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米国に関する論文

戦略的ビジネス外交の薦め
―― 途上国経済を支配する中国企業への対抗策を

2012年8月号

アレキサンダー・バーナード
グリフォン・パートナーズマネージング・ディレクター

中国政府は途上国政府に低利の融資その他の支援を提供し、多くの場合、その見返りに、相手国に中国国有企業の資源開発へのアクセスを与え、インフラ整備プロジェクトを受注させることを求める。このやり方を通じて、中国企業は途上国の経済に食い込み、いまや新興市場国は自国の経済的生存を中国に依存するようにさえなっている。だが、巻き返しのチャンスはある。途上国の多くが「自国の経済を中国に支配されている現実」に反発しているからだ。「中国国有企業は相手国の労働者を雇うのではなく、自国から労働者を呼び寄せ、環境的配慮をせず、開発に古い技術を用いて(資源にダメージを与える)」というネガティブなイメージが定着しつつある。一部の途上国は中国にばかり依存するのではなく、経済関係の多様化を図りたいと考えている。途上国における中国国有企業に対する不満が高まっているだけに、この重要な市場で、アメリカがイニシアティブを取り戻すチャンスが生まれている。今こそ、戦略的ビジネス外交を展開すべきタイミングだ。

CFR Meeting
北米エネルギー安全保障の衝撃
――中東石油への依存度が半減すれば

2012年8月号

スピーカー
レックス・W・ティラーソン /エクソンモービルCEO
プレサイダー
アラン・マレイ /ウォールストリート・ジャーナル

いずれも大きな資源をもつカナダ、アメリカ、メキシコからなる北アメリカという枠組みでエネルギー政策、エネルギー安全保障をとらえればどうなるだろうか。資源の規模、使用できるテクノロジー、そして共通点の多い政策という点からみて、地域的な「エネルギー安全保障」の確立も視野に入ってくる。・・・仮にアメリカがペルシャ湾岸から原油を輸入する必要がなくなれば、国家安全保障政策も変化する。・・・アメリカが中東での軍事資源をどこか別の場所に移すと言い出せば、おそらく、大規模な石油消費国(中国)がその空白を埋めようとするだろう。・・・だが、重要なポイントは、中東石油がグローバル経済の安定の鍵を握っていることだ。この点では、中東石油への依存度を減らしていくとしても、アメリカはこの地域に今後も大きな関心を向けざるを得ないはずだ。・・・(R・W・ティラーソン)

Foreign Affairs Update
ハイテク企業の政治的・外交的影響力強化を
――シリコンバレーと外交政策

2012年8月号

アーネスト・J・ウィルソン 南カルフォルニア大学教授(クリントン政権国家安全保障会議スタッフ)

農業やエネルギー部門のように、産業利益を戦略的に定義している産業は、その利益を的確に見極めた上で、特定アジェンダの実現に向けてロビイングを展開する。だが、ハイテク部門は、政治的中枢から遠く離れ、業績の浮き沈みが激しく、集団的行動よりも個人の好みを優先する文化を持っている。このため、産業単位で政治的集団行動をとるのが決してうまいとはいえない。・・・だが、アメリカ経済の中枢はすでに製造業からハイテク・フロンティアへと移動している。ハイテク産業の指導者たちは、自分たちにとって好ましい外交政策がどのようなものであるべきかについての枠組みを定義し、シンクタンク、大学、政府のあらゆるレベルに接触し、自分たちが好ましいと考える政策の具体像を伝え、政策として具体化していく必要がある。・・・政府も農業や製造業の利益ばかり考えていればよかった時代がすでに終わっていることを認識する必要がある。

北朝鮮、中国、イランに対する毅然たる対応を
―― キューバミサイル危機の教訓

2012年8月号

グレアム・アリソン
ハーバード大学ケネディスクール教授

ケネディは、ソビエトがキューバに核ミサイルを配備しているという事実を前に、「長期的な戦争のリスクを低下させるには、短期的に戦争リスクを高める必要がある」と考えた。キューバ危機の教訓の一つは、戦争、そして核戦争のリスクでさえも引き受ける覚悟がなければ、巧妙な敵に対立局面において何度も裏をかかれてしまうということだ。イラン、中国、北朝鮮と相手が誰であれ、その一線を越えれば戦争も辞さないという「レッドライン」を設定しているのなら、その事実を敵対勢力に認識させ、実際に行動する決意をみせるべきだ。そうしない限り、警告は相手にされなくなる。

