タイの政治・社会危機の本質とは
――交錯する階級闘争、地域対立と政治権力抗争 

バーティル・リントナー ジャーナリスト

The Battle for Thailand: Can Democracy Survive?

Bertil Lintner スウェーデン人ジャーナリスト。タイ在住。1982~2004年まで『ファーイースタン・エコノミック・レビュー』誌特派員

2009年9月号掲載論文

エリート集団内の新興勢力と旧勢力が権力闘争を繰り広げ、都市生活者と農村部が反目し、北部と東北部がバンコクや南部と対立し、貧困層と富裕層の亀裂も深まっている。しかも、これまで社会を束ねる役目を果たしてきた王室も、王位継承問題を抱えている。これに経済危機が重くのしかかるようになれば、タイの将来はますます不透明化していく。タイの政治危機が社会闘争の様相を呈するようになった最大の理由は、タクシンが貧困層、特に貧しい東北部の苦境を権力抗争に利用したからだ。しかし、タクシン派同様に、反タクシン派も大きな問題を抱えている。現在の闘争は、経済階級闘争というよりも、政治闘争や地域闘争の色彩が強く、政治危機も二つのエリート集団間の権力闘争と考えるのが真実に近い。現状では、タイの危機が収束していくとは考えにくい。

  • 憂鬱な未来
  • タクシンが置き去りにした亀裂とは
  • タクシン追放後の政治ドラマ
  • 危機の本質は社会的分裂
  • 民主主義への遠い道のり
  • 憂鬱な未来

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