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2025.7.4 Fri
変化した世界と新しい問題
―― 戦争、規制・統計、テクノロジー
これまでの進歩を維持し、先に進むのを妨げない柔軟な政府制度が必要になる。政府が時代遅れの手法をとり続ければ、現在の問題には対処できない。規制と規制緩和のバランスを見直すことも、経済活動や経済価値の実態を十分反映できる指標を考案する必要もある。(ラウズ)
スターリンク、マイクロソフト、アマゾンなどの米テクノロジー企業が、国防に不可欠なデジタル・インフラを提供する戦争の新時代がすでに始まっている。ウクライナはその具体例だ。問題は、こうした巨大ハイテク企業が「国家安全保障よりも企業利益」に合致する方向へ国益を向かわせようと試みるかもしれないことだ。(カプラン、ブラウン)
量子コンピューティングは、ビットの代わりに、0と1の状態を同時に保持する量子ビットを使用することで、これまで解決できないと考えられていた計算を実行できる可能性がある。そうなれば、医療、化学産業、素材産業などでの画期的な進展が期待できる。(チョウ、マニュイカ、ネブン)
新しい問題と古いアプローチ
―― 政府の制度と役割をいかに見直すか
2025年7月号 セシリア・ラウズ ブルッキングス研究所 所長

危険と不透明性が高まっている時期に、市場で解決できない部分に介入し、人々を守り、変化を乗り切るのを助ける。これが、政府の役割だ。アメリカでは、所得格差、気候変動、AIによる社会再編など、先行き不透明感は高まっている。政府は、多くの人が「真の問題」と考えるものだけでなく、不確実な問題にも対処しようとしている。この過程で、指導者たちは、政府の機能を見直す必要に迫られる。これまでの進歩を維持し、先に進むのを妨げない柔軟な政府制度が必要になる。政府が時代遅れの手法をとり続ければ、現在の問題には対処できない。規制と規制緩和のバランスを見直すことも、経済活動や経済価値の実態を十分反映できる指標を考案する必要もある。
戦争とテクノロジー企業
―― ウクライナと台湾の違い
2025年3月号 マット・カプラン シールドキャピタル アナリスト マイケル・ブラウン シールドキャピタル パートナー

スターリンク、マイクロソフト、アマゾンなどの米テクノロジー企業が、国防に不可欠なデジタル・インフラを提供する戦争の新時代がすでに始まっている。ウクライナはその具体例だ。問題は、こうした巨大ハイテク企業が「国家安全保障よりも企業利益」に合致する方向へ国益を向かわせようと試みるかもしれないことだ。米テクノロジー企業は、台湾を防衛するために、重要な市場であり、顧客である中国を敵に回すだろうか。実際、ウクライナでうまく実現したことが、台湾で再現されるとは限らない。必要なのは、紛争が発生する前にこうした新しいデジタル能力をもつ企業と契約し、彼らを同盟勢力として扱うことだ。ワシントンが同盟国やパートナーを今後もうまく防衛できるかは、米ハイテク企業の力をいかにうまく引き出すかに左右される。
量子が導く未来
―― 次なる革命の恩恵とリスク
2025年3月号 カリナ・チョウ グーグル・クォンタムAI ディレクター兼最高執行責任者 ジェームズ・マニュイカ グーグル シニア・バイスプレジデント ハルトムート・ネブン グーグル・クォンタムAIヘッド

量子コンピューティングは、ビットの代わりに、0と1の状態を同時に保持する量子ビットを使用することで、これまで解決できないと考えられていた計算を実行できる可能性がある。そうなれば、医療、化学産業、素材産業などでの画期的な進展が期待できる。多くの国が量子情報科学技術の主導権争いへの関心を高めているのは、この理由からだ。だが、巨大なリスクも生み出す。暗号の解読、大規模なデータの盗難、経済的混乱、情報漏洩に加え、量子コンピュータが、化学兵器のシミュレーションを含む悪意目的に使用される危険もある。量子技術が開かれた社会で開発され、善意の目的に使用されるような明確な枠組みを設定することも重要になる。