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フォーリン・アフェアーズ日本語版 公開論文


CFRミーティング
4人の専門家が分析する
北朝鮮の核、権力継承、経済制裁、外交交渉の行方

The North Korea Puzzle

チャールズ・ファーガソン
米外交問題評議会シニア・フェロー
ポール・B・スターレス
米外交問題評議会シニア・フェロー
兼予防行動センター・ディレクター
デビッド・C・カング
南カリフォルニア大学朝鮮半島研究所ディレクター
チャールズ・プリチャード
コリア経済研究所会長
北朝鮮問題担当米特使(2001〜2003)

 フォーリン・アフェアーズ リポート 2009年7月号

北朝鮮は、2006年10月に続いて、2009年5月25日にも核実験を行い、北東アジアの安定、そして国際的な核不拡散レジームを脅かしている。核実験が作り出した今回の危機は北朝鮮の政権の意図、核兵器の能力、権力継承プロセスが今もはっきりとせず、北朝鮮が制裁措置に対する複雑な盾をもっていること、そして、非核化に向けた多国間外交に制約があることなどの厄介な問題を再び浮上させている。以下は、4人の専門家による北朝鮮の今後に関する分析。

小見出し

核能力の現状と核実験の関連/チャールズ・ファーガソン
核能力の現状と核実験の関連
なぜ核実験を行ったのか
権力継承問題/ポール・B・スターレス
金正日の健康と後継者問題
核実験と後継問題の関連は
経済的に取り得る手段はほとんどない /デビッド・C・カング
硬軟の経済路線では北朝鮮の行動を変えられない理由
中国の立場
二国間交渉と多国間交渉のバランスを /チャールズ・プリチャード
米朝二国間交渉を補う6者協議の役割



核能力の現状と核実験の関連/チャールズ・ファーガソン


いまもはっきりとしない北朝鮮の核能力

 北朝鮮は、ブッシュ政権との合意よりも有利な条件での取り決めが可能かどうか、まだ発足したばかりのオバマ政権を核実験を行うことで試したのかもしれない。金正日が北朝鮮の現体制への国内の支持を動員するために核実験を命令したという報道もある。

 核実験を行った国内的、国際的な政治的思惑についてははっきりしないが、少なくとも、技術的、軍事的な観点からみれば、北朝鮮は核実験を行うべき十分な根拠を持っていた。2006年10月の核実験の爆発力(分裂収量)が想定されていた規模に達しなかったために、結局、北朝鮮は強さよりも弱さをさらけ出すことになった。北朝鮮軍にしてみれば、1回の不完全なテストだけでは、核兵器がうまく爆発すると確信できるような状況ではなかった。

 実際のところ、北朝鮮の核能力がどの程度なのかはっきりしない。

 北朝鮮は40〜50キロのプルトニウムを保有しているとみる専門家もいる(核兵器を1個生産するには約6キロのプルトニウムが必要になる)。一方、北朝鮮側は2008年の核申告で37キロのプルトニウムを保有していると認めている。

 プルトニウムを生産できるヨンビョンの原子炉が稼働していた当時は、年間で核兵器1個分のプルトニウムを生産する能力を持っていたが、ブッシュ政権との合意の下、この原子炉はすでに部分的に解体されており、これを修復し再稼働させるには、数ヶ月の時間がかかる。

 但し、平壌は核分裂物質の備蓄を増やすために、ウラン濃縮を通じた核分裂物質生産の道筋も確立している可能性がある。ウラン濃縮プログラムが現在どんな状況にあるかはほとんどわかっていない(訳注―北朝鮮は6月13日にウラン濃縮作業への着手を宣言した)。


なぜ核実験を行ったのか

 核実験を行う必要があったのは、弾道ミサイルに装填できるような、より軽量・小型の核弾頭を開発する必要があったからだ。(次に、核弾頭の小型化に加えてミサイル能力を整備する必要もあった)北朝鮮はアメリカをいずれ射程に収めるようになるかもしれないテポドンタイプの長距離弾道ミサイルの実験をほとんど行っていなかった。

