プーチンとロシアのイスラム教徒

ロバート・D・クルーズ スタンフォード大学准教授(歴史学)

Moscow and the Mosque ―― Co-opting Muslims in Putin’s Russia

Robert D. Crews スタンフォード大学准教授(歴史学)、同大学イスラム研究プログラム部長。著書に『For Prophet and Tsar: Islam and Empire in Russia and Central Asia』。

2014年5月号掲載論文

ロシア国内の多様なイスラム教徒をどう管理し、いかにすれば国への忠誠をつなぎ止められるか」。この課題に対処しようと、プーチンは内外における政治目的からイスラム教徒を取り込もうと懸命に試みてきた。しかし彼は、特定のイスラム教集団を支援して政治的な忠誠を引き出す一方で、他のイスラム集団を抑圧する分断統治戦略をとっている。しかも、イスラム教とロシアの政情不安が結びついているような印象を与える声明を繰り返し発表している。結局のところ、モスクワは「イスラム教のことを国が支えるべき伝統的なロシアの宗教だ」と認めつつも、イスラム過激派に対する偏見と恐怖を非イスラム教徒の間で煽り立て、「イスラム教徒は好戦的だ」というレッテルをはっている。その結果、モスクの指導者たちが上下関係をめぐって争い、急進派だとか異端だといった非難の声を浴びせ合い、国や警察に介入を訴える権力闘争がいまやロシア全土で繰り広げられている。・・・・

  • モスクワとイスラム社会
  • はっきりしないイスラム教徒の人口
  • 政府の宗教へのアプローチ
  • ロシアへの忠誠
  • 分断統治戦略とイスラム教徒の内部抗争
  • 双方向で進む世俗化と過激化
  • プーチンのアプローチは間違っている

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