風力・ソーラーエネルギーのポテンシャルを引き出すには ――悪い補助金からスマートな促進策への転換を Tough Love for Renewable Energyr
風力やソーラーエネルギーが、近い将来に化石燃料にとって代わることはあり得ない。当面、再生可能エネルギーは、化石燃料による電力生産に取って代わるのではなく、それを補完する程度に終わる。だからといって、その開発をいま断念するのは間違っている。風力タービンとソーラーパネルの効率は高まり、価格も低下している。重要なのは、これまでのように補助金で再生可能エネルギーのポテンシャルを摘み取ってしまわないように、よりスマートな促進策をとり、市場の競争を最大化することだ。目的は風力タービンやソーラーパネルを多く設置することではない。電力を安価に便利に安全に、しかも持続的に供給することだ。この目的を実現する包括的なエネルギー政策の一部に風力・ソーラーエネルギー促進策を戦略的に位置づける必要がある。
<危機対応策としてのエネルギーシフト> この10年にわたって、世界各国は再生可能エネルギー促進策に多くの資金をつぎ込んできた。近い将来、電力生産領域で大きな変化が起きると先読みした民間の投資家も、政府の動きに続き、電力生産の革命が起きる可能性に人々は夢中になった。「エネルギーシフト」はそのプロセスにおいて富を創造するだけでなく、雇用を創出し、化石燃料の価格を抑え、地球温暖化のペースを弱めることにも貢献すると考えられていた。 だが、そうした期待と夢はいまや遠のいてしまった。アメリカでは新技術の導入によって、石炭よりもクリーンな天然ガス資源の大規模供給が期待できるようになり、その価格は大きく低下している。しかも、グローバル・リセッションによって、地球温暖化対策は政治的優先課題のはるか後方へと押しやられ、財政難に陥っている国は再生可能エネルギーへの補助金をすでに打ち切っている。 再生可能エネルギーへの大規模な投資が水泡に帰したケースもある。例えば、米エネルギー省が5億3500万ドルの債務保証をしたカリフォルニア州のソーラーパネル・メーカー、ソリンドラは2011年秋にあえなく倒産した。 補助金であれ、債務保証であれ、税金を再生可能エネルギーに注ぎ込むことに批判的な人々は、いまやソリンドラ倒産のケースを引いて、政府が太陽光(ソーラー)や風力エネルギーの促進策をとるのは見当違いだと主張している。事実、再生可能エネルギー促進策の基盤は不安定で、これまでのところ投資に見合うような価値を引き出せていない。アメリカ政府の再生可能エネルギー支援策に一貫性がなく、民間の投資家を混乱させていることも、技術開発を阻害している。補助金構造の効率化を図る必要がある。 より一貫した再生可能エネルギー支援策がとられてきたヨーロッパでは、政府があまりに大盤振る舞いをして資金を注ぎ込んだ挙げ句、もはや補助金を捻出できなくなっている。一方、再生可能エネルギーの新たな中核センターとなった中国は、国を挙げて風力、ソーラー関連企業の育成を試みているが、化石燃料への依存度にほとんど変化はないし、アメリカは中国のやり方は貿易ルールに違反していると批判している。 しかし、これらの問題や課題を抱えているとはいえ、再生可能エネルギーの開発を断念する理由はない。必要なのは開発プロセスを改革することだ。いまこそ再生可能エネルギーを強く推進すべきタイミングだし、今回はスマートなアプローチをとる必要がある。 最近の技術革新によって、再生可能エネルギーの競争力はかつてなく強化された。そのポテンシャルを開花させるには、世界各国が開発・促進へのアプローチを見直す必要がある。生産コストを引き下げるために、政府は促進策を再設計する必要がある。エネルギー企業も経済性を高めるために、導入する技術、電力生産装置を設置する場所をより慎重に選び、もっと戦略的に動くべきだ。再生可能エネルギーの時代を切り開くには、これまでのやり方を改める「愛のムチ」が必要だ。 いまやエネルギー問題が過去数十年と比べてより深刻になっている以上、これまで以上に厳格な態度を持つことが不可欠だ。 歴史的にみて、各国が大きなエネルギーシフトの実現に成功したのは、原油の禁輸、深刻な環境汚染、あるいは戦争のような、深刻な危機に直面した時だけだった。1970年代のオイルショック後、フランスは原子力エネルギーへと舵を切り、デンマークも使用効率の改善を強化するとともに風力発電に力を入れた。ブラジルもオイルショックを境に自動車燃料の一部をエタノールへと切り替え始めた。 だが、地球温暖化、エネルギー価格の変動、他国が形成途上のクリーンエネルギー市場を独占してしまう可能性への危機感など、現在われわれが直面している脅威はより慢性的で、オイルショックのように差し迫ったものではなく、これまで再生可能エネルギーを育んできた寛大な支出を当然視できる状態にはない。
2012年5月号に全文掲載>>
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