労働組合の衰退と中間層の未来

2012年7月号

ブルース・ウエスタン ハーバード大学ケネディスクール教授(社会学) / ジェーク・ローゼンフィールド ワシントン大学准教授

1950―60年代まで、アメリカの労働組合は政治的にも経済的にも非常に大きな影響力を持っていた。政治領域では、組合に参加していない者を含む労働者の利益擁護に広く努め、経済領域でも労働生産性の向上に応じて賃金の引き上げを求め、社会生活の向上に貢献した。このやり方を通じて、労働組合はアメリカの労働者階級と中間層を支えてきた。だが、1980年代までに組合の力は大きく衰退し、いまやアメリカは深刻な経済格差の時代に突入している。ここで、労働組合が格差と不正義の問題を正面から取り上げ、広範な経済層の利益を擁護し、賃金の停滞と政治からの隔絶に苦しむ数多くの家庭に訴えかければ、人々の支持を取り戻すことができるかもしれない。

アジアシフト、アラブの春、北朝鮮とイラン
―― オバマ外交の功罪を検証する

2012年7月号

マーチン・インディク ブルッキングス研究所副会長 / ケニス・G・リーバーサル ブルッキングス研究所中国センターディレクター / マイケル・オハンロン ブルッキングス研究所外交政策研究ディレクター

オバマ政権が2011年末に表明したアジアシフト(リバランシング)戦略はアメリカのリーダーシップを変化させていくための試金石だ。アジアシフト戦略を成功させれば、貿易促進と投資の枠組みが形成されるだけでなく、現地の部隊と緊密に連携するより小規模で柔軟な戦力へと米軍を再編することもできる。だが、オバマがそのような新しい秩序への移行をうまく模索していけるかは、イランの核開発問題をうまく決着させられるかどうか、そして、アメリカの政治・経済力を再生できるかどうかに左右される。イラン問題が制御不能になり、再び中東の安全保障がアメリカ外交の最優先課題にされるような事態になれば、他の重要な問題が再び後回しにされてしまう。また、アメリカの経済基盤がこのまま劣化していけば、長期的な国力、そして賢明な外交政策は維持できなくなる。国内的衰退を食い止めなければ、現状を大きく上回る厄介な事態にアメリカと世界は直面することになる。

CFRブリーフィング
TPPとアメリカの貿易政策

2012年7月号

クリストファー・アレッシcfr.org アソシエート・スタッフライター
ロバート・マクマホンcfr.org 副編集長

TPPは中国を警戒させ、アジア地域を競合する敵対的なパワーブロックへと分裂させると憂慮する専門家がいる一方、「日本、アメリカ、オーストラリアを含むTPPは(中国の台頭に対する)健全な代替策になる」という見方もある。さらに、二国間自由貿易や(TPPのような)地域的自由貿易構想は、世界貿易機関(WTO)が主導するグローバル貿易を損なってしまうと批判する専門家もいる。・・・

Classic Selection 2004
起業型経済の構築を

2012年7月号

カール・シュラム ユーイング・マリオン・コーフマン財団会長

デルやシスコ・システムズなど、アメリカ経済の富と生活レベルを引き上げているのは起業によって立ち上げられた企業である。こうした新企業は経済の技術革新を誘導するだけでなく、新規雇用をつくり出し、景気循環がつくり出す困難な時期の衝撃を緩和し、経済の成長と進化を刺激する。アメリカに存在する起業と大学、大企業、政府を結ぶ「4セクターモデル」は、経済停滞に直面している先進国だけでなく、途上国も導入できる。起業にまつわる文化的な制約は取り払うことができる。

米経済を左右する連邦準備制度理事会のパワー

2012年7月号

シルベスター・エイジィフィンガー
ティルブルグ大学教授(金融経済学)エディン・ムジャジク
ティルブルグ大学博士課程、金融エコノミスト

今後、米経済のインフレは高まり、成長は停滞し、失業率も高止まりすると考えられる。これらの問題へどう対応するかがすでにワシントンにおける党派対立と論争の中心に位置づけられている。オバマは現在のゼロ金利路線の継続を望んでいるが、共和党はあからさまにFRBとその議長を攻撃している。FRBの金融緩和策が将来のインフレをもたらすと確信している共和党議員もいる。共和党の予備選挙でミット・ロムニーは「私は(バーナンキではなく)自分でFRB議長を選ぶ」と発言している。しかし、大統領に選ばれても彼にその権限はない。・・・ロムニーも、多くのアメリカ人同様に、最高裁判所と同じようにFRBに対しては長期間にわたって手を出せないという事実に気づいていない。仮に共和党の大統領が誕生しても、オバマが2012年に選ぶFRBと対峙していくしかないのだ。

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