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インド経済モデルの誕生か ――成功の検証と今後の課題 グーチャラン・ダス/P&G・インド前最高経営責任者 | |
| | インドの経済的台頭をめぐって特筆すべきは、東アジア諸国のように労働集約型の安価な商品を欧米市場に輸出して経済発展を遂げたのではなく、輸出よりも国内市場を、投資よりも消費を、工業よりもサービス業を、非熟練型の製造業よりもハイテク産業を重視して成長を達成していることだ。だがインドの規制緩和、経済改革はまだ完遂されていないし、教育、医療、水資源をめぐる適切な公共サービスさえ確立されていない。すべてのインド人がすぐれた学校、まともな医療施設、清浄な飲料水へのアクセスを持って初めて、偉大な国家への仲間入りができる。経済成長の黄金時代が続くと当然視してはならない。改革を続け、民間経済のペースについていけるように統治を改善していかなければ、非常に大きなチャンスを逃すことになる。
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| | ワールド・エコノミック・アップデート ――インフレ、リセッション、グローバルな不均衡を検証する
スピーカー エドワード・M・グラムリッチ/ミシガン大学学長代行 イーサン・ハリス/リーマンブラザーズ、アメリカ担当チーフエコノミスト ジョン・P・リプスキー/JPモルガン投資銀行、副会長 司会 ダニエル・K・タルーロ/ジョージタウン大学法学教授 | |
| | 懸念材料は、インフレよりも、世界中の中央銀行が一斉に金融引き締め策へと転じていることだ。ある米系投資銀行の専門家によれば、2007年に世界経済がリセッションに陥る危険は40%もある。(タルーロ)
現在の資産市場が調整局面にあることも、アメリカの貯蓄率を今後上昇へと向かわせ、少なくとも、今後5〜10年間は、家計貯蓄率は上昇していくと考えられる。そうなれば今後の世界経済の成長は、アメリカの消費によってではなく、他の諸国の内需拡大に依存していく可能性が高い。(リプスキー) アメリカは経常赤字を削減し、ヨーロッパ(と日本)は内需を喚起し、アジア諸国は為替レートをどこかの時点で見直す必要がある。(グラムリッチ) | |
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| | 北朝鮮の脅威と日米ミサイル防衛
マイケル・レビ/米外交問題評議会(CFR)科学技術担当フェロー
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| | 北朝鮮が7月上旬にミサイルを発射した際に、日米はミサイル防衛モードのイージス艦を日本海沖合に配備した。この作戦は成功だったとみなすマイケル・レビ(米外交問題評議会
<CFR> 科学技術担当フェロー)は、その理由の一つとして、「ミサイル防衛モードにするとイージス艦のレーダー能力は低下するが、日本の対空防衛レーダー網がうまくこれを補ったこと」を挙げる。日本へのミサイル防衛システムの技術移転は単に技術面だけでなく、日本との政治的、軍事的関係を強化する上でも有意義だと評価しつつも、「日本がPAC3を導入した場合に、そのコストを防衛予算に上乗せするのか、それとも、北朝鮮に対する抑止だけでなく、世界の安全保障にとって重要な日本の防衛投資がその分削られることになるか」そのバランスを慎重に見極める必要があるという。その理由について、同氏は「ミサイル防衛への投資が、抑止力を損なう形で行われれば本末転倒だからだ」と指摘する。聞き手はマイケル・モラン(www.cfr.orgのエグゼクティブ・エディター) | |
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| | オーストラリアとアジア太平洋安全保障
CFRブリーフィング | |
| | 20年前は自国のことを「国際政治におけるマイナープレイヤー」としかみていなかったオーストラリアも、いまやアジア太平洋地域での影響力の足場を固めつつある。キャンベラは、この地域で安全保障を確立し、維持していく上で大きな役割を果たしている。現在オーストラリアの部隊は、東ティモール、ソロモン諸島、さらにはイラク、アフガニスタンで平和維持活動、平和構築活動、復興支援活動を展開している。しかし、こうしたオーストラリアの安全保障活動を誰もが評価しているわけではない。「キャンベラはワシントンの意向に左右されすぎだ」という批判もあるし、人道的救済、復興支援のための介入はともかく、軍事的介入に対しては、オーストラリア市民は割り切れない感情を持っている。また、「オーストラリアは自国がアジアと欧米のいずれの世界に属するのかを選ぶ必要がある」としたマハティールの問いかけは、依然として東南アジアで広く共有されている。
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| | ブッシュ外交革命の終わり
――単独行動主義への回帰はあり得ないのか フィリップ・H・ゴードン/ブルッキングス研究所外交政策担当シニア・フェロー | |
