
1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。
2008年3月号
2008年3月号
次期台湾総統に選ばれた馬英九は、かなり早い段階で、中国との経済合意を結びたいと考えているし、すでに運行されている中台間のチャーター便の数を増やし、定期便も就航させたいと考えている。そして時間をかけて、彼が「生活様式」と呼ぶ和平協定に向けた了解をとりまとめ、台湾の国際社会への参加に向けた道を開きたいと考えている。
馬英九の対中路線をこう予測するアジア問題の専門家、アラン・ロンバーグは、「一つの中国」の解釈をめぐって馬と北京の間には意見の違いがあるが、馬も北京も、それはそれで現状として受け止め、状況を先へと進めようとするだろうとみる。「中国はこれまでの台湾との対決的ムードを早く変えたいと望んでおり、「一つの中国」という概念を箱に押し込んで、台湾民衆の人心を勝ち取れるような関係を築き、経済開発に専念したいと考えている」。
「台湾の中華民国政府は、1952年に日本に2国間会議を呼びかけ、4月28日に日華平和条約を締結した。この条約にも日本は占領していた領土への権利、権限、請求権を放棄するという条項が盛り込まれたが、やはり領土が誰のものになるかについての言及はなかった。ただ、この条約が当時、中華民国の外交部長(外相)だった叶公超が代弁する中華民国政府と日本との間で調印されたことは明らかである。日華平和条約が日本と台湾の間で調印されたことはきわめて明白であり、国際法の原則に基づき台湾は中華民国の領土に復帰したと解釈されるべきだ」
(Classic Selection とは、現在の情勢を理解するうえで有益と思われる過去の掲載論文の再録です。本文の内容、及び著者の肩書きは掲載当時のものです)
2008年2月号
2008年2月号
中国の民主化は一進一退を繰り返しながらも、先に進んでいる。必要なのは、一握りの支配層の権威と判断に依存するシステムから、広く受け入れられている拘束力のあるルールによって政府を運営するシステムへの移行を完遂させることだ。
地方での選挙、司法制度の改革、監督体制の強化をめぐって中国が現在進めている民主化の実験は、すべてルールを基盤とする制度への移行というトレンドのなかで行われているし、中国社会も開放化と多元性を模索して、しだいに市民社会の形成へと向かいつつある。大きな鍵を握るのが、胡錦涛の後継者がどのようにして選ばれるかだ。共産党メンバーの一部は、胡錦涛が引退する2012年までに、彼の後継を担う党総書記は、党中央委員会のメンバー全員の投票によって選ばれるようになるかもしれないと考えている。
孫文が1世紀前にそう望んだように、現世代の指導層も、民主主義こそ、中国人が長年にわたって模索し、命をかけて戦ってきた繁栄、独立、自由を実現するための最善の道であると考えているかどうか、今後の後継者選びがそれを測る大きな目安となる。
2008年1月号
2008年1月号
麻薬・武器の密輸、HIVの拡散など、ミャンマーの軍事政権は国内の人権問題や抑圧だけでなく、国境地帯を不安定化させて近隣諸国も脅かしている。これまで、アメリカはミャンマーとの外交関係を制限し、ヨーロッパも政治改革の断行を強く求めてきたが、アジア諸国の多くは、軍事政権との貿易、援助、外交関係を拡大してきた。幸い、こうした国際社会の矛盾したアプローチも変化しつつある。東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本はすでにミャンマーへの建設的関与路線を見直しつつある。内政不干渉の原則を固持し、資源調達がらみの思惑からミャンマーを支援してきた中国とインドにも再考を促す必要がある。各国がそれぞれ一定の譲歩を示し、政策を調整することによって、共通の目標に向けて状況を進めていかなければならない。ミャンマー制裁を他の関与策とバランスよく組み合わせて包括的に実行しなければならない。ミャンマーがさらに孤立して自暴自棄に陥り、失われた世代が生まれるのを傍観するわけにはいかない。人道的な理由もさることながら、ミャンマーは東南アジアの安全保障と統合を阻む未解決の深刻な課題なのだから。
2008年1月号
台頭途上にある大国は、新たに手にしたパワーを基に、自国の国益に即したものへと国際的なルールと制度を書き換え、グローバルシステムにおける、より大きな権限を手にしようと模索し、一方、衰退途上にある国は、影響力の低下を懸念し、それが、自国の安全保障にとってどのような意味合いを持つかを心配し始める。この瞬間に、大きな危険が待ち受けている。だが、新興大国が秩序に挑戦するか、それとも、自らを秩序に織り込んでいこうとするか、その選択は、目の前にある国際秩序の性格で大きく左右される。重要なポイントは、相手がアメリカだけなら、中国が(覇権国としての)アメリカに取って代わる可能性も排除できないが、相手が欧米秩序であれば、中国がそれを凌駕し、取って代わる可能性は大きく低下するということだ。ワシントンがそうした環境づくりに向けてリーダーシップを発揮するつもりなら、現在の秩序を支えているルールと制度の強化に努め、この秩序をより参加しやすく、覆しにくいものにしなければならない。
2007年11月号