<高齢化のビジョンを変化させよ> マイケル・ホーディン 今日のテーマは高齢社会と経済成長。最初にロバート・ホーマッツ国務次官のこのテーマに関するコメントを紹介しよう。
「高齢者がより効率的、生産的に経済とコミュニティに貢献できるような機会を作り出していくことが重要だ。そのためには新しい政策とイノベーションを導入し、人々が健康を保ちつつ歳を重ねていけるようにしなければならない。高齢人口が社会に貢献できるようにすることは、途上国、先進国に関係なく、いまや経済的必要性の一部だ。われわれは、高齢社会というビジョンを高齢者の社会依存という構図から解き放ち、むしろ、高齢者による社会や経済への参加と貢献というビジョンへと進化させていく必要がある」
これが、今日の議論のベースだ。21世紀の現在、G20諸国、途上国を含むますます多くの諸国が、壮年期の労働年齢人口よりも50―55歳以上の人口の方が多いという現実に直面しており、この人口動態現象は今後数十年にわたって続くと考えられている。まず、MIT(マサチューセッツ工科大学)のジョセフ・カフリンから。世界の高齢化の現状について説明してほしい。 ジョセフ・カフリン 高齢化問題はしばしば社会の懸念材料として語られることが多い。だが、考えてほしい。これまで長生きすることが問題とみなされたことがあっただろうか。長寿は基本的に祝福に値する。1900年当時の平均寿命は45―47歳だった。アメリカで45歳、ヨーロッパで47歳。だが、各種統計をみると、いまや人々が70歳代まで生きるのが一般的だ。興味深いのは、年齢別集団でみると、比率的人口がもっとも成長しているのが85歳以上の集団であることだ。
誰もが長生きするようになった。子供が5歳、あるいは10歳まで育てば、その後、成人として健康に成長していく可能性は非常に高くなっている。人々の長寿化が、昨今の人口トレンドの一つの側面だ。だが一方で、所得と教育レベルが上昇するにつれて、出生率が大きく低下しているという事実にも目を向けなければならない。例えば、ヨーロッパの出生率は1・7―1・8。人口レベルを維持していくには、一般的に出生率が2・1のレベルでなければならない。アメリカの出生率は2・1で、おそらくは、先進国で唯一人口がいまも増えている国だ。
イタリア、ドイツ、フランスでは、ベビーカーの数よりも、車イスや歩行器の数の方が増えている。しかも、1946年から1964年に生まれたベビーブーマー世代が引退し、高齢化しつつある。これは先進国に限った現象ではなく、中国も60歳以上の人口が1億8500万人に達するという事態に直面している。
また、人口問題をとらえるとき、われわれは国や地域で数字を把握しようとするが、特定国の内側の集団に目を向けると別の構図がみえてくる。
例えば、インドネシアは世界有数の人口大国で、若年人口の多い国だが、農業従事者の平均年齢は47歳と高齢化している。国や地域だけでなく、産業別に人口をとらえる必要もある。また高齢化をとらえる上で重要なポイントは、長生きすることよりも、より幸せに生きるという視点を持つことだ。
続きは2012年4月号に掲載>>
Joseph
F. Coughlin マサチューセッツ工科大学 エイジラボ(人口年齢研究所)所長。同研究所は「人生100年間の質の高い生活」をビジョンに掲げ、高齢化を中心とする21世紀の人口動態の変化を機会に変えるという視点からの社会分析・予測を試みている。研究概要はhttp://agelab.mit.edu/で公開されている。 Kelly
Michel 年金、保険商品のグローバル企業であるエイゴン、USAの上席副会長。
Michael
Hodin ファイザー社副会長を経て、米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニア・フェロー(非常勤)。高齢化問題グローバル・コアリッション(GCA)のエグゼクティブ・ディレクター。専門は高齢化問題、公衆衛生政策、貿易政策など。
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