 だが、2009年4月のテポドンの試射によって、北朝鮮は、500キロ、あるいはそれ以上あるかもしれない第1世代の核弾頭は言うまでもなく、軽量の衛星さえもまともに打ち上げる能力を持っていないことが明らかになった。

 さらなる核実験を必要としていた第3の理由は、潜在的なバイヤーに核能力を持っていることをアピールしたいからだろう。もちろん、(PSI=拡散に対する安全保障構想の存在や、アメリカの警告など)核兵器や核分裂物質をバイヤーの元へ輸送していることが発覚した場合にどのような帰結に直面するかを北朝鮮は警戒せざるを得ない状況にあるが、それでも北朝鮮は過去に弾道ミサイルを売却している。

 より深刻なのは、「北朝鮮はシリアが原子炉を建設するのに手を貸していた」とアメリカ政府が公式に認めたことだ(この施設は2007年9月にイスラエルの爆撃機によって破壊された)。

 だがワシントンは「シリアの原子炉建設に北朝鮮は関与していた」と明言したにも関わらず、アメリカそして国際社会はこの件について北朝鮮に対していかなる懲罰措置も適用していない。北朝鮮がこれを重要な教訓としている可能性もある。

 現実には、アメリカとパートナー諸国にとって、北朝鮮が核の兵器庫をさらに充実させていくのを阻止するための選択肢は限られている。

 核不拡散の重要なアジェンダである包括的核実験禁止条約(CTBT)に米中が調印しても、北朝鮮がさらに核実験を行うのを阻止できるわけではないが、両国がCTBTに参加すれば、北朝鮮が国際的に受け入れられた規範を踏みにじっていると国際社会に対して強くアピールできるようになり、北朝鮮に対抗する上でのより大きな政治的手段と国際的正統性が授けられることになる。

 韓国がPSIに参加すると表明しただけで、北朝鮮側がこれを宣戦布告とみなすと強く反発していることを考えると、日本、韓国だけでなく、中国が核兵器や核分裂物質を輸送しているかもしれない船舶や航空機を臨検するPSI構想に参加すれば、実際に戦争が起きる可能性もある。制裁措置の強化で北朝鮮が協議の場に戻る可能性もあるが、危機を誘発する危険もある。●


権力継承問題/ポール・B・スターレス


金正日の健康と後継者問題

 金正日という大きな権力をもつ指導者の健康状態がはっきりとせず、だれが後継者になるのかもはっきりしない環境で、北朝鮮は核実験を行い、ミサイルを試射した(注 金正日が三男正雲を後継者に指名したと北朝鮮側が中国共産党幹部に伝えていたと報道されている)。

 金正日が2008年8月に脳梗塞になったことは明らかで、その後、半年間にわたって彼は表舞台に姿をみせなかった。2009年3月以降、彼は何度か人前に姿を現したが、力なくやせ衰えた様子で、左手を自由に動かせないようだった。こうしたなか、金正日は後継者への権力移譲にむけた布石を打ちつつあるとの観測が飛び交うようになった。

 事実、国家を管理する主要な機関である国防委員会(NDC)の再編が行われ、金正日が国防委員会委員長を続けるとともに、副委員長には「忠実な側近」とされる呉克烈大将が就任し、金正日の三男金正雲もNDCでの周辺的ポストに任命された。 未確認情報ながらも三男には後継者としての布石が打たれているという報道もある。


核実験と後継問題の関連は

 北朝鮮の核実験と国内の政治情勢を結びつける見方は、次の仮説のいずれかを前提にしている

1. 金正日は脳梗塞を煩って以降の北朝鮮指導層内部における自らの権限を再確立するために軍事力を重視している

2. (核実験を行うことで)自分が事実上選んでいる後継者への軍部の支援を取り付けようとしている。

3. 国内秩序が不安定化する政権移行期における抑止力を高めるために可能な限り軍事力を強化しようとしている。

これらの全てにはそれなりの信憑性があるが、より確度の高い情報で支えられない限り、仮説の域をでない。しかし、これらを前提として受け入れれば、その政策的意味合いはどのようなものになるだろうか。

