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米国に関する論文

新しい中東戦略を提言する
 ――イラン封じ込め戦略は間違っている

2008年6月号

バリ・ナサル  フレッチャースクール法律外交大学院国際政治学教授
レイ・タキー  米外交問題評議会シニア・フェロー

1980年代にアメリカは(シーア派の)イランを封じ込めようとアラブ諸国政府を動員したが、その結果、スンニ派の政治文化を急進化させ、ついにはアルカイダを誕生させてしまった。今回も、同様に忌まわしい結末に直面する危険がある。
  イラン封じ込め戦略は、シーア派のイランに対抗する思想的な防波堤としてスンニ派過激主義思想を助長するだけに終わるかもしれない。これまでのように中東のパワーバランスを回復することを目指すのではなく、地域の統合を働きかけ、すべての関係勢力が現状を維持することに利益を見いだすような新たな枠組みをつくり上げることを目指すことこそ、ワシントンにとって賢明な選択のはずだ。

「私はアメリカの相対的地位が低下する一方で、ヨーロッパやアジアが台頭するといったとらえ方はしていない。アメリカの相対的な立場が低下し、他の多くの諸国が混乱のなかで競い合うようになる。これが現実に起きていることだ」。むしろ、国がパワーを独占した時代は終わっていることを認識する必要があるとR・ハース米外交問題評議会(CFR)会長は強調している。「ドルの流れという点ではシティ・グループやメリルリンチなどがより大きな役割を果たしていくようになるし、政府系ファンド領域ではアブダビ投資庁(ADIA)、グローバルな公衆衛生領域ではゲイツ財団などのプレーヤーが台頭している。中東の武装集団も、パキスタン西部に隠れているテロ集団も無視できない存在になる」。もはや、脅威やアジェンダがかつてのようにはっきりとしたものでない以上、国だけでは問題に対処できないし、京都合意のような包括的な国際合意の形成も、もはや期待できないとハースはみる。必要なのは、かつてのような同盟関係ではなく、是々非々の多国間主義であり、これまでの多国間主義とは異なる協調のスタイルを考えていく必要があると指摘した。邦訳文は5月にワシントンで開かれたCFRミーティングの質疑応答からの抜粋。

「私はアメリカの相対的地位が低下する一方で、ヨーロッパやアジアが台頭するといったとらえ方はしていない。アメリカの相対的な立場が低下し、他の多くの諸国が混乱のなかで競い合うようになる。これが現実に起きていることだ」。むしろ、国がパワーを独占した時代は終わっていることを認識する必要があるとR・ハース米外交問題評議会(CFR)会長は強調している。「ドルの流れという点ではシティ・グループやメリルリンチなどがより大きな役割を果たしていくようになるし、政府系ファンド領域ではアブダビ投資庁(ADIA)、グローバルな公衆衛生領域ではゲイツ財団などのプレーヤーが台頭している。中東の武装集団も、パキスタン西部に隠れているテロ集団も無視できない存在になる」。もはや、脅威やアジェンダがかつてのようにはっきりとしたものでない以上、国だけでは問題に対処できないし、京都合意のような包括的な国際合意の形成も、もはや期待できないとハースはみる。必要なのは、かつてのような同盟関係ではなく、是々非々の多国間主義であり、これまでの多国間主義とは異なる協調のスタイルを考えていく必要があると指摘した。邦訳文は5月にワシントンで開かれたCFRミーティングの質疑応答からの抜粋。

アメリカの国益を再考する
――新しい世界とアメリカ特有のリアリズム

2008年6月号

コンドリーザ・ライス 米国務長官

イランは特有な課題を突きつけている。テヘランは、革命防衛隊やアルクッズ旅団などの国家的な軍事ツール、そしてイラクのマフディ軍団、ガザのハマス、レバノンその他でのヒズボラといったイランのパワーを拡大するための非国家型の傀儡勢力の双方を動員して、破壊的な路線を模索している。

イラン政府は他の政府の転覆工作を試み、ペルシャ湾岸、中東全域に影響力を拡大しようとしている。イスラエル国家の存続を脅かし、アメリカを不倶戴天の敵とみなし、イラクを不安定化させ、米軍を脅かし、罪のないイラク人を殺している。アメリカはこうしたイランの挑発行為に対抗している。イランが核武装するか、核開発能力を手にすれば、それが、国際的な平和と安定にとっての大きな脅威となることははっきりとしている。

