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中国に関する論文

アジアは多極化し、中国の覇権は実現しない

2010年12月号

キショール・マブバニ シンガポール国立大学行政大学院院長

アジアの国際環境は多極化していく。中国が台頭しているとはいえ、誰もがアメリカがアジアでの強固なプレゼンスを維持していくことを願っているし、インドもパワーをつけて台頭しているからだ。この環境では、中国は地政学的に非常に慎重な行動をとらざるを得ない。中国にとっての悪夢のシナリオは、あまりに高圧的な路線をとって反発を買い、アメリカ、日本、ロシア、インド、さらにはベトナム、オーストラリアを結束させてしまうことだ。当然、中国はこの悪夢のシナリオが現実と化すのを避けようとするだろうし、自国の行動をもっと慎重に考えるようになると思う。誰もが唯一の超大国として中国が台頭してくるのではないかと心配しているが、私はそうはならないと考えている。(K・マブバニ)

軍事力を例外とすれば、今後、アメリカの文化も経済も21世紀初頭のようなパワーを失い、世界的な優位を保つことはないだろう。そして、今後の国家間政治においてもっとも重要な要因は、アジアが世界舞台への復活を続けていることだ。だが、中国がアメリカをアジアから締め出せるはずはない。アメリカが古代ローマのように内側から朽ち果てていったり、中国を含む国家に取って代わられたりすることはあり得ない。アメリカにとって重要なのは、移民への開放性を維持し、国内の中・高等教育を改革し、債務問題への対策をとり、制度と価値の多くを共有するヨーロッパ、日本との連帯を強化していくことだ。21世紀のスマートパワーのストーリーは、パワーを最大化することでも、覇権を維持することでもない。それは、パワーが拡散し、その他が台頭する環境のなかで、いかに自国のパワーリソースを優れた戦略に結びつけるか、その方法を見いだすことだ。

中国が重視する 国内技術革新路線と保護主義
――メードインチャイナからイノベーティドインチャイナへ

2010年11月号

アダム・シーガル 米外交問題評議会対テロ・国家安全保障担当シニア・フェロー

中国政府は、アメリカと日本への技術依存は国家安全保障、経済安全保障上の脅威であると考え、「国の経済と安全保障の生命線に影響を与えるような主要な領域の中核技術」、つまり、次世代のインターネット、高度な工作機械、高解像度の地球監視システムなどを「外国から輸入しないように」と中国企業に求めている。中国の技術革新促進策の最終的な目的は、はっきりしている。それは、今後15年間で中国を技術革新型国家へと変貌させ、21世紀半ばまでに科学技術大国になることだ。問題はいかに、貿易を締め付けず、外国企業を差別せずに、国内の技術革新を刺激するかだ。現在のように、技術開発促進策の一環として保護主義路線、重商主義路線をとれば、中国はアメリカその他に諸国との間で大きな国際的火種を新たに抱え込むことになる。

ポスト鄧小平改革が促す中国の新対外戦略
―― 中国は新たな国際ルールの確立を目指す

2010年11月号

エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会アジア担当ディレクター

経済成長と政治的安定を重視するという点では、中国政府はこの30年にわたって驚くほど一貫した立場を貫いてきた。変化したのは、その目的を実現するために何が必要かという認識のほうだ。この観点から、今や中国は自国に有利なように、グローバルな規範を作り替えたいと考えている。鄧小平の改革路線を経た次なる改革に向けた国内の必要性を満たしてくには、外部環境を作り替えるための対外路線が不可欠だと判断している。責任ある利害共有者という概念はもう忘れたほうがよい。国際社会のゲームルールそのものを書き換えたいと望む中国は、国際機関でのより大きな影響力を確保することを模索し、軍事力を増強し、国内での技術革新を排他的に試みている。この目的からグローバルな広報戦略も開始している。世界各国は、ポスト鄧小平革命がどのようなものであるかを理解し、その世界的な衝撃を想定し、備える必要がある。

