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日本に関する論文

中国が支配するアジアを受け入れるのか
―― 中国の覇権と日本の安全保障政策

2018年3月号

ジェニファー・リンド ダートマス大学准教授(政治学)

現在のトレンドが続けば、そう遠くない将来に、中国はアメリカに代わって、東アジアの経済・軍事・政治を支配する覇権国になるだろう。そして、地域覇権国は近隣諸国の内政にかなり干渉することを歴史は教えている。中国に対抗できるポテンシャルをもつ唯一の国・日本は、特に重要な選択に直面している。日本人は軍備増強には懐疑的で、むしろ、経済の停滞と高齢社会のコストを懸念しており、引き続き、銃よりもパンを優先する決断を下すかもしれない。だが実際にそうした選択をする前に、中国が支配するアジアにおける自分たちの生活がどのようなものになるかについて日本人はよく考えるべきだろう。北京は尖閣諸島の支配権を握り、日米関係を弱体化させ、中国の利益を促進するために、さらに軍事的・経済的強制力をとり、日本の政治に干渉してくるかもしれない。

対北朝鮮経済制裁を検証する
―― 制裁に意味はあるのか

2017年12月号

エレノア・アルバート www.CFR.org ライター

北朝鮮に対する経済制裁が強化されているが、望むような結果を手にできるかどうか、疑問視されているのも事実だ。実際、2016年に北朝鮮経済は4%の成長をみせ、過去17年間でもっとも急速な成長を遂げている。制裁は、平壌を非核化交渉のテーブルに引き戻すことを目的としているが、交渉では非核化は実現しないと考える専門家は多い。北朝鮮は、いかなるコストを支払ってでも核の兵器庫を維持していくつもりだ。こうなると、経済制裁に意味はあるのかという考えも浮上する。一方で、北朝鮮を核武装国として実質的に認めるのも、軍事攻撃するのも完全な選択肢にはなり得ない。結局、北朝鮮を平和的に非核化する上での残された唯一の希望は、武装解除し改革をしない限り、滅亡が待ち受けていることを平壌に納得させることだが、問題はいかにしてそれを実現するかにある。

トランプが日本に突きつけた課題
―― トランプ制御策を超えて

2017年10月号

彦谷貴子 コロンビア大学准教授(日本政治・外交)

これまで日本政府は「ドナルド・トランプを制御すること」に努め、市民もそうした政府のやり方を現実主義的な視点から支持してきた。だが、そのアプローチにも限界がみえ始めている。トランプが日本に突きつけているもっとも根本的な課題は、日本のこれまでの成長に大きな役割を果たしてきた「リベラルな民主的秩序がどうなっていくか」という側面にある。当然、日本は自由貿易体制を含む、リベラルな民主的秩序を維持していくための試みを強化していく必要がある。今後の日本は、アメリカが主導するリベラルな秩序の受益者としてではなく、むしろ、秩序を守るために全力を尽くし、アメリカをこの秩序につなぎとめる必要がある。

北朝鮮のもう一つの脅威
―― 日韓の原発施設に対する攻撃に備えよ

2017年10月号

ベネット・ランバーグ 元国務省分析官

北朝鮮が日韓の原子力施設を攻撃すれば、何が起きるか。両国の政府はそれに備え、態勢を整えておかなければならない。これは想定外のシナリオではない。中東では建設中の原子炉をターゲットとする攻撃が起きているし、ボスニア紛争でも、インド・パキスタンの対立状況のなかでも、原子炉攻撃のリスクは意識されていた。原子力施設に対する北朝鮮のミサイル攻撃の帰結よりも、数十万人が犠牲になるかもしれない(人口密集地帯への)通常ミサイル攻撃による脅威の方が深刻だと考える者もいるだろう。しかし、原子炉が攻撃され、炉心や使用済み核燃料のプールにダメージが及べば、原子炉は、殺戮兵器ではないにしても、実質的にテロ攻撃や大量破壊兵器と同じ作用をする。日韓はアメリカとともに防衛計画をまとめていく上で、原子力発電施設の脆弱性を無視してはならない。・・・

イスラエルと日本
――関係強化に向けた期待と不安

2017年9月号

マシュー・ブルーマ 法政大学講師(国際政治)
エイタン・オレン 国際政治研究者

これまでとかく疎遠だった日本とイスラエルも、いまや、グローバルエネルギー市場と日本国内の政治・経済情勢の変化、そして世界の地政学的パワーバランスの構造的シフトを前に、緊密な協力関係を模索している。安全保障とテクノロジーの最前線にあるイスラエルとの戦略的関係を強化していく路線は、国際社会におけるより独立した影響力あるパワーとしてのプレゼンス確立を目指す日本の新戦略によって導かれている。中国が中東でのプレゼンスを強化していることへの焦りも関係しているかもしれない。もちろん、課題は残されている。日本企業は依然として対イスラエル投資への不安を払拭できずにいるし、政府も、イスラエルとの関係強化によって中東の複雑な宗派間紛争に巻き込まれる恐れがあることを懸念している。・・・