第1に、非核化プロセスが進展する可能性は低く、北朝鮮の指導者は今後も権力継承問題にかかりっきりとなる。権力継承プロセスがかなり長期化する可能性もある。権力継承が完了するのは2012年になるという見方もすでに出てきている。この年が北朝鮮建国の父である金日成の生誕100周年であると同時に、金正雲が30歳になる年だからだ

第2に、対北朝鮮外交が進展すれば、北朝鮮はこれまで以上に核開発計画のことを国家安全保障目的ではなく、「体制存続のためのツール」と考えるようになるだろう。この場合、アメリカは「北朝鮮に敵対的な意図を持っていない」と表明するだけでは十分ではなくなり、金王朝の安泰を支えるような措置を考えなければならなくなる。

 つまり、(北朝鮮の体制存続を保証して核を放棄させられれば)グローバルな非核化への流れを強化できるが、一方で金王朝を支えることに対する道徳的躊躇いは当然ある。ワシントンはこの二つの選択肢を比較考量しなければならなくなる。リビアのケースはこの点での先例とみなせよう。

 第3に、全体主義の共産主義国家である北朝鮮は王朝を世襲で維持できることをすでに実証しているが、今回も成功するとは限らない。アメリカは不測の事態に備えておくべきだ。力強い後継体制を作り上げる前に金正日が死亡する可能性もあるし、彼が後継体制を決めても、それが後に覆される可能性もある。一連の緊急事態のシナリオに備えておく必要がある。●


経済的に取り得る手段はほとんどない/デビッド・C・カング


硬軟の経済路線では北朝鮮の行動を変えられない理由

 北朝鮮の行動を変えさせる方法の一つとして、制裁であれ関与(エンゲージメント)であれ、経済的側面から北朝鮮経済を変化させるという路線はこれまで常に検討されてきた。だが残念なことに、ポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、経済的手段で北朝鮮の行動を変えるのはいまやかつてなく難しい情勢にある。

 アメリカと国連がこれまで以上に厳格な制裁措置を北朝鮮に適用することはできるが、結局、それはシンボリックなものに留まるだろう。そもそもアメリカ、日本その他の諸国は北朝鮮との経済関係を持っていないし、北朝鮮をギリギリに追い込むほどに厳格な制裁措置が一貫してとられるとは考えにくいからだ。

 韓国と北朝鮮の2008年の貿易額は18億ドル。だが2009年に入って貿易取引は大幅に減少しており、韓国の北朝鮮に対する影響力も低下している。


中国の立場

 北朝鮮経済を大きく左右できる力を持っているのは中国だけだが、北京は北朝鮮の最近の動きをかなり不快に感じているようだ。とくに核実験を行ったことを中国の外交努力に対する侮辱とみなしている。

 現在、中国では「北朝鮮にどのような路線をとるのが最善なのか」が熱く議論されているし、「北朝鮮が果たして中国にとって今後も戦略的に重要な国家であり続けるのか」というテーマも議論のなかで浮上してきている。

 とはいえ、中国が北朝鮮に経済圧力をかける可能性は低いし、かりに圧力をかけたとしてもそれがうまくいくとは思えない。中国はこの数年にわたって北朝鮮との経済関係を築いてきたし、そもそも、中国の北朝鮮政策の多くは、経済援助を通じて北朝鮮の不安定化を防ぐという意図によって導かれている。

 要するに、中国も他の諸国と同様に、「相手を崩壊の瀬戸際まで追い込むことなく、より穏健な路線を取るように説得するにはどうすればよいか」について頭を悩ませている。

 北朝鮮が中国の援助に依存しているにもかかわらず、中国の北朝鮮への影響力にも限界がある。

 北朝鮮があまりに脆弱であるために、中国も平壌に対する路線に慎重にならざるを得ない状態にある。中国も韓国と同様に、北朝鮮の崩壊シナリオを「我が身に火の粉がふりかかってくる厄介な事態」とみなしている。

 大規模な難民が国境線に押し寄せてくるかもしれないし、国が崩壊しても大規模でうまく武装された北朝鮮軍は自発的には武装解除しないかもしれない。しかも、核兵器の保管場所がわからなくなり、核兵器が中央の管理体制から離れていく危険がある。

