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外交官なき外交の時代

ジョージ・ケナン

Diplomacy Without Diplomats?

ジョージ・ケナンは、一九二六年から一九五三年まで国務省に在籍した米国屈指のソビエト通の外交官の一人で、歴史家でもある。一九四六年にモスクワ大使館から送った「長文の電報」がジェームズ・フォレスタル海軍長官をはじめとするワシントンの政策決定エリートの目に留まり、翌年には『フォーリン・アフェアーズ』に「ソビエトの行動の源泉」を発表。一躍、対ソ「封じ込め」政策の構築者として脚光を浴びる。国務省時代には、戦前の東ヨーロッパ勤務を経て、戦後は国務省・政策企画室初代室長を皮切りに、ソビエト大使などの要職を歴任、また、一九四七年対日占領政策の転換(逆コース)にもおおきな役割を果たした。国務省を離れた後は、プリンストンの国際問題高等研究所に籍を置き、歴史家として第一次世界大戦の研究など、数多くの著作を発表し続けている。代表作に『アメリカ外交五〇年』があり、その自伝『ジョージ・ケナン回顧録』は、チャーチルの自伝と並び称される二十世紀を代表する自伝と言われる。

1997年12月掲載論文

政治権力の分散化、利益の多様化は、外交組織にも大きな衝撃を与えている。いまや、国務省を迂回して国際交渉がなされることも珍しくなく、かつては国務省の人間とわずかばかりの武官だけがいた海外の大使館でも、国務省の職員や外交官はむしろ少数派である。さらに、州や利益団体までもが海外にオフィスをもち、多国間交渉の場には、相手国の立場や意向すらわきまえていない国務省とは無関係の代理人が送り込まれることも多い。だが、これは急速に変貌する社会や経済の反映であり、むしろ問題は、国家を代弁するのとは異なる次元で活動する多種多様な単位が登場したり、本来国家とは呼びえない資質しかもたない政治単位が国家として対外的に活動していることだ。この外交の混乱をうまく整理し、それぞれに適切な役回りを与えるルールを確立させることこそ急務であろう。

  • 外交組織と政府
  • 外交組織の独立性
  • あなたは外交官になりたいか
  • 分散化する外交チャンネル
  • 国務省の実態
  • 今後の責務

<外交組織と政府>

もし、アメリカ合衆国の外交組織を最初につくり上げた人々が定めた、真の外交集団の形成に必要な条件がこれまで一貫して適用されてきたなら、アメリカはこれまで長期にわたって世界の他の民主諸国と比べてもひけをとらないどころか、より優れた外交集団を輩出しつづけてきたはずである。だが、厳密に非政治的で周到に選りすぐられた外交集団の形成を期待したところで、それが尊重される見込みはそもそもありうべくもなかった。ワシントンの政治エリートや高級官僚たちは、自分たちとは異なる概念枠組みの上に成り立ち、政治・行政面での独立性をもつ(外交)専門家集団の存在を官僚組織内に長期的に認めるような懐の深さを(いまも昔も)もっていないからである。しかし、政治システムの急速な分権化、広範な権限の分散化の進むこの時代にあっては、設立当初の厳格なビジョンをすっかり欠いてしまった現在の外交組織のほうが、世界と双方向で交流するための新たな手段を見いだすには、より適しているのかもしれない。

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