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移民労働力と経済成長を考える
――移民労働者は脅威か、恩恵か

タマル・ジャコビー マンハッタン・インスティチュート シニア・フェロー

Immigration Nation

2007年2月号掲載論文

グローバル世界の新たな潮流のなかでも特に重要なのが、世界の労働市場の統合が進んでいることだ。アメリカでは多くの産業が単純(非熟練)労働力不足という問題を抱え込んでおり、これに呼応するかのように、メキシコ人を中心とする単純労働者がアメリカへとタイミングよく殺到し、増大するアメリカの労働需要を満たしてくれている。こうした移民たちは、アメリカ人労働者が嫌がる仕事を引き受けて産業を支えることで、経済的富の拡大、アメリカ人労働者のスキルアップの機会をもたらしている。移民の流入がアメリカ経済にとって有益であることがはっきりしている以上、移民を締め出すのではなく、移民流入をより効果的に管理する制度改革を模索すべきである。

  • 移民問題をめぐる奇妙な現実
  • 高まる労働需要と移民労働者流入のメカニズム
  • 移民労働力は成長を刺激する
  • 移民流入の阻止ではなく、管理を

<移民問題をめぐる奇妙な現実>

いまから1年半ほど前までなら、外国からの旅行者が1週間のアメリカ滞在中に接するテレビや新聞の情報から、「アメリカでは移民問題が大きな問題になっている」と感じることはなかっただろう。だがいまや、状況は大きく変化している。アメリカ市民の多くが、移民問題こそアメリカが抱える最大の問題の一つと考え、これを国際テロリズムに次ぐ脅威と感じている。
こうした世論の大きな流れを形づくったのはおもに政治家とメディアだ。アメリカの移民受け入れ制度が崩壊したのは、なにも最近のことではないし、その数を含め、移民をとりまく状況がここ数年で劇的に変化したわけでもない。たしかに移民制度を改善する必要はあるが、移民問題は実際どの程度深刻な問題なのか。アメリカの安全保障や、国としてのアイデンティティーを脅かすほどの危機的状況をもたらしているのか。議論されているように、解決しがたい根本的問題をいくつも生み出しているのか。・・・

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