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北朝鮮に関する論文

CFRインタビュー
核実験は政治的デモンストレーションだ

2006年11月号

ゲリー・サモア 米外交問題評議会副会長

北朝鮮が(交渉から離脱してミサイル実験・核実験を強行するという)より攻撃的な路線をとることを決めたのは、アメリカが2005年秋に発動したマカオの銀行の北朝鮮関連口座に関する金融制裁措置が背景にある。「核実験を行い、自分たちが核武装国家であることをはっきり知らしめれば、金融制裁を科しているアメリカを追い込めると考えたのだろう」。北朝鮮が核実験に踏み切った動機をこう分析するサモアは、今回の安保理の経済制裁決議を評価しつつも、決議の内容は「北朝鮮が生き延びていくために必要な外国からの援助や取引に直接的な影響を与えるようなものではなく、むしろ、北朝鮮は、中国と韓国が、体制の存続を脅かすような制裁から守ってくれることを依然として期待している」とコメントした。

CFRインタビュー
いまこそ平壌を外交路線に引き戻せ

2006年11月号

アラン・D・ロンバーグ ヘンリー・スチムソン・センター シニアアソシエート

「交渉路線に門戸を開いている」と表明しつつも、交渉を続けてもどうにもならないとブッシュ政権は考えており、当面、北朝鮮を締め上げるしかないとみている。北朝鮮も交渉に戻ることに利益があるとは考えておらず、核実験に踏み切ったのはこうした情勢判断をしたからかもしれない。また、核問題よりも、北朝鮮情勢の流動化を回避することを戦略的観点から重視している中国は、韓国同様にアメリカの強硬路線と歩調を合わせるとは思わない。こうした環境にある以上、2005年9月19日の原則合意を先に進めるために、アメリカが北朝鮮を交渉の場に引き戻す努力をするのかどうかで今後は左右されるとロンバーグはみる。2005年の合意は関係勢力のすべてが重視する適切な方向性を示しており、そのなかには、北朝鮮の非核化も含まれている、と。

ブッシュ政権の対北朝鮮強硬策の全貌
――「強硬なエンゲージメント政策」の目的は何か

2002年5月号

ビクター・D・チャ ジョージタウン大学外交学部準教授

「対話と交流を重ね、変化が起こるのを辛抱強く待つ」という、かつての対北朝鮮エンゲージメント政策はすでに放棄されている。脅威を醸成し、それをカードに利益を引き出すという平壌のやり方をブッシュ政権が今後容認することはあり得ない。強硬なエンゲージメント政策の本質は、関与策を通じて、平壌の敵意に満ちた意図を暴き、それが白日の下にさらされた場合には強硬策をとり、半島の統一を前提に、東アジアの戦略環境を整備していくことにある。

朝鮮半島の平和的進化への道筋──米軍の全面撤退を検討せよ

2002年1月号

セリグ・ハリソン センチュリー財団研究員

未来がいかなるものであっても、朝鮮半島は米中間そして日中間の緊張の焦点であり続ける。北朝鮮の脅威がなくなった後も半島での軍事プレゼンスをアメリカが維持すれば、北京政府が、それをアメリカによる中国封じ込めだと考えてもおかしくはないし、中国と日本の旧来の敵意を再燃させることにもなる。まず、経済交流と三十八度線での軍事的緊張緩和に必要とされる法律的枠組み、交渉枠組みの条件を整えるべきである。次に、南北間の緊張が低下し、南北国家連合形成の流れが勢いを持ち始めたら、アメリカは朝鮮半島の非核化構想とともに米戦力の朝鮮半島からの撤退を申し入れ、アメリカと中国はそれぞれソウルと平壌との相互安全保障同盟を同時に解消すべきだろう。

北朝鮮の意図を確認せよ
――朝鮮半島政策の次なる課題

2002年1月号

モートン・I・アブラモウィッツ センチュリー財団上席研究員   ロバート・A・マニング  米外交問題評議会シニア・フェロー

二〇〇〇年六月の歴史的な南北首脳会談から一年、当時の熱い期待はまだ少しは残っているが、朝鮮半島情勢は厄介なほどに先の読めない状況にある。こうしたなか、ブッシュ政権は対朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)外交を新たに開始した。南北首脳会談は、南北朝鮮の関係に新たな一章を開くとともに、大量破壊兵器問題の背景にある、南北間の「緊張」という朝鮮半島の根本問題の解決への糸口を切り開き、真の和解の可能性も浮上させた。しかし、五十年に及ぶ不信と対決の歴史を少しずつ解きほぐしていくという困難な作業を前に、首脳会談の際に高まった期待と約束もいまや色あせてきている。ブッシュ政権が受け継いだのは、長く続いてきた軍事的膠着状態だけではなかった。新政権は、緊張の大幅な緩和、安定した抑止状況、緊密な米韓同盟、そして十三年の歴史を持つ北朝鮮との交流という側面も受け継いだ。南北首脳会談は、北朝鮮の対外姿勢や戦術を大きく変化させることをわれわれに予想させるものだった。たしかに、かつては謎に包まれ、嘲笑の的とされることも多かった金正日だが、いまや数多くの外国の指導者たちと丁々発止やり合える、まともな政治家として表舞台に登場している。北朝鮮はイギリス、イタリア、ドイツなどアメリカの同盟国を含む二十カ国を超えるアジア・ヨーロッパ諸国との関係正常化のため、特徴には欠けるとはいえ、見事な外交攻勢に打って出た。しかし劇的な戦術上の変化を別にすれば、平壌の全方位外交が北朝鮮の政権内での重大な方向転換を意味するのか、経済利益や安全保障と引き換えに軍備削減交渉に応じる気があるのか、予断を許さない状態にある。今回のタスクフォース・リポートは、朝鮮半島情勢がこの三年間でどのように推移したかを軸に、米韓の政策がそれぞれどのような経緯をたどってきたか、現状に対処するための最適の政策は何なのか、を中心に分析している。

