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儒教とアジアの政治
―― 中国が「民主主義」という表現を使う理由

アンドリュー・ネーサン
コロンビア大学政治学教授

Confucius and the Ballot Box
――Why "Asian Values" Do Not Stymie Democracy

2012年12月号掲載論文

シンガポールのリー・クアンユー上級相(当時)は「個人の権利を重視する欧米型民主主義は、家族主義の東アジア文化にはなじまない」とかつて主張した。これが多くの論争を巻き起こした「アジア的価値の仮説」の源流だ。結局、アジアでは民主主義は機能しないと主張した点で、この仮説は間違っていた。一方で、社会が近代化していくにつれて権威主義体制は崩れていくという(主に欧米の研究者による)主張も間違っていた。権威主義政府は、教育やプロパガンダを通じて「これまでの社会規範で十分に民主的だ」と人々に信じ込ませることができたからだ。だが、教育やプロパガンダだけで権威主義体制を支えていくのはもはや難しくなっている。政治的正統性の危機を回避するには政治腐敗を隠し、経済成長を維持するしか道はなくなっている。今後、経済が失速し、社会保障制度が崩壊してゆけば、権威主義国家の市民たちも、近隣諸国のように自国も民主体制をとるべきだと考えだす可能性が高い。

  • アジア的価値と民主主義
  • 「アジア的価値の仮説」
  • 個人よりも集団を、自己主張よりも調和を
  • 世論調査と儒教的価値
  • 伝統と近代化、伝統と抑圧政権
  • 権威主義体制を揺るがす正統性の危機

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