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中国に関する論文

中国の政治腐敗と格差
―― 壮大なスケールの汚職

2024年11月号

ブランコ・ミラノヴィッチ ニューヨーク市立大学大学院センター シニアスカラー
リー・ヤン ライプニッツ欧州経済研究センター 研究員

大規模な反政治腐敗キャンペーンが中国で進められてきたのは、習近平の政治的思惑からだけではない。都市部における格差が極端なレベルに達していたからだ。所得が高い者は、(賄賂や横領で)平均して4倍から6倍、なかにはそれ以上に所得を増やしている。つまり、中国の実質的所得格差は、記録されている格差レベルよりもはるかに大きい。一方、反政治腐敗キャンペーンは、大金持ちや権力者を追及することをためらわない限り、独裁者がポピュリストとしての信頼を高めることにも貢献する。習近平だけでなく、ロシアのプーチンも、このやり方を取り入れている。

「現場主義外交」の試金石
―― 太平洋諸島と米中競争

2024年11月号

チャールズ・エデル 戦略国際問題研究所上級顧問
キャサリン・ペイク 戦略国際問題研究所シニアフェロー

「あなたたちのなかで、外交領域で働きたいと思う人は何人いるだろうか」。若者に行動を求めた1960年のケネディ大統領のこのフレーズは、平和部隊への参加を促し、アメリカの世界への関心を高めたと評価されている。現在も、ライバルと競い合うには、外交官たちが外国の指導者と会い、現地の文化や習慣を理解し、協調の機会を見極めなければならない。この課題がもっとも深刻に脅かされているのが太平洋諸島諸国においてだ。この地域への外交の優先順位を高め、支援を強化しなければ、フィリピンからハワイに至る太平洋地域全体でアメリカは中国に立場を譲り続けることになる。

カマラ・ハリスとドナルド・トランプ
―― 中国にとってどちらが好ましいか

2024年9月号

王緝思 北京大学国際戦略研究院 院長
胡然 北京大学国際戦略研究院 研究員
趙建偉 北京大学国際戦略研究院 研究員

中国の戦略家たちは、アメリカの対中政策が今後10年間で変わるという幻想は抱いていない。世論調査結果や中国に関する超党派のコンセンサスがワシントンに存在することから考えても、2024年11月に誰が米大統領に選出されようとも、その対中政策は戦略的競争と封じ込めに重点が置かれ、協力と交流は後回しにされるはずだ。トランプ、ハリス、どちらが大統領になっても、中国にとって厄介で不利益をもたらす相手になる。一方で、大規模な軍事衝突や経済的・社会的な交流の全面的断絶を求めてくることもないだろう。ただ、ワシントンにおける現在の思想のどの部分が最終的に支配的になるのかを、われわれは理解しようとしている。

中国経済危機の本質
―― 過剰生産能力の悪夢

2024年9月号

ゾンユアン・ゾー・リュー 外交問題評議会 シニアフェロー(中国研究)

中国経済の停滞を説明する最大の要因は、巨大な過剰生産能力が構造的に作り出されていることだ。北京の産業政策は長年にわたって、生産設備への過剰投資を促し、その過程で中国の都市(地方政府)や企業は膨大な債務を抱え込んできた。最近でもロボット、電気自動車用バッテリー、その他で過剰生産能力を抱え込み、ソーラーパネルにいたっては、年間に世界が設置して利用できるソーラーパネルの2倍規模の生産能力をもっている。国内市場や外国市場が持続的に吸収できるレベルをはるかに上回る規模の商品を生産しているために、中国は、外国との摩擦を抱え込んでいるだけでなく、価格低下、債務超過、工場閉鎖、雇用喪失という破滅のループに陥っていく危険がある。

新興大国と覇権国
―― 衝突は不可避なのか

2024年9月号

マンジャリ・チャタジー・ミラー 米外交問題評議会シニアフェロー

覇権国と新興大国は、衝突する運命にあるのか。現実には、台頭する新興国は、既存の規範の多くを守り、一部の側面を拒絶するときも他の新興大国と協力して慎重に行動する。そうすることで、現秩序のなかで自らの台頭を強化すると同時に、新しい秩序を構築する力をつけるまで、覇権国を弱体化させようとする。だが、覇権国が国際秩序をどのように管理するかで、対立が紛争に発展するかどうかが左右される可能性もある。覇権国にとって、新興大国の脅威に対処する最善の方法は、新興大国と対立したり、打ち負かそうとしたりすることではなく、国際秩序を利用して封じ込めることかもしれない。