| | 当初、現実主義路線を重視していたブッシュ政権が、イラク侵攻、そして、世界での圧政を終わらせると外交革命路線へと踏み出していったのは、9・11を前に「世界を変えるために何か手を打たなくては」という危機感を募らせるとともに、「世界を変えることができるかつてないパワーを手にしている」と確信したからだった。そこでは、同盟国を説得するのではなく、勝利を通じて支持を勝ち取ることこそリーダーシップの本質と考えられた。だがその後、アメリカの経済資源は枯渇し、外国、国内での政治的支持が低下するなか、すでにブッシュ政権は現実主義路線へと回帰している。だが、ブッシュ政権が再度路線を変える危険は十分ある。民主党や外交専門家が何を言おうとも、「アメリカの決意、楽観主義、そしてパワーが最終的には勝利を収める」とするレーガン政権時代以来の外交理念をいまもブッシュ政権の高官は捨ててはいないからだ。
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| | 中東は宗派間抗争で引き裂かれるのか
――スンニ派とシーア派の対立 バリ・ナシル/ 米外交問題評議会(CFR)非常勤シニア・フェロー | |
| | イラクにおけるシーア派の台頭というトレンドこそ、イラク、そして中東における宗派間のバランスを今後長期にわたって変化させていく大きな要因になる。ヨルダンのアブドラ国王は、スンニ派が支配する中東を、ベイルートからテヘランにいたるシーア派三日月地帯が分断することになるかもしれないと警告している。宗派間の政治的敵対を緩和するには、イラク、そして中東全域において、シーア派の要望を満たす一方で、スンニ派の怒りをなだめ、不安を取り除いてやる必要がある。そのためにも、世界最大のシーア派人口を持ち、地域的な影響力を高めつつあるイランにワシントンは関与しなければならない。イラクの状況がますます深刻になっていけば、中東全域がシーア派とスンニ派の宗派間抗争に巻き込まれていく危険がある。
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| | ヒズボラの正体
ダニエル・バイマン/ジョージタウン大学助教授
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| | 1982年当時、レバノンのシーア派をとりまとめる政治勢力だったアマル(希望)の指導者は、米・イスラエルが支援する新政権を受け入れたが、その支持層の多くは、新政府を「イスラエルの傀儡政権」と批判した。そうした批判派に手を差し伸べたのがシリアとイランだった。イランは、レバノンにイスラム革命路線を輸出したいと考えていたし、またイランとシリアはともに、レバノンのシーア派をイスラエルに対抗するための手先として利用したいと考えていた。イランはシリアの手も借りて、シーア派の各集団をとりまとめ、武装して訓練を施すとともに革命思想を吹き込んだ。こうして誕生したのがヒズボラ(神の党)である。邦訳文はフォーリン・アフェアーズ2003年11/12月号で発表された「Should
Hezbollah be Next? 」の一部。
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ヒズボラを操るイランとシリアの思惑 CFRブリーフィング | |
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ヒズボラによるイスラエル兵誘拐に端を発するイスラエル軍のレバノン侵攻は、地域紛争へとエスカレートし、停戦を求めて国際社会が介入している。しかし、イスラエルとヒズボラの対立という構図だけで問題をとらえるのは無理がある。2000年にイスラエルをレバノンから撤退させたヒズボラは、イランとシリアの傀儡勢力としても知られており、今回の紛争挑発行為の背後でも、両国が暗躍しているようだ。イランは国際社会の関心を自国の核開発問題から別の問題へとシフトさせるために、シリアはレバノンでの影響力を再確立するために、ヒズボラにイスラエルとの紛争をそそのかしたとみる専門家は多い。中東紛争の構図そのものが変化しているとみる専門家もいる。事実、スンニ派国家であるエジプト、ヨルダン、サウジアラビアは7月15日にアラブ連盟の外相会議で、シーア派のヒズボラの行動を批判する異例の声明を発表している。
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レバノンへの国際的介入の歴史 ――なぜすべての介入は失敗したか
FAJブリーフィング | |
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ヒズボラのイスラエル兵誘拐に端を発する戦闘はすでに全面的な地域紛争と化し、収束する気配はない。「レバノン政府よりも大きな力を持つと言われる」ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララは、7月下旬に停戦に向けた「いかなる屈辱的な条件も受け入れられない」とする声明を発表し、一方のイスラエルも一時的な空爆の停止には応じつつも、基本的には戦闘を続け、レバノン南部に安全保障地帯を設置すると表明している。現在、レバノン南部に国際部隊を投入して、ヒズボラの拠点とイスラエルの北部国境の間に緩衝地帯を形成することへ向けた交渉が行われているが、歴史は、そうした中東での国際ミッションの多くが失敗しがちであることを教えている。これまでの国際ミッションのほとんどが、国際的軍事プレゼンスに反対する武装勢力の攻撃に屈するか、任務を遂行する十分な権限を持っていなかったために無力化するという結末に直面している。