中国の真意はどこに
――人民元、南シナ海、領有権論争

2010年10月号

S・デュナウェイ CFR(国際経済担当)シニアフェロー
E・フェイゲンバーム CFR(東アジア・中央アジア・南アジア担当)シニアフェロー
E・エコノミー CFRアジア研究部長
J・クランジック CFR(東南アジア担当)フェロー
A・シーガル (国家安全保障・対テロ担当)シニアフェロー

人民元の切り上げを一時的に容認しつつも、中国は、それがまるでルールであるかのように、あるいは、アメリカの決意を試すかのように、7月と8月には人民元価格を再び固定(ドルにペグ)させた。今回についても、中国が為替政策を永続的に変化させるかどうかは今後をみなければ分からない(S・デュナウェイ)

領有権問題に限らず、中国外交は他のいかなるものよりも主権を優先させる。だが国際社会の責任ある利害共有者であれば、主権とそうした主権の主張が関わってくる国際公共財を明確に区別することはできないはずだ。(E・フェイゲンバーム)

二国間関係の上昇局面と下降局面の急激な変化サイクルを永続的に繰り返す。これが新しい関係の形なのかもしれない。少なくとも、アメリカも中国も関係が制御不能に陥っていくことは望んでいない。米中が合意できるのはこれだけかもしれないが、当面は、これで満足するしかないだろう(E・エコノミー)

中国は領有権論争のある南シナ海(のパラセル諸島、スプラトリー諸島)をめぐって東南アジア諸国と対立したのに続いて、今度は東シナ海をめぐって日本とも対立した。この数ヶ月で中国は10年をかけて育んできた近隣諸国における中国への好感情を一気に破壊するような行動をとっている。一体中国は何を考えているのか。(J・クランジック)

現在の流れは2012年の中国に新指導層が誕生することと密接に関連している。将来の指導者たちは、他の世界に対して中国が毅然と接していくことを示すことで、自分たちの立場を示しておきたいと考えている。(A・シーガル)

より現実をうまく反映できるように世界秩序を再編し、グローバルな統治構造の中枢に新興大国を迎え入れる必要がある。こうみなす点では世界的なコンセンサスが形作られつつある。経済的には必然の流れかもしれない。だが、それは世界の人権と民主主義にとって本当にいいことだろうか。金融や貿易領域では、新興大国がグローバルな交渉に参加するのは当然だろう。しかし今のところ、人権や民主主義をめぐる新興国の政治的価値は、国際社会の主要なプレーヤーおよびそのパートナーが信じてきた価値とはあまりにもかけ離れており、世界の統治評議会を構成する国際機関の中枢に新興大国を参加させるのは考えものだ。新興大国は世界で有意義な役割を果たすのに必要な条件、つまり、内外の市民社会の声に耳を傾け、民主的統治を受け入れるつもりがあるのか、もっと真剣に考えるべきだし、既存の大国の側も、そのような新興大国をあえて仲間に迎え入れることを本当に望むのか、もう一度考えるべきだろう。

平壌という北朝鮮民衆の悪夢

2010年9月号

マーカス・ノーランド ピーターソン国際経済研究所シニア・フェロー

北朝鮮の経済は今後も停滞を続け、人々は食糧不足に苦しみ、2004~2005年以降の反改革路線もおそらくは継続されるだろう。憂鬱な停滞が続くはずだ。平壌は、人々を奈落の底に突き落とすような政策をとりつつも、それでも権力を維持していくだろう。これは北朝鮮の悲劇だ。現在の北朝鮮の体制はとにかく秘密主義だし、民衆を悲惨な目に遭わせるという点では無限大の能力を持っている。・・・だが、北朝鮮に対する金融制裁はそれなりの効果を期待できる。各国の金融機関が自行のイメージが傷つくことを恐れて、北朝鮮との取引を自主的に制限し始めることは過去のケースからも明らかだし、中国政府も金融制裁については、中国の銀行がアメリカ市場へのアクセスを失うことを恐れて、積極的に協力するからだ。今後の鍵を握るのは、制裁とともに、大きな変化をもたらすポテンシャルを秘めている北朝鮮の非公式経済がどうなるかだ。もちろん、北朝鮮政府は、今後も、この国における経済活動の多くを直接的な管理下に置こうと試みるだろう。だが問題は、経済を運営する能力を政府が持っていないこと、人々が食卓に食事を並べるための食糧を提供できないことだ。