米外交問題評議会リポート
朝鮮半島政策に関する提言

2001年7月号

モートン・I・アブラモウィッツ 米外交問題評議会・朝鮮半島問題タスクフォース共同議長 ジェームス・T・レイニー 同タスクフォース共同議長  ロバート・A・マニング  同タスクフォース・ディレクター

以下は二〇〇一年六月十一日に公開された朝鮮半島問題に関する米外問題評議会タスクフォース・リポートの要約。同タスクフォースは、今年三月に朝鮮半島政策に関する提言をブッシュ大統領への公開書簡としてすでに発表している(「論座」二〇〇一年六月号)。リポート全文も近く公開される予定。

米外交問題評議会ミーティング
オルブライトVS.キッシンジャー
――米中・北朝鮮、ミサイル防衛、人道的介入の将来

2001年6月号

ジョージ・シュルツ ウォーレン・クリストファー  マドレーン・オルブライト ヘンリー・A・キッシンジャー

私が懸念しているのは、偵察機接触事故が、権力移行期に突入した中国において強硬派の立場を有利にしはしないか、一方でわれわれが中国を新たな敵対勢力と決めつける動きにつながりはしないかということだ。(オルブライト)

われわれがなすべきこと、われわれにできること、われわれが望むこと、そしてわれわれにはできないこと、これらを区別して理解しなければならないし、国益概念にはこれらのすべてがかかわってくる。(キッシンジャー)

北東アジアの新局面

2001年2月号

ケント・E・カルダー 駐日アメリカ大使特別補佐官

金大中は南北首脳会談を通じて北朝鮮を孤立から救い出し、日本を安心させ、韓ロ双方にとって互恵的な経済取り決めによってロシアの利益認識も刺激してみせたが、北東アジアでの新たな力学はより大きくて予期せぬ変化を表へと引きずり出すかもしれない。一九九〇年代半ばに二十基だった台湾海峡地域に配備された東風二号などの短距離ミサイルの数は、九九年までに二百に達し、いまや一週間に一基ずつ増え続けている。現在形成されつつある流動性に満ちた北東アジア秩序には、一連の二国間安保関係だけでなく、トラック二プロセスを含む、より幅広い包括的安全保障メカニズムが必要である。

韓国は平和共存をめざす

1999年5月号

洪淳瑛(ホン・スニョン) 大韓民国外交通商相

ゆっくりとしたペースではあっても、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は南の同胞たちや国際社会に対して自らを開放せざるを得ない状況に追い込まれつつある。そして、韓国は緊張緩和、平和、そして再統合を望んでいる。金大中大統領の経済領域を中心とするエンゲージメント(穏やかな関与=「太陽」)政策は、北朝鮮での好ましい変化と抜本的な変革を促すことを目的としている。とはいえ、「国家の能力がますます金融・経済への依存度を強め、そして経済的な強さのためには開放性が必要であることに、北朝鮮が気づき、韓国と同じ価値観を共有するようになるには,まだまだ時間がかかるだろう」。当然、完全な和解には時間がかかる。二つの分断された国家が再統合に向けて動き出せるのは、いかに統一を実現し、統一後どのようにしてともに暮らすかのコンセンサスが生まれてからである。

それでも北朝鮮は生き残る

1997年8月号

マーカス・ノーランド 国際経済研究所上席研究員

現在の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の食糧危機を過大視すべきではない。「飢餓状態は地域的なもの」だし、少しばかりの援助があれば、あるいは援助なしでも、北朝鮮はなんとかやっていけるだろう。広範な飢餓状態がおきるとすれば、それは、「国内政治エリートの意図的な政治決断の結果」であろう。むしろ注目すべきは、いま北朝鮮にどのような選択肢があり、関係諸国がそれに対してどんな考えをもっているかだ。少なくとも、関係諸国が拙速な統一を望んでいないのは明らかで、「中国、日本、ロシア、そしておそらくは韓国でさえも、資本主義体制をとり、おそらくは核武装した統一国家が半島に出現するよりも、なりを潜めた北朝鮮が何とか生き延びていくことを望んでいる」。北の国内状況が改革を求めるか、あるいは混沌に陥っていくまでは、北朝鮮は当面の間生きながらえると考えたほうが無難であり、今後の対朝政策は、東アジアのパワー・バランスを念頭においた、中・長期的なものでなければならない。

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