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米国に関する論文

Foreign Affairs Update
エネルギーとアメリカのパワー
―― アメリカ衰退論への決別

2013年7月号

トム・ドニロン/前米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

エネルギーは国益と国際関係を規定し、国の政策、経済開発、統治、安全保障、環境などの多くに影響を与える。米国内で豊かなエネルギー資源が十分に開発されるようになったことは、アメリカの経済、エネルギー安全保障、地政学的地位にプラスに作用している。だが、世界のエネルギー消費が引き起こす気候変動が、世界環境に桁外れに大きな問題を作りだしているだけでなく、すでに米国家安全保障にとっても脅威になっていることを見落とすべきではない。よりクリーンで持続可能なエネルギーソリューションを各国が模索していく必要があることは、はっきりしている。・・・オバマ政権が発足した当時であれば、アメリカのエネルギーの先行きはその弱点の一つとみなされていたかもしれない。だが、新たな資源が開発されただけでなく、二酸化炭素排出量の削減に成功している以上、いまやエネルギーは永続的なアメリカの強さ、アセットになったとみなせるだろう。

米陸軍を地上配備型ミサイル戦力へ進化させよ
―― 歩兵・砲兵部隊からの進化を

2013年7月号

ジム・トーマス/戦略予算分析センター研究部長

戦略的にも予算面でも逆風にさらされているため、国防予算削減の多くが米陸軍に押しつけられ、陸軍は今後その価値と役割を失っていくと考えられている。たしかに、第二次世界大戦後に戦艦が空母に取って代わられていったように、装甲部隊や機甲師団は今後衰退していくだろう。だが、陸軍が世界の重要地域に配備される地上配備型のミサイルシステムへと戦力の重心をシフトさせれば、新状況に適応できる。米陸軍は、敵の戦力投射能力を阻む独自のA2ADシステムを確立すべきだろう。特に日本から南シナ海までの島嶼群にミサイルランチャーを配備すれば、日本やフィリピンが中国による潜在的攻撃から国を自分たちで守る助けになるし、有事の際に、中国海軍の行動の自由を制約できる。地上配備型ミサイル戦力を重視すれば、米陸軍はアジア重視戦略にも有意義な貢献ができるはずだ。

米大企業CEO巨額報酬の謎に迫る

2013年7月号

スティーブン・N・カプラン
シカゴ大学ビジネススクール名誉教授

低所得層の収入が停滞するなかで、米大企業エグゼクティブたちへの報酬はますます高額化していると考えられている。このため、所得格差を気に病む市民も政治家も、批判の矛先を大企業のCEOと役員会に向けて、「コーポレートガバナンスがうまく機能していないから、巨額の報酬をCEOは受け取っている」と批判している。だが現実には、この10年以上にわたってアメリカ上場企業CEOの報酬は上昇するどころか低下しているし、彼らの報酬は自社の株価と連動して決定されている。当然、実績が悪いと報酬額の引き下げ、あるいは解任というペナルティが課される。CEOの報酬が経済格差を拡大させた大きな要因だったわけでも、企業統治が機能していないわけでもない。この現実を認識しない限り、(CEO報酬をめぐって)企業を規制することによって富裕層と貧困層の格差を小さくできると考える政策立案者たちは、結局は失望し、予期せぬダメージを抱え込むことになる。そうしたやり方は、アメリカ経済の重要なエンジンである優良上場企業から、有能な人材を確保する手段を奪い取ることになるからだ。

米エネルギー革命のポートフォリオバランス

2013年7月号

マイケル・レビ
米外交問題評議会シニア・フェロー

アメリカで起きているのは天然ガス開発ブームだけではない。原油生産は史上最大規模の年間生産量の伸びを示し、風力、太陽光、地熱など、先端技術を用いた再生可能エネルギーによる電力生産も2倍に増え、生産コストも低下している。しかも車やトラックの燃費の向上によって、石油需要は低下しつつある。最大の問題は、そこには環境保護派と補助金を通じたエネルギー経済への政府の介入を嫌う人々の間に厄介な対立が存在することだ。重要なのは、特定のエネルギー資源を選ぶのではなく、こうした「新展開のすべてをうまく生かしていくことで、エネルギーにとって最善の未来を切り開けること」を双方が認識することだ。ワシントンの指導者たちは、クリーンエネルギーへの移行を進めつつも、伝統的なエネルギー資源にも依存する、あらゆるタイプのエネルギーの機会を慎重に生かしていく一方で、地球温暖化を加速させ、アメリカの石油依存を持続させるような危険なエネルギー消費にはペナルティを課す必要がある。このバランスこそが、アメリカにおけるエネルギーの未来を左右することになる。

