<中国がヨーロッパを買い漁る?> 7月に債務・財政危機に陥ったギリシャへの追加支援策にEU(欧州連合)が合意したことで、ギリシャがディフォルトに陥り、それが他のユーロ圏諸国へと飛び火することを恐れていた市場もある程度落ち着きをとり戻したかにみえる。しかし、EUの追加支援だけがギリシャ問題への唯一の解決策ではないだろう。2011年6月には、想像できない国の指導者が、異なる解決策を示唆する言動をみせていた。
2011年6月にヨーロッパ各国を歴訪した中国の温家宝首相は、各国の首都で必ず二つのことを強調した。ユーロゾーンの安定が中国にとっても非常に重要であること、そして、中国がヨーロッパの友人であることだ。
実際、北京にとって、ヨーロッパは自己利益と利他主義がうまく重なり合う場所だ。仮に中国が発行済みギリシャ国債の半分を買い上げれば、ユーロゾーンのソブリン危機を解決できるだけでなく、中国の名声が高まり、ドル建て債券を手放して自国の外貨準備の多様化を図ることもできる。しかも、中国の巨大な外貨準備からみれば、そのごく一部でしかない2220億ドルという破格の値段でギリシャ国債を買い上げることができる(現在、中国の外貨準備の70%はドル建てで、中国はギリシャの債務を所有するトップ40にさえ入っていない)。
だが、これまでのところ、中国はこのチャンスを生かしていない。おそらく中国も、世界の金融市場同様に、「いくら追加支援をしても、EUはヨーロッパのソブリン危機を解決できない」とみているのだろう。
だが、別のチャンスに目を付けているのかもしれない。それは、アメリカからヨーロッパへと波及した2008年の金融危機同様に、2011年のヨーロッパの債務危機が今後ヨーロッパからアメリカに波及する危険があることに関係がある。これによって(欧米経済が衰退すれば)、国家安全保障上センシティブな資産の外国による購入を規制した、アメリカの2007年「外国投資・国家安全保障法」を中国が迂回できる可能性が生まれる。
この法律ゆえに、中国が3兆ドルを超える外貨準備を用いて、航空宇宙技術、国防関連企業など、アメリカの安全保障にとってセンシティブな資産を買い取るのは現実には難しい。だが、米欧の金融市場における行動が引き起こした予期せぬ結果によって、いまや、中国はヨーロッパからセンシティブな技術資産を格安で購入できるチャンスを手にしている。
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Mark
Blyth ブラウン大学教授(国際政治経済学)。政治科学、経済学、社会学、複雑系など、領域を超えた研究と分析に取り組んでいる。最近、フォーリン・アフェアーズで、ナシーム・ニコラス・タレブとの共著で発表した「ブラック・スワンの政治経済学」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2011年7月号掲載)は世界で大きな話題になった。
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