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イランの国内政治力学と核問題 ――テヘランは何を警戒し、何を望んでいるのか
レイ・タキー/米外交問題評議会(CFR)中東担当シニアフェロー
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イランの「戦争世代」強硬派の代表的人物であるアフマディネジャド大統領の世界観は、イスラム主義のイデオロギー、ナショナリズム、国際秩序への不信感で成り立っている。「戦争世代」は、アメリカとの紛争は避けられないとみており、アメリを抑止するには、戦略兵器を保有するしかないとみている。一方、「インド・モデル」に注目する「現実主義者」たちは、国際社会とグローバル経済への統合を果たすには、核開発に対する制約も受け入れざるを得ないと考え、核拡散防止条約(NPT)の許す範囲内で開発を進めることを求めている。必要なのは、「イランとアメリカが心配する懸案のすべてを網羅するような交渉」において、両国が合意できる部分を増やしていくことではないか。核問題を、より広範なアメリカとイランの関係における病の症状の一つとみなし、根本の病を治していくような路線が必要だ。イランの核問題を解決できるとすれば、アメリカとイランの全般的関係が大きく改善した場合だけであることを認識する必要がある。邦訳文は、米外交問題評議会(CFR)のレイ・タキーが、米上院の「連邦金融管理・政府情報及び国際安全保障に関する小委員会」に、7月20日に提出したイラン問題に関する書簡証言。
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| | 欧米世界に背を向けたロシア
ドミトリ・トレーニン/カーネギー国際平和財団モスクワセンター副所長 | |
| | 現在のロシアは、永遠の敵でも友人でもない巨大なアウトサイダーである。ロシアは最近まで、自らを欧米という太陽系における冥王星のような存在、つまり中心からひどく離れているが、基本的にはその一員であると考えてきた。だがいまや、ロシアは、太陽系の軌道を完全にはずれ、欧米世界の仲間になることを断念し、モスクワを中心とする独自のシステムをつくり始めている。状況は流動的だ。欧米各国はロシアにおける前向きな変化は内部からしか起こり得ないことを認識すべきだし、変化の牽引役となるのは民主主義の理念ではなく、経済の必要性であることを理解する必要がある。
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| | ラテンアメリカの左旋回
――正しい左派と間違った左派を区別せよ ホルヘ・G・カスタニェーダ/ 元メキシコ外相 | |
| | ラテンアメリカ全域で左派勢力が台頭し、市場経済に向けた改革路線、議会制民主主義に対する激しい逆風が吹きはじめている。しかし、そこに正しい左派と間違った左派が存在することを認識する必要がある。旧共産・社会主義系左派は、自らの失敗と昔のモデルの欠陥を認め、態勢を立て直すことに成功し、ラテンアメリカのよい統治に必要なものを提供する資質を持っている。一方、資源を国有化してカネをばらまき、でたらめな経済路線をとり、ナショナリズムを鼓舞して権力を奪い取ろうとする左派ポピュリストは、全く変化していない。チャベスに代表される左派ポピュリストにとって、貧しい選挙区の絶望は政治が取り組むべき課題ではなく政治の道具にすぎない。最大の問題は、左派ポピュリストが民主主義よりも権力を愛し、権力を維持するためなら大きな犠牲を払ってもかまわないと考えていることだ。
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| | グローバル化で世界は中世へ回帰するのか
――アイデンティティーの多様化と国際政治 ジョン・ラプリー/ ジャマイカグリーナー紙外交問題コラムニスト | |
| | ヨーロッパの中世の特徴だった、ローカルな帰属意識とトランスナショナルな帰属意識の共存という現象がグローバル化時代の今に甦りつつある。国を離れたグローバルな都市センター間のネットワークが強化されているし、途上国においては、国の行政が及ばない地域で、ギャングやイスラム集団が事実上の小国家的な政治単位を確立しつつある。一方、グローバル化で巨大な富を得た富裕層も、国家から離れた生活を送るようになった。グローバル化による所得格差を前に、貧困国、富裕国の双方において、国家秩序の再編が起きており、この流れを、新しい中世と表現する研究者も多い。国際政治においてこれは何を意味するのか。アメリカは辺境の異邦人に滅ぼされたローマ帝国の轍を踏むことになるのか。 | |
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| | ゲイツ財団とグローバル・ヘルス
CFRブリーフィング
