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ベビー・ギャップ
―― 出生率を向上させる方法はあるのか

スティーブン・フィリップ・クレーマー 米国防産業大学教授

Baby Gap

2012年5月号掲載論文

少子化によって課税できる労働人口が少なくなるにつれて、政府は困難な決定を下さざるを得なくなる。社会保障手当を切り捨てて引退年齢を引き上げるか、税率を大きく引き上げるしかなくなるからだ。さらに厄介なのは、労働人口が高齢化していくにつれて、経済成長を実現するのが難しくなっていくことだ。・・・低い出生率は、先進世界の福祉国家体制だけでなく、国の存続そのものを脅かすことになる・・・男女間の差別解消に真剣に取り組まず、女性のための適切な社会サービスの提供に熱心でなかったイタリアや日本のような国は出生率を上昇させられずにいる。これに対して、GDP(国内総生産)の約4%程度を、子育ての支援プログラムにあてているフランスやスウェーデンは出生率の低下を覆すことに何とか成功している。出産奨励プログラムには大きなコストがかかるし、伝統的な家族の価値を支持する人々の怒りを買う恐れもある。だが、低出生率の罠にはまってしまえば、これまでとは不気味なまでに異なる人口減少という未知の時代へと足を踏み入れることになる。

  • 少子化は国の存続を脅かす <一部公開>
  • フランスの少子化対策
  • 女性の社会進出と家庭の両立
  • なぜイタリアと日本の出生率は低下したか
  • 人口減少は運命か

<少子化は国の存続を脅かす>

人類の歴史のほとんどの時期をつうじて、出生率と死亡率の間には適切なバランスが存在した。しかし、19世紀に入ると公衆衛生と栄養の改善によって寿命が延び、このパターンは変化し始めた。1800年当時10億だった世界の人口は、いまや70億に達している。

途上国が人口増大によってさまざまな問題を抱え込んでいるのに対して、先進国社会はまったく逆の問題に直面している。出生率が非常に低く、すべての世代で人口がこれまでよりも減少している。

南・東ヨーロッパのほとんどの諸国、オーストリア、ドイツ、ロシア、そして東アジアの先進諸国の出生率は危険なまでに低下し、女性が一生に出産する子供の数は1・5人を下回っている。合計特殊出生率でみるとロシアが1・6人、ポーランドが1・4人、韓国が1・2人という具合だ。一方、アメリカの合計特殊出生率は2・05人で、ほぼ人口水準を維持できるレベルにある。

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