyの論文は、クレジットカード決済後にご覧いただけます。リアルタイムでパスワードが発行されますので、論文データベースを直ちに閲覧いただけます。また、同一のアカウントで同時に複数の端末で閲覧することはできません。別の端末からログインがあった場合は、先にログインしていた端末では自動的にログアウトされます。

(C) Copyright 2014 by the Council on Foreign Relations, Inc., and Foreign Affairs, Japan

Page Top