北朝鮮に対する強硬策を
―― 外交やエンゲージメントでは問題を解決できない

2017年6月号

ジョシュア・スタントン 弁護士
サン=ヨン・リー タフツ大学フレッチャースクール 教授
ブルース・クリングナー ヘリテージ財団 シニアリサーチフェロー

金正恩は「父親と祖父が数十億の資金と数多くの人命をつぎ込んできた核の兵器庫を完成させることで、自分の政治的正統性が確立される」と考えている。仮に核の解体に応じるとすれば、体制の存続そのものを脅かすような極端な圧力のもとで、それに応じざるを得ないと考えた場合だけだろう。外交やエンゲージメントがことごとく失敗してきたのは、平壌が核の兵器庫を拡大していくことを決意しているからに他ならない。あと少しで核戦力をうまく完成できるタイミングにあるだけに、平壌が核・ミサイル開発プログラムを断念するはずはなく、交渉を再開しても何も得られない。北朝鮮の非核化を平和的に実現する上で残された唯一の道筋は「核を解体し、改革を実施しない限り、滅亡が待っている」と平壌に認識させることだ。ワシントンは「平壌が核兵器以上に重視していること」を脅かす必要がある。それは北朝鮮体制の存続に他ならない・・・

トランプ時代のアジア
―― アジアを犠牲にした米中合意はあり得ない

2017年5月号

ビラハリ・コーシカン シンガポール外務省無任所大使

北京の高官の一部は、中国を頂点とする地域的ヒエラルヒーを再建して伝統的な中華秩序を再現することを望んでいるようだ。そのためには、アジアからワシントンの影響力を取り除き、その空白を中国自身が埋めなくてはならない。だがこの場合、アメリカとの同盟関係が頼りにならないと判断した日本が核武装する可能性は十分にある。日本が核兵器を獲得すれば、韓国、そして台湾もそれに続く強いインセンティブをもつようになる。中国はそのような事態は何としても避けたいはずだ。こう考えると、アジア秩序が中華秩序に置き換えられていくことも、アジアを互いの影響圏に二分するような大掛かりな米中合意が結ばれる可能性も低い。最終的に、アジアはかつて変化に直面したのと同じように「適応」を通じてトランプ政権に対応していくことになるだろう。

トランプから国際秩序を守るには
―― リベラルな国際主義と日独の役割

2017年5月号

G・ジョン・アイケンベリー プリンストン大学教授(国際関係論)

古代より近代まで、大国が作り上げた秩序が生まれては消えていった。秩序は外部勢力に粉砕されることでその役目を終えるものだ。自死を選ぶことはない。だが、ドナルド・トランプのあらゆる直感は、戦後の国際システムを支えてきた理念と相反するようだ。国内でもトランプはメディアを攻撃し、憲法と法の支配さえほとんど気に懸けていない。欧米の大衆も、リベラルな国際秩序のことを、豊かでパワフルな特権層のグローバルな活動の場と次第にみなすようになった。すでに権力ポストにある以上、トランプがそのアジェンダに取り組んでいくにつれて、リベラルな民主主義はさらに衰退していく。リベラルな国際秩序を存続させるには、この秩序をいまも支持する世界の指導者と有権者たちが、その試みを強化する必要があり、その多くは、日本の安倍晋三とドイツのアンゲラ・メルケルという、リベラルな戦後秩序を支持する2人の指導者の肩にかかっている。・・・

日本のプラグマティズム外交の代償
―― 安倍外交の成果を問う

2017年5月号

トム・リ ポモナカレッジ助教授

フィリピンのドゥテルテ大統領、ロシアのプーチン大統領、アメリカのトランプ大統領のようなとかく論争のある指導者たちと進んで接触する安倍首相は、長期的な経済・安全保障上のアジェンダのためなら、自らの信条を傍らに置き、短期的に政治リスクの高い動きをとることも辞さないつもりのようだ。確かに、世界的にネオリベラルな規範が衰退するなか、反リベラル主義を掲げる指導者たちと関わりを持つことの政治リスクが少なくなっているのは事実だろう。しかし、こうした権威主義的指導者と付き合うことで、果たして結果を出せただろうか。さらに、民主国家としての日本の名声を危機にさらしてはいないだろうか。権威主義的な指導者たちと付き合うことに派生するリスクからみれば、安倍首相にとっては世界の民主主義のリーダーという日本の名声を守ることがよりプラグマティックな路線ではないだろうか。そうしない限り、いずれ彼は歴史の間違った側にいる自分を見出すことになるだろう。・・・

トランプと日本
―― 潜在的紛争の火種としての認識ギャップ

2017年4月号

リチャード・カッツ オリエンタル・エコノミスト・リポート エディター

2月の日米首脳会談は成功だったとみなされている。日本は、安全保障面の要望についてはほぼ満額回答を得たし、トランプは日本防衛へのコミットメントを再確認した。為替操作や安全保障のタダ乗りといった、かねてトランプが主張してきた対日批判に安倍首相がさらされることもなかった。共同声明でも為替問題への言及はなく、共同記者会見でもトランプは、為替を含むいかなる貿易問題への注文もつけなかった。ただし、共同声明の中には「二国間の枠組み」という曖昧な表現があり、この点で認識にずれがあれば、将来的に対立の火種となりかねない。しかも、トランプにとって厄介なのは、公約どおり貿易赤字を解消して、日本などの外国に奪われたと主張してきた雇用を「取り戻すこと」など、とうてい不可能なことだ。トランプ支持基盤の多くが反日感情を抱いていることも、今後の日米関係における不安材料だろう。・・・

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