中国の北朝鮮路線は一枚岩ではない

2010年8月号

共同議長 チャールズ・プリチャード 朝鮮半島経済研究所会長
エヴァンズ・リヴィア コリア・ソサエティ前会長
スコット・スナイダー 米外交問題非常勤シニア・フェロー(朝鮮半島担当)

プレサイダー
デビッド・サンガー ニューヨーク・タイムズ ワシントン支局長

北朝鮮の学者、専門家、エンジニア、技術者に別の考え方、別の世界観があることを気づかせることほど、効率的で費用対効果の高いやり方はない。そのための投資をする価値はあるし、今回のリポートのハイライトの一つは、交流を通じて、北朝鮮の認識を内から変化させることを提言したことだ。(E・リヴィア)

タスクフォースは、制裁措置の継続実施を求めつつも、特にミサイル問題についての米朝二国間交渉も検討すべきだと提言している。実際、ミサイル技術を完全にマスターすれば、北朝鮮の地域的な脅威は本物になる。(S・スナイダー)

交渉、6者協議という側面では、われわれは大きな間違いを犯してきた。どうせ、北朝鮮は交渉をひっくり返すのだから、もう交渉するのは止めて、好きにさせればいいと判断してしまった。これは完全な間違いだった。(C・プリチャード)

21世紀は新興市場国の世紀に
― G20、世銀、IMFの未来

2010年7月号

スピーカー
スチュワート・M・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー国際機関およびグローバル統治プログラム責任者
司会
デビッド・E・サンガー  ニューヨーク・タイムズ ワシントン支局長
パネリスト
ホイットニー・デベボイス 元世界銀行 理事
アルビンド・サブラマニアン ピーター・ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー
アントニー・フォン・アットマール 新興市場マネジメントLLC会長兼チーフ・インベストメントオフィサー

最終的には、アメリカ、ヨーロッパ、日本のような、すでに確立されたパワー、中国、インド、ブラジルのような新興大国、さらには新興のミドルパワーの間でタフな取引と交渉が行われ、その結果、新しい秩序が形成されていくことになる(S・パトリック)

G20は新しいG7に至る通過点にすぎない。新しいG7は、アメリカ、EU、日本、BRICs諸国で構成されることになるだろう(アットマール)

論争 台湾は中国の軌道に入りつつあるのか?

2010年6月号

ヴァンス・チャン 駐米台北経済文化代表処・情報部ディレクター
ハンス・モウリゼン オランダ国際研究所 シニア・リサーチフェロー
ブルース・ジリー ポートランド 州立大学行政大学院准教授(政治学)

エネルギーの利用効率の改善ペースが石油資源の枯渇ペースを上回り続ければ、いずれ石油は低価格であっても市場で見向きもされない資源になる。利用効率の改善によって節約される資源は、いまや米国内のエネルギー供給の五分の二に匹敵する規模に達しており、これこそもっとも急速に拡大している新しい「資源」だ。石油価格を引き下げ、安定させることができるのは、唯一需要サイドでのエネルギー利用効率の改善促進だけだし、利用効率レベルをほんの少し引き上げるだけでそれは実現する。石油の供給を増やすのではなく、使用効率の改善に重点を置いた需要管理措置とクリーンな代替エネルギー促進策を政策の基盤に据えるべきだ。

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