 崩壊後の混乱に対処するための社会、経済、文化的コストはかなりの規模になる。当然、中国が北朝鮮を崩壊させるような大きな圧力をかける可能性は非常に小さい。

 残念なことに、オバマ政権そして東アジア地域諸国政府にとって、北朝鮮に対する政策上のオプションは限られている。北朝鮮の現体制を崩壊させるような軍事行動を起こせば、より大きな不安定化を招き入れ、中央の管理を離れた核兵器が使用されるリスクが生じる。このため、北朝鮮に対する軍事行動をまじめに検討する国は存在しない。だが一方で、北朝鮮との国交を正常化し、その行動を穏健化させようという願いから経済的、外交的なインセンティブを与えようとする国もほとんどない。結局、オバマ政権は「口先で圧力をかけるか、水面下の外交を展開するか、あるいは穏やかな制裁措置をとるしかない」ということになる。●


二国間交渉と多国間交渉のバランスを/チャールズ・プリチャード


米朝二国間交渉を補う6者協議の役割

 北朝鮮の挑発的行動にアメリカは外交的にどう対応すべきか。考えるべき要素がいくつかある。

 第1の要素は北朝鮮を除く6者協議メンバー間の情報共有をどうするかだ。現在のところ、情報共有はうまく行われている。オバマ政権は北朝鮮の反応や声明を国内で分析し、これを日韓という同盟国と協議し、その後、中国、ロシアと共有している。

 第2の要素は、国連安保理というフォーラムを最大限利用することだ。5つの常任理事国、15の理事国と協力し、新たな安保理決議を採択するか、あるいは、2006年10月に北朝鮮が最初の核実験を行った後に採択された安保理決議1718号で規定されている制裁措置をさらに強化するというやり方がある。何れを選ぶとしても、これがもっとも重要な北朝鮮に対する国際的メッセージになる。

 北朝鮮がこれによっていかに追い込まれるかよりも、安保理において短期間で集団的なコンセンサスが形成されるかどうかが重要になる。

 この数年間、とくにこの数ヶ月における彼らの行動とそれが示唆するトレンドが間違った方向に向かっていると北朝鮮に伝えなければならない。北朝鮮が間違った路線を取り続ける限り、「アメリカが平壌の長期的な目的を早い段階で満たすことはあり得ない」というメッセージを伝えるべきだ。

 「アメリカ及びその地域パートナー国の安全保障上の懸念を緩和するような行動を取らない限り、和平条約や関係正常化に向けた真剣な対話に応じることはない」とはっきりとメッセージを送るべきだ。

 北朝鮮が近隣国を核の脅威で脅かすことも、アメリカに対する核拡散の脅威を作り出すことも許されない。

 この15年に及ぶ北朝鮮との交渉の歴史を振り返ると、米朝二国間交渉がもっともうまくいき、短期間で結果を手にできることは分かっている。多国間アプローチが重要でないと言うつもりはないが、今日に至るまで、多国間アプローチでは望ましい結果を手にできていないのも事実だ。

 6者協議の一定の成功を主張する人々さえ、進展の多くは2007年1月のベルリンにおける米朝交渉、2007年秋のシンガポールにおける米朝二国間交渉によってもたらされたことを認めている。こうした二国間交渉の成果が6者協議というフォーラムで成文化されていった。

 北朝鮮も多国間交渉を嫌がっており、可能な限り、6者協議には参加したくないと考えている。

 二国間交渉のほうが効率的だとはいえ、北朝鮮の核問題は地域的、国際的な意味合いをもっており、アメリカ以外の関係国も参加させる必要がある。

 これは、多国間枠組みが日常的にうまく機能するような方法を新たに見いださなければならないことを意味する。二国間交渉は今後も重要な役割を担うだろうが、北朝鮮の核問題の最終的な解決には多国間アプローチが必要になるからだ。●




Interviewed by Robert McMahon (Acting Editor, CFR.org)
 and Jayshree Bajoria (Staff Writer, CFR.org).

(C)2009 by the Council of Foreign Relations, Inc


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