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| | アメリカの資産家ウォーレン・バフェットが300億ドルを超える資金をゲイツ財団に寄付したことで、世界最大の慈善団体・ゲイツ財団が管理する資産はほぼ倍増した。すでに同財団はマラリアや結核などのワクチン接種キャンペーンを展開し、成果を上げている。新たな資金をバックに、ゲイツ財団は、一連の疾病を対象とする年間30億ドル規模の援助を行う予定で、財団の活動はグローバル規模の公衆衛生対策にかなりのインパクトを与えると思われる。さらに、同財団は少額の短期融資(マイクロクレジット)や農業開発プロジェクトも今後手がけていく予定だ。公衆衛生・医療問題と密接な関係にある開発問題への援助も増やしていくことが期待されている。しかし、大規模な資金を賢明に用いることの難しさを警告する専門家もいる。
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| | 今月のフォーリン・アフェアーズから
アメリカの覇権の黄昏に揺れる世界 | |
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世界各国がアメリカの覇権の黄昏を感じ取り、活発な動きを見せている。朝鮮半島の統一を目指す韓国はすでにアメリカと距離を置き始めているし、ヨーロッパのなかにも脱米入欧をはかる国がある。途上国との連帯を深めたイランは、中ロに接近しつつ、核開発を進め、中東におけるシーア派圏の確立を試みている。北朝鮮も、中韓との一定の関係を保ちつつ、最近では対米強硬路線に転じた。ロシアも欧米に背を向けて中国に接近しつつあり、中国とは相思相愛の関係にある。米議会で非民主的なロシアをG8から排除する声が出ても、アメリカにロシアを排除する力がないことを知っているロシアの指導者は、これをほくそ笑んでいた、とドミトリ・トレーニンは指摘する(「欧米世界に背を向けたロシア」)。
「アメリカのパワーが低下していくにつれて、対米協調によって得られる利益も、反米路線をとるためのコスト同様に低下していき、最終的には反覇権連合出現の可能性を高める」。サミュエル・ハンチントンがこう指摘したのは今から7年前だった。
ブッシュ政権自身、アメリカのパワーの衰えを痛感しているようだ。9・11を境に「世界を変えるために何か手を打たなくては」という危機感を抱くとともに、「世界を変えることができるかつてないパワーを手にしている」と確信した結果、ブッシュ政権はそれまでの現実主義路線から、ネオコン路線に転じたと分析するブルッキングス研究所のフィリップ・ゴードンは、ここにきてブッシュ政権が現実主義路線へと回帰しているのは、彼らの思想ではなく、アメリカのパワーに陰りが見えてきたからに他ならないと主張する。事実、イラク戦争によってアメリカの正統性は大きく損なわれ、2001年当時は2千億ドルの年間財政黒字だった米財政も、2006年初頭には4千億ドルを超える赤字へと転じている。
ただし、可能性は低いとしながらも、何かの事件をきっかけに、再度単独行動主義路線への揺り戻しが起きないとは言い切れないとゴードンは言う。その理由を彼は、ブッシュ政権高官の外交思想が「アメリカの決意、楽観主義、そしてパワーが最終的には勝利を収める」とするレーガン政権時代以来の外交理念に根ざしていることに求めている(「ブッシュ外交革命の終わり」)。
問題は、こうした秩序の過渡期に各国が相手の意図を見誤って、誤算を犯す危険が高まることだ。中国が自国の平和的台頭をアピールしているのも、こうした歴史の教訓を踏まえてのことだし、ロシアの台頭にアメリカは過剰反応すべきではないとトレーニンが諫めるのも、世界秩序が流動期に入っているからに他ならない。一方、これまでの独自のゲームルールに即して強硬策に転じた北朝鮮は大きな誤算を犯しているのかもしれない。
経済秩序も大きな流動期に入りつつある。専門家の多くが、巨大な経常赤字を抱えるアメリカ経済が調整期に入る一方で、ヨーロッパと日本が経済的に立ち直り、中国、ロシア、インドの経済成長は当面続くとみている。特にインド経済が注目されている。製造業を中心に台頭している中国よりも、サービス部門を中心に台頭しているインド経済に注目すべきだと考えるエコノミストは多い。サービス部門の「生産性の改善」によってインド経済は成長していると指摘するグーチャラン・ダスは、インドの場合、東アジア諸国のように労働集約型商品を欧米市場に輸出して経済発展を遂げたのではなく、輸出よりも国内市場を、製造業よりもハイテク産業を重視して成長を達成していると、新しい「経済成長モデル」の誕生を示唆している。印象深いのは、インド経済成長の特徴を「国の介入によって成長を遂げたのではなく、国の介入にもかかわらず、成長を遂げた」点にあるとし、まだ改革の余地、つまり成長の余地がかなり残されていると彼が指摘していることだろう(「インド経済モデルの誕生か」)。
だが、どこに落とし穴があるかはわからない。インド経済、そして世界経済の今後は、エネルギー供給の鍵を握る中東情勢に左右される。そして、いまや中東における宗派間抗争と核不拡散の行方を左右する力を持っているのはシーア派国家のイランである(「中東は宗派間抗争で引き裂かれるのか」)。●
(竹下興喜、フォーリン・アフェアーズ・ジャパン) | |