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動き出したアメリカの対イスラム国戦略
――イスラム国対策の鍵を握る男 ジョン・アレン

2015年2月号掲載論文

「イスラム国」に対する有志連合の軍事作戦がにわかに具体化し始めた。かつて、米軍増派策を背景に「スンニ派の覚醒」をイラクで組織したジョン・アレン米大統領特使が具体的な戦略を発表し始めたからだ。

2月8日、アレン特使は、イラク軍がイスラム国に奪われた領土奪還に向けた地上戦を数週間以内に開始すると表明した。(1)

「スンニ派の覚醒」とは当時アンバール県の連合軍副司令官だったジョン・アレンが現地のスンニ派部族を説得して、米軍との連帯を組織したことだ。増強された米軍とともにスンニ派部族がイスラム国の前身とも言われる「イラクのアルカイダ」と戦うようになり、これでイラクにおけるテロとの戦いの流れと構図は大きく変化した。

だが皮肉にも、2014年にイスラム国がイラクのスンニ派地域を制圧したことで、まさに増派策と覚醒運動が成し遂げた成果は完全に覆されてしまった。オバマ大統領は2014年にアレンを特使に任命し、この地域で反イスラム国の連帯を再び組織するように要請した。(2)

一方で米軍は5000人のシリア人を訓練し、5月にはこの部隊がシリアで軍事活動を始めると言われている。アレンは「この部隊がターゲットにするのはあくまでイスラム国勢力で、シリア政府ではない」と語っている。

しかし、シリアのバッシャール・アサド大統領は「シリア軍部隊と協力しなければ、彼らの(シリア国内での)存在は非合法だ。外国政府の傀儡部隊に過ぎない・・・われわれはそうした勢力と戦う」と明言し、「いまさら、5000人を外から連れてきても、結局、その多くは部隊から離れてイスラム国、その他の集団に参加することになる。これが過去1年に起きたことだ。アメリカのやり方は幻想だ」と断言している。(3)

たしかに、有志連合の作戦で簡単に流れが変わるとは考えにくい。イラクでの戦闘は簡単には決着しない市街戦になるのは避けられない。シリア紛争も同様だ。

アサドの発言から考えても、シリア紛争がますます混沌とした状況に陥っていく可能性は十分にある。そう考える理由は他にもある。いまやイスラム国を主導しているのは、スンニ派であるゆえにマリキ前首相にポジションを奪われた経験豊かな元イラク軍の将校たちだ。

「彼らはかつて米軍がその訓練を助けたこともあって、米軍のテクニックとやり方を知っている。イスラム国は、イラク治安部隊が敗走した際に、アメリカが治安部隊に提供した装備、つまり、アメリカの戦車、大砲、ハンビー(高機動多用途装輪車両)、抗地防護車両を手に入れている」。しかも、外からの支援がなくても、十分にやっていける財的基盤をすでに整備している。(注4)


注1、 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150209-00000004-jij_afp-int
注2、 イスラム国の全貌 オードレー・カース・クローニン 
フォーリン・アフェアーズ・リポート3月号掲載
注3、 アサド大統領 シリア紛争を語る
http://www.foreignaffairsj.co.jp/essay/201503/Assad.htm
注4、 イスラム国の全貌

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