だがイランにはこれとは違う側面もみられる。偉大なペルシャ文化、そして抑圧のなかで苦しむ偉大な市民を擁している。イランの人々は国際社会に参加し、自由に旅行し、世界の最高レベルの大学で教育を受ける資格を持っている。すでにアメリカは、スポーツ、復興支援、芸術などの領域では市民レベルでイランの人々と交流している。

多くの民間領域ですでにイラン人は、アメリカ人、そしてアメリカという国との交流に前向きになっており、今後、アメリカとイランの国家レベルでの関係も変化していく可能性もある。イラン政府が国連安保理の要請を受け入れ、ウラン濃縮その他の核関連活動を停止すれば、アメリカを含む国際社会は、われわれの前にあるすべての問題についてイランと話し合う用意がある。イランにとってアメリカが永遠に不倶戴天の敵というわけではない・・・

信仰の時代における外交
――宗教的自由と国家安全保障

2008年5月号

トーマス・F・ファー ジョージタウン大学外交政策学部客員教授

宗教が世界的規模で台頭し影響力を強めつつある。だが、宗教とは本来、感情的かつ不合理なものであり、近代性とは相反するという根強い思い込みが、宗教と民主主義との関係についての明瞭な思考を妨げている。その結果、宗教的迫害に反対し、宗教を理由に拘束されている人物を解放することばかりにとらわれて、宗教的自由を促進するという目的が完全に忘れられてしまっている。
 政策決定者は、宗教に対して経済や政治問題同様のアプローチをとる必要がある。つまり、宗教のことを、人間や政府の行動を駆り立てる重要なインセンティブとして認識しなければならない。政治的、経済的動機のように、宗教的動機も、破壊的、または建設的構造双方を増幅させる力を持ち、より劇的な結果を招き入れることが多いことを理解し、外交に宗教ファクター、つまり、宗教的自由の促進という要素を統合していく必要がある。

CFRディベート
アメリカは対中貿易強硬策を
とるべきなのか?

2008年5月号

ロバート・E・スコット  経済政策研究所上級国際エコノミスト
ダニエル・J・アイケンソン  ケイトー研究所貿易政策研究センター副所長

アメリカの巨大な貿易赤字、人民元の切り上げ、中国における知的所有権の保護という懸案を中心に、米中貿易関係は、アメリカの大統領選挙でも大きな争点として取りあげられている。特に、民主党の大統領候補たちは、人民元を切り上げなければ、懲罰関税の発動も辞さないと発言している。今後の米中貿易関係はどうあるべきなのか。アメリカは対中貿易強硬策をとるべきなのか。それとも……。

CFRインタビュー
ヨーロッパはイラクからの
米軍撤退など望んでいない

2008年5月号

ジョセフ・ジョフィ 独ツァイト紙編集・発行人

アメリカにとって、冷戦期における最大の戦略的重要性を持つ地域はヨーロッパだったが、いまや、それは大中東地域だ。世界のナンバーワン国家が怖じ気づいて、中東から逃げ出すとなれば、スーパーパワーとしての役割を放棄することになる。
 米民主党候補が公約しているように、イラクからの撤退を強行すれば、「非常に大きな戦略的帰結に直面することになる」と指摘するジョセフ・ジョフィは、「アメリカが中東から撤退することを望んでいるヨーロッパの指導者はいないと思う」と指摘し、「私はオバマがナイーブで理想主義的なジミー・カーターのような人物でないことを望む」とコメントした。
 聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
戦争と経済
――イラク戦争のもう一つの問題

2008年5月号

ロバート・D・ホーマッツ ゴールドマン・サックス副会長

歴史的にみて、大がかりな戦争を始める前には、戦費のどの程度を税金でまかなえるか、どの程度の債務を背負い込むことになるかについての熱い論争が展開されてきた。南北戦争前には、25%を税金で支払い、75%を借金でまかなうことが合意されていた。
 第二次世界大戦期にも、税金と借金の比率を半々とすることで合意が形成されていた。だが、イラク戦争の場合、そうした戦費調達の議論は一切行われなかったし、同世代で大半の重荷を担うという話もなかった。それどころか、減税の話がでているし、通常、戦期には抑え込まれるはずの国内支出もイラク戦争期には増大している。
 イラク戦争の戦費の多くは透明性に欠けるし、いかにして戦費を調達するかについての議論も事前には行われなかった。今後、われわれはイラク戦争をめぐってこの点を問題として取り上げていく必要がある。

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