米中対立と第一次世界大戦の教訓
―― 中国と20世紀初頭のドイツ

2024年9月号

オッド・アルネ・ウェスタッド イェール大学教授(歴史学)

第一次世界大戦前のドイツとイギリスのように、米中は下方スパイラルに巻き込まれているかにみえる。100年前と同様に、経済競争、地政学的懸念、深刻な相互不信が紛争リスクを高めている。かつての英独同様に、重要な問題をめぐって協力するきっかけがあっても、米中は、いさかいや些細ないら立ち、戦略的不信の高まりによって身動きできなくなっている。貿易戦争を封じ込め、より大規模な紛争の火種となるかもしれない(ウクライナや中東などでの)熱い戦争を終結させるか、少なくとも封じ込めることに努力しなければならない。熾烈な大国間競争のなかにあるだけに、第一次世界大戦への道がそうだったように、小さな紛争が壊滅的な事態を引き起こす危険がある。

東アジアと中国の核戦力
―― 核共有と軍備管理の間

2024年9月号

エイミー・J・ネルソン ブルッキングス研究所 フェロー
アンドリュー・ヨー 米カトリック大学 教授

中国の核戦力増強は、北朝鮮のそれと同様に、東アジアを変化させている。いまや韓国市民の多くが核保有を望んでいるし、日本の古くからの核アレルギーも緩んできている。アジアはいまや、秩序を不安定化させる軍拡競争に突入していく軌道にある。ワシントンは中国に対して、(軍備管理に関する)中身のある交渉に建設的に参加するか、あるいは、東アジアでアメリカが支援する核軍備の大規模な増強という事態に直面するか、という困難な状況にあることを理解させなければならない。中国の指導者たちが軍備管理交渉を拒否するようなら、ワシントンは(核保有国が同盟国と核兵器を共有する)核共有制度について、ソウルや東京と協議を開始することもできる。

貿易で紛争を防げるか
―― 貿易と平和の真実

2024年8月号

スティーブン・G・ブルックス ダートマス大学教授(政治学)

貿易の拡大とグローバリゼーションが戦争を抑制すると考えるのも、戦争を促すと考えるのも間違っている。世界経済と国際安全保障の関係は複雑だ。重要な要素も、そうでない要素もある。かつて米政府高官たちは、対中経済エンゲージメントはアメリカの安全保障にプラスの作用しかもたないと信じていたが、いまや、この政策は大失敗だったと考えられているようだ。しかし、政策立案者は、どちらの考え方も間違っていることを理解しなければならない。通商は平和の促進には役立たないし、有害でもない。その両方の作用をもつ。

力による平和の復活
―― 二期目のトランプ外交を描く

2024年8月号

ロバート・C・オブライエン 前米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

トランプがアジアの同盟諸国に防衛にもっと貢献するように求めるのは、相手を不安にすると考える評論家もいる。だが現実には、「同盟関係は双方向の関係であるべきだ」というトランプの率直な発言の多くを、アジア諸国は歓迎し、トランプのアプローチは安全保障を強化すると考えている。トランプは(19世紀初頭に米大統領を務めた)アンドリュー・ジャクソンと彼の外交アプローチを高く評価している。「そうせざるを得ないときは、焦点を合わせた力強い行動をとるが、過剰な行動は控える」。トランプ二期目には、このジャクソン流のリアリズムが復活するだろう。ワシントンの友好国はより安全で自立的に、敵国は再びアメリカパワーを恐れるようになるだろう。

アジアとトランプの脅威
―― 不安定化リスクにどう備えるか

2024年8月号

ビクター・チャ ジョージタウン大学教授(政治学)

オーストラリア、日本、韓国という緊密な同盟国を含む、インド太平洋におけるすべての米同盟国は、トランプ二期目が新たな問題を突きつけてくる事態にもっと危機感をもつべきだ。トランプは、バイデン政権とアジア諸国がまとめた防衛、経済・貿易構想の再交渉を求めるか、解体を試みるかもしれない。同盟国をこれまで以上に貿易上の敵対国とみなし、アメリカの軍事プレゼンスの削減を試みるだろう。独裁的指導者たちと親交を深め、アジアの核不拡散環境を揺るがし、朝鮮半島の核武装化を刺激する恐れさえある。

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