大統領との信頼関係を築けるかどうかを別にしても、スーザン・ライスは大統領補佐官として基本的な選択に直面する。国家安全保障政策のプロセスを監視・管理していく上で、国家安全保障会議(NSC)の役割を重視すべきか。あるいは、(キッシンジャーやブレジンスキーのような)過去のパワフルな大統領補佐官たちのように、有力な外交アドバイザーとしての役割を重視し、大統領と近い関係にあることを利用して、政策を自分が好ましいと考える方向にもっていくべきか。だが、明確なビジョンをもつオバマ大統領の補佐官として成功するには、(戦略構想型の)ブレジンスキー流ではなく、(調整型の)ドニロン流に徹し、自分の政策志向は抑え、大統領との信頼関係、他の国家安全保障プレイヤーとの信頼関係を形作ることに先ず焦点を合わせるべきだ。大統領補佐官としての成功は、政府内での関係を管理していく能力、つまり、大統領、そして他の国家安全保障プレイヤーとの信頼関係をいかに築くかに左右される。

北極圏の未来
――北極圏サークルの立ち上げを

2013年6月号

スピーカー オラフル・ラグナル・グリムソン  アイスランド大統領、 プレサイダー スコット・G・ボルガーソン  前外交問題評議会シニア・フェロー

アイスランドの氷河はヨーロッパ最大の規模をもっているが、この氷河の後退は地球温暖化がたんなる理論ではなく、現実に起きていること、それが大きな変化をもたらしていることを物語っている。海面の上昇によって、世界の都市と経済はいずれ大きなダメージを受けると思われる。中国の研究者たちは、・・・グリーンランドや南極の氷床の溶解による海面上昇によって、上海を始めとする多くの都市が水没するというシナリオを想定している。・・・われわれは北極評議会を越えたより大きなプレイヤーを内包するフォーラム、北極圏サークルも立ち上げようと試みている。これは、北極圏諸国だけでなく、アジアやヨーロッパ諸国の科学者、活動家、企業、政治指導者たちが参加するフォーラムだ。

CFR Interview
シリア和平への困難な道筋
――米ロの役割とイラン、ヒズボラの存在

2013年6月号

フレデリック・ホフ
大西洋評議会シニアフェロー

アメリカはシリアの反体制派を、ロシアはアサド政権を説得して、紛争の終結に向けた交渉テーブルに着かせようとしている。だが、交渉の目的が、「平和的でうまく管理された完全な体制移行を実現すること」だとすれば、国際会議が成功する見込みはほとんどない。・・・現状では、コミュニティ、都市、町ごとにさまざまな武装集団が存在し、これらのすべてが自由シリア軍を自称している。ワシントンは反体制派、自由シリア軍を一つにまとめようと試み、シリア最高軍事評議会に指揮系統を集中させ、支援とコンタクトの一元的な窓口にしたいと考えている。・・・一方、アサド政権を交渉テーブルにつくように説得するというロシアの任務の難易度は非常に高い。しかも、この数週間という単位でみると、アサド政権の部隊は、反体制派から一部の地域を奪回している。これはイランとヒズボラの戦士が戦術を考案し、攻撃を実施した上で、攻略した地域をシリア軍に明け渡したからだと報道されている。・・・・

なぜアメリカの教育は失敗したか
―― 諸外国の成功例に学ぶ

2013年6月号

ジャル・メータ
ハーバード大学教育大学院アシスタントプロフェッサー

アメリカの小・中・高校生の3分の2以上は読解力や情報の暗記といった基本的スキルは身につけているが、情報の応用や分析をうまくこなせるのは、その3分の1にすぎない。世界的に見ても、高度な思考力という指標では、アメリカの生徒は中レベルの評価に甘んじている。問題は、(生徒の学力について)教師と学校の説明責任を政府が問うことで、子供の学力を高めようとしていることだ。これに対して、実際に子供の学力が高い諸国は、現場に投資することで、教育体制の「品質管理」を実現している。こうした諸国では生徒の学力が高まると、政府の教育投資への世論の支持が高まり、教師という仕事の魅力も高まるという好循環が存在する。工場労働が全盛期の時代に作られたアメリカの学校制度は、21世紀の経済が要求する複雑な学習と批判的思考を生徒たちに身につけさせる内容と体制になっていない。ゼロから新しいシステムを構築し、教師の仕事を高度な専門職として位置づけて、教職を再確立する必要がある。

米・パキスタン同盟の創造的破壊を
―― 同床異夢同盟の歴史と破綻

2013年5月号

フセイン・ハッカニ / 前駐米パキスタン大使

アメリカとパキスタンの関係はすでに修復不能な状態にある。パキスタン人の80%がアメリカを嫌っており、74%が敵だと考えている。米政府はパキスタンへの援助打ち切りを示唆し、一方、パキスタン軍は米軍のドローンによる領空侵犯から主権を守ると反発している。だが、考えてみれば、アメリカとパキスタンの関係が良好だったことはこれまでも一度もない。アメリカは冷戦期にはソビエトと中国に対する拠点として、9・11以降はタリバーンとアルカイダを叩くために、パキスタンとの同盟関係を望み、一方のパキスタンはインドに対するライバル意識から、ワシントンの軍事援助を確保しようと、アメリカとの連帯と同盟関係に応じてきた。結局のところ、共にその価値を信じていない同盟関係に双方がしがみついているにすぎない。いまや「同盟ではない新しい関係」の構築を模索すべきタイミングだろう。関係を前進させる最善の機会が、その関係が終わったことを認めることで始まる場